ソブリンリスクとは
ソブリンリスクとは、国や政府機関が、発行した債券の元本の返済と利払いを履行できなくなるリスクのことです。つまり国の信用リスクのことです。
ソブリンは英語のsovereignのことで、国王、統治者、君主、主権者、国という意味があります。なお、国や政府機関が発行する債券のことをソブリン債(sovereign bond)やソブリン・デット(Sovereign debt)と呼ぶこともあります。
ソブリンリスクの評価
ソブリンリスクの大きさを分析・評価し、その結果を記号などを用いて表したものをソブリン格付といいます。ソブリンリスクが低い(信用力が高い)ほど、格付は高くなり、ソブリンリスクが高い(信用力が低い)ほど、格付は低くなります。ソブリン格付は、格付機関と呼ばれる専門の評価機関が評価・公表しています。代表的な格付機関には、スタンダード・アンド・プアーズ、ムーディーズ、格付投資情報センターなどがあります。評価手法は各社異なります。
例えば、スタンダード・アンド・プアーズでは、政治システムの評価、経済評価、対外評価、財政評価、金融評価をソブリン(国や政府機関)の信用力を決定する5つの主要分野であると捉えて分析・評価しています。同社の評価手法の詳細は同社のHPで公表されています。
→https://www.standardandpoors.com/ja_JP/delegate/getPDF?articleId=2172834&type=COMMENTS&subType=REGULATORY
ソブリン債は、国や政府機関が発行する債券であるため、一般的には民間企業が発行する債券(社債)に比べて信用リスクが低い債券として位置付けられます。しかし、国が発行していても、新興国のソブリン債の場合は、政府や政府機関の財政状況、国の経済状況、あるいは政変などの可能性により先進国に比べて信用リスクが高い傾向にあります。
また、先進国の間でも、ソブリンリスクには差があります。例えば、前述のスタンダード・アンド・プアーズによるG7のソブリン格付を見ると、次のように、ドイツとカナダが最上級のAAAであるのに対して、イタリアはBBB、日本はA+とドイツやカナダに比べて低くなっています。
G7各国のソブリン格付と各格付けの定義
- 日本 A+(債務者がその金融債務を履行する能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい。)
- 米国 AA+(債務者がその金融債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付け(「AAA」)との差は小さい。)
- ドイツ AAA(債務者がその金融債務を履行する能力は極めて高い。S&Pの最上位の発行体格付け。)
- フランス AA
- イタリア BBB(債務者がその金融債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い。)
- イギリス AA
- カナダ AAA
(プラス記号またはマイナス記号は、それぞれ、各格付けカテゴリー中での相対的な強さを表す。出所:スタンダード・アンド・プアーズ、自国通貨建て長期債、2019年5月31日現在)
信用リスク指数
米国を本拠地とする世界的な金融グループのブラックロック社は、独自手法でソブリン信用リスクを評価し、ブラックロック・ソブリン・リスク指数(BSRI)として公表しています。
ブラックロック・ソブリン・リスク指数は、先進国から新興国まで60ヶ国の信用リスクを、各国の財務状況、返済意欲、対外債務状況、金融部門の健全性などを多面的かつ包括的に分析してスコア化し、それを元に各国の国債の順位付けを行なっています。同社のHP(英語)では、60ヶ国の信用リスクをランキング順に見ることができ、とても便利な指数です。
BSRIによると、2019年6月末現在、ソブリンリスクが最も低いのはノルウェー、日本は60ヶ国中第30位、最下位(60位・最もソブリンリスクが高い)はベネズエラとなっています。
ブラックロック・ソブリン・リスク指数→https://www.blackrock.com/americas-offshore/resources/tools/blackrock-sovereign-risk-indicator
ソブリンボンドファンド
国内外の国債や政府機関債(ソブリン債)に投資する投資信託を、一般にソブリン・ボンド・ファンドと呼びます。世界のソブリン債に分散投資するタイプの投資信託をグローバル・ソブリン・ファンドと呼び、新興諸国のソブリン債に分散投資するタイプの投資信託をエマージング・ソブリン・ファンドと呼びます。
ソブリンボンドファンドを購入する前には、どのような信用リスクを抱えることになるのか知るために、組み入れ国債の格付情報をチェックすることも大切です。また、投資信託では、リスク抑制のためにファンド全体の平均格付をAAなど一定の格付けまでに抑えていることがあります。ファンドの平均格付は公表されていることが多いので、平均格付を比較することで、ファンド全体としての信用リスクの大小を比較することができます。