エマージング・ソブリン・ファンドとは
新興国の政府が発行する債券に的を絞って投資するファンドのことを、一般にエマージング・ソブリン・ファンドと呼びます。
エマージング(emerging)は新興諸国や新興諸国市場のことを意味し、ソブリンはソブリン債券、つまり中央政府が発行する債券を意味しています。国債だけでなく、政府機関が発行する債券も含まれます。
エマージング・ソブリン・ファンドと呼ばれるファンドには、世界中の新興国の債券に広く分散投資するタイプのファンドもあれば、アジアやヨーロッパのように、特定の地域の新興国のソブリン債券に投資するファンドもあります。なお、国債に限らず新興諸国の債券に投資するファンドは一般にエマージング・ボンド・ファンドと呼ばれます。
エマージング・ソブリン・ファンドの例
- エマージング・ソブリン・オープン(毎月)ヘッジ有(三菱UFJ国際)
- エマージング・ソブリン・オープン(1年)(三菱UFJ国際)
- エマージング・ソブリン債券(現地通貨)ファンド(1年)《さいけん太郎》(シュローダー)
- NSPB・エマージング・ソブリン・ファンド(3ヶ月)(ピクテ)
エマージング・ソブリンETFの例
- 上場インデックスファンド新興国債券(バークレイズLocal EM国債)(銘柄コード:1566)
- iシェアーズ 新興国債券ETF(バークレイズLocal EM国債コア)(銘柄コード:1362)
エマージング・ソブリン・ファンドの人気の背景
先進国では、金利水準が非常に低い状態が続いており、日本や米国などの債券に投資しても、期待できるリターンはとても限られています。一方で、新興国のソブリン債券に投資することで、相対的に高い利回りが期待できると考えられています。そのため、2000年頃からソブリン債券を含む新興国の債券に投資するファンドが数多く設定されてきました。
エマージング・ソブリン債券のリスク
エマージング・ソブリン債券の利回りが先進国のソブリン債券に比べて高い傾向にあるのは、その分リスクが高いためです。リスクに見合った高い利回りがなければ、投資家に買ってもらえないというわけです。エマージング・ソブリン債券には次のようなリスクが伴います。
① 信用リスク
新興国は信用力が低くいため、それだけデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高くなります。信用リスクとは債券を発行した国が破綻するなどして、その債券が債務不履行(デフォルト)に陥って利金が支払われなかったり、元本が返済されなかったりするリスクのことです。国の信用力は、格付機関と呼ばれる専門の機関が評価し、ソブリン格付けとして公表しています。
例えば、代表的な格付機関であるスタンダード・アンド・プアーズ社のソブリン格付けにおいては、AAAが最上位であり、これは「債務者が金融債務を履行する能力は極めて高い」ことを意味しています。次いで、AA、A、BBBと続き、このBBB格以上を投資適格債券と呼びます。BBBは、「債務者が金融債務を履行する能力は適切であるが、環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされています。次いで、BB、B、CCC、CCと格付けは下がっていきます。このBB格以下を投機的格付と呼び、BBは「債務者は短期的にはより低い格付けの債務者ほど脆弱ではないが、高い不確実性や事業環境、金融情勢、または経済状況の悪化に対する脆弱性を有しており、状況によってはその金融債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある」ことを意味しています。新興国の債券にはBBBやBB格以下の格付が付与されているものが多く見られます。
② 流動性リスク
新興国の債券市場は先進国の債券市場と比較すると市場が発達しておらず、流動性が低い傾向にあります。流動性が低いことで、債券を売りたいときに売ることができない、あるいは売りたい価格で売ることができなくなるリスクが高くなります。
③ 為替リスク
新興国の債券は、発行国の通貨建てで発行されるものと、ドルやユーロ建てで発行されるものがありますが、両者とも為替リスクが伴います。新興国の通貨は、ドルやユーロといった先進国の通貨に比べて変動が大きくなる傾向にあり、それだけ大きな為替リスクを伴います。
④ カントリーリスク
新興国では、政治不安や経済混乱、社会不安などによるリスクも伴う傾向にあります。政治不安などが原因で市場が閉鎖されたり、資金を引き揚げることができなくなるという可能性もあります。カントリーリスクの評価にはR&Iカントリーリスク調査(対象100カ国)、Coface country risk barometer(対象160カ国)、Business Risk Service (対象50カ国)、OECDのCountry Risk Classification などがあります。それぞれ異なる目的のために算出されているもので、評価方法等も各社異なります。