プロ向け投資運用業
プロ向け投資運用業とは、他者の資金や財産の運用を業務として行なう投資運用業の中で、一般の個人投資家などを対象とせず、「適格投資家」だけを対象とした投資運用業のことを指します。適格投資家向け投資運用業とも呼ばれます。
つまり投資運用業者には、「プロ」だけを対象としている運用会社と「素人」も対象としている運用会社が存在し、前者をプロ向け投資運用業者と呼ぶというわけです。正式には適格投資家向け投資運用業を行なう金融商品取引業者となります。
適格投資家とは
では、どんな人が適格投資家=プロ投資家なのでしょうか。金融商品取引法において、プロとして扱われる「適格投資家」は次のように定義されています。
特定投資家、その他その知識、経験及び財産の状況に照らして特定投資家に準ずる者として内閣府令で定める者又は金融商品取引業者(第二十九条の登録を受けようとする者を含む。)と密接な関係を有する者として政令で定める者。
そして、「特定投資家」は次のように定義されています。
さらに、「適格機関投資家」は有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者と定義されています。具体的には、銀行、信用金庫、生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社、信託銀行、年金基金など、顧客から預かったお金の運用を業務として行っている法人や団体を指します。
つまり、プロ投資家は、機関投資家や機関投資家並みの知識と経験、財産のある投資家ということになりますが、法律では特定投資家に準ずる者として認められるためには、次の要件を満たしている必要があります。
- 有価証券等の金融資産保有額が、3億円以上の法人又は個人
- 有価証券等の金融資産保有額が100億円以上の年金基金等
また、金融商品取引業者と密接な関係を有する者としては、当該運用業者の役職員、親会社等であることが必要とされています。
プロ向け運用業の誕生の背景
このプロ向け運用業は、平成23年5月25日に公布された「資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律」によって誕生した新しい制度です。一般の投資運用業は、個人投資家にもサービスを提供することから、投資家保護の観点からさまざまな規制の対象となってきました。
しかし、相手がプロであれば、プロ同士の契約となり、厳しい規制の対象外としてもよいのではないか、プロ向けに限定することでより柔軟なサービスが提供できるようになるのではないかという意見が金融業界の中にありました。また、このような制度を設けることで、投資運用業の立ち上げが促進され、それが日本の資本市場及び金融業の基盤強化にもつながるという考えもあり、法律が改正され、同改正に係る政令・内閣府令等が2012年4月1日に施行されました。これにより、プロ向け投資運用業については登録要件も一部緩和され、最低資本金等の要件が、これまでの5000万円以上から1000万円以上に引き下げられました。また、運用財産の総額の上限は200億円以下と規制されています。
なお、この適格投資家向け投資運用業を行なう金融商品取引業者は、既存の適格機関投資家等特例業者とは異なります。ファンド業務(ファンドの運用や販売勧誘)を行なう場合には、金融商品取引法の厳格な登録が必要ですが、適格機関投資家等特例業者は、一定の要件を満たすことにより、簡易な届出のみで、ファンド業務が行なえる業者のことで、適格機関投資家1名以上、それ以外の者(一般投資家)49名以下を相手に業務を行なうことが要件とされています。