下方リスクとは
下方リスクとは、「投資が裏目に出る場合、その損失が発生する確率や、損失の大きさ」のことです。これは普通にリスクといって私たちが想像するものと大差ありません。それにもかかわらずあえて「下方」という言葉を付けて強調する必要があるのは次のような事情があるからです。
標準偏差
投資理論の世界で一番よく用いられるリスクの指標は標準偏差です。
標準偏差は、ありうる利益や損失が、平均値からどれぐらい散らばっているかという、ばらつきの標準的な大きさを表します。平均値、すなわち期待利益は、大きな値つまり大きな利益と、小さな値つまり大きな損失の間にありますから、平均値からの散らばりをリスクとして捉えれば、平均的な利益を大幅に上回るような大きな利益が出る可能性も、平均的な利益を大幅に下回る大きな損失が出る可能性も、共にリスクとして捉えることになります。
しかし、思ったよりもずっとたくさん儲かった場合の「もっと投資していればよかった」という後悔は、「投資しなきゃよかった」という後悔に比べて、より小さいように思います。「思ったほどには儲からない」あるいは「損をする」可能性、つまり「実際の収益が期待値を下回る」可能性だけをリスクとして捉える考え方をしたほうがよいのかもしれません。
こうしたリスクの測り方や、こうした測り方をしたリスクの大きさを「下方リスク」と呼びます。下方リスクは、債券やオプションを含むポートフォリオのように、予想を上回る利益が出る可能性や、その時の予想の上回り方と、予想を下回る利益が出る可能性や、その時の予想の下回り方が違うとき、威力を発揮します。
どのように測るのか
実際の測り方にはいくつかありますが、代表的なものに「バリューアットリスク」があります。
バリューアットリスクの計算方法は、いろいろありますが、たとえば債券と債券のデリバティブを含むポートフォリオの場合、金利などを使ってシミュレーションを行ない、得られた結果を集計して、「99%の確からしさ(他にも95%や97.5%など、ほしいたしから示唆のレベルによって使い分けされています)の範囲内で、起こりうる最悪のリターン」を割り出し、その値をリスク量=バリューアットリスクと呼びます。バリューアットリスクは、最悪のリターン、つまり下方リスクをリスクとして捉えている指標といえます。