政治的リスクとは
投資信託のリスクの一つに政治的リスクがあります。政治的リスクとは、特定の国の政情不安や政治の混乱、重大な政策の失敗、紛争などの政治的要因により、株式や債券などの資産価値が下落したり、為替相場が暴落したりするリスクを指します。また、政治的要因による金融市場の混乱から、資本・為替取引が制限され、その結果として経済が低迷するリスクも政治的リスクです。政治的リスクはポリティカル・リスク(political risk)と呼ばれることもあります。
2018年のトルコ・リラやブラジル・レアルの下落は政治的リスクの例だと言えます。これらの通貨安を受け、トルコやブラジルに投資している投資信託の多くの基準価額(資産価値)が大幅に下落しました。
<トルコを投資対象としている投資信託の過去1年の騰落率の例>
ファンド名 | 過去1年騰落率 (分配金込み) |
オ-ロラII トルコ投資ファンド | -48.57% |
トルコ債券オープン(毎月決算型)為替ヘッジなし | -49.59% |
トルコ債券オープン(毎月決算型)為替アクティブヘッジ | -42.27% |
ライジング・トルコ株式ファンド | -48.57% |
Navio トルコ債券ファンド | -52.96% |
トルコ・ボンド・オープン(毎月決算型) | -49.77% |
トルコ株式オープン | -47.91% |
UBPトルコ株式ファンド | -48.04% |
新光トルコ・リラ債券ファンド(毎月決算型) | -44.45% |
HSBC トルコ株式オープン | -32.24% |
(データ:投資信託協会投信総合検索ライブラリー、2018年8月27日現在)
新興国だけではない政治的リスク
政治的リスクは、一般に新興国で高い傾向にありますが、先進国でも政治的リスクに対する懸念が持ち上がることがあります。
例えば、英国の欧州連合からの脱退決定(Brexit)を受け、英国の政治的リスクに対する懸念が大きくなりました。2017年に英国の中央銀行であるイングランド銀行が実施したシステミック・リスク・サーベイでは、次のグラフのように、91%の人が英国の金融システムにとっての最大のリスクは英国の政治的リスクであると回答しています。
政治的リスクを調べる
投資を検討している国の政情、重要政策の変更、反政府勢力との紛争などの状況は、ニュースなどの報道で、ある程度知ることはできますが、より客観的な評価を知るには、政治的リスクを評価する企業等のレポート等をチェックすることも大切です。
例えば、世界銀行の「Worldwide Governance Indicators」は政治的安定や暴力・テロの有無といった政治的リスクの要素を次の画像のように世界地図上に表示できます。また、国別や過去の状況なども表示することができます。
(出所:世界銀行)
また、保険仲介とリスクマネジメントの世界的企業であるマーシュ社は、世界の政治的リスクを地図上に示した「ポリティカルリスクマップ」を公表しています。
取引信用保険を世界規模で提供しているコファス社は、カントリーリスク評価や政治リスクなどについてのレポート、159カ国をカバーするCOFACE POLITICAL RISK INDEX(政治的リスク指標)を発表しています。
PRS グループが発表するInternational Country Risk Guide:(ICRG) は、官僚の質、政府の安定性、汚職、法と秩序、民族紛争などの12の政治的要素を含むポリティカル・リスク・インデックスを含んでいます。