約款変更とは
投資信託の約款は、投資信託の運用会社と信託銀行(受託者)との間で締結された信託契約の条項のことで、投資信託を運用・運営するための基本的な取り決めが規定されています。
この約款に規定された内容を変更することを約款変更といいます。約款変更を行うためには、金融庁への届出が必要とされています。
また、約款の中でも「変更の内容が重大なもの」については、保有者である投資家(受益者)の書面による決議が必要であり、運用会社と受託者だけで勝手に変更することはできません。受益者は、受益権の口数に応じて、議決権を有することになり、議決権の3分2以上の賛成をもって可決され、約款変更の手続きが進められることになります。なお、受益者が議決権を行使しないときは、受益者は書面による決議について賛成するものとみなす旨の定めをすることができることになっています。(2018年4月末現在)
変更の内容が重大なものとは
では、この「変更の内容が重大なもの」とは何を指すのでしょうか
変更の内容が重大なものとは、投資信託及び投資法人に関する法律施行規則(第29条)において、次の項目のうち投資信託の「基本的な性格を変更させることとなるもの」とされています。
- 委託者及び受託者の商号又は名称
- 受益者に関する事項
- 受益証券に関する事項
- 信託の元本及び収益の管理及び運用に関する事項(投資の対象とする資産の種類を含む。)
- 投資信託財産の評価の方法、基準及び基準日に関する事項
- 信託の元本の償還及び収益の分配に関する事項
- 信託契約期間、その延長及び信託契約期間中の解約に関する事項
- 信託の計算期間に関する事項
- 受託者及び委託者の受ける信託報酬その他の手数料の計算方法並びにその支払の方法及び時期に関する事項
- 受託者が信託に必要な資金の借入れをする場合においては、その借入金の限度額に関する事項
- 委託者が運用の指図に係る権限を委託する場合においては、当該委託者がその運用の指図に係る権限を委託する者の商号又は名称及び所在の場所及び委託に係る費用
最も頻繁に行われる「変更の内容が重大」な約款変更
最も頻繁に行われている「変更の内容が重大な」約款変更は、信託契約期間中の解約に関する事項、つまり、投資信託の繰上償還です。運用会社が運用資産の減少などにより目論見書で定めた運用方針に則った運用ができないと判断した場合に、信託期間が満了する前に投資信託の運用を中止するケースです。2018年に入ってからも、1月に15本、2月に13本の追加型株式投資信託が繰上償還されています。
商品としての基本的な性格を変更させない変更
なお、金融庁は、次の変更については、「商品としての基本的な性格を変更させる」ものではないと考えており、これらの変更については受益者の決議は不要とされています。(出所:金融庁平成26年6月27日 投資信託に関するQ&A)
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受益者の利益に資する投資信託約款の変更
- 解約申入後、償還金受渡日までの期間を短縮する場合
- 信託期間終了までの間、解約が制限されていない投資信託に係る信託期間を延長する場合
- 受益者の負担する信託報酬率・費用等を引き下げる場合
- 追加信託申込単位を小口化する場合、追加信託可能日を増加する場合、および海外市場の休業日等による追加設定申込み不可日を削減する場合
- 一部解約申込単位を小口化する場合、一部解約可能日を増加する場合、および海外市場の休業日等による一部解約申込み不可日を削減する場合
- 信託財産留保額を減額または廃止する場合
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事務的事項に係る投資信託約款の変更であって受益者の利益には中立的なもの
- 委託者または受託者について、合併等による組織再編成に伴い商号を変更する場合および本店移転に伴い所在地を変更する場合
- 計算期間の長さを変更することなく、決算日を変更する場合
- 受託者および委託者の間の信託報酬の配分率を変動させる場合
- 委託者の運用権限の委託先について、運用権限を委託する範囲を削減する場合、合 併等による組織再編成に伴い商号を変更する場合および本店移転に伴い所在地を変更する場合、ならびにこれらの場合において、運用権限の委託に係る費用を増減させるとき
- 委託者の運用権限の委託先を変更する場合
- ある投資信託について、その組入資産を、当該投資信託と同一の運用方針の他の投資信託へ移管し、いわゆるファミリーファンド化をする場合
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法令改正に伴い、法令適合性を維持するために行わざるを得ない投資信託約款の変更
- 消費税率の引上げに伴い、投資信託約款中の信託報酬に係る記載事項を変更する場合
- 法令改正に伴い、投資信託約款中で使用されている法令名、条文番号および用語を当該法令改正に必要な範囲で変更する場合
- 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)第130条第1項第8号の2の施行に伴い、同号に規定する信用リスクを適正に管理する方法を新たに投資信託約款に定める場合
なお、これらは法改正などにより変更となる場合がありますので、最新の情報は金融庁のHPなどでご確認ください。