ハイブリッド証券とは
2010年頃から、ハイブリッド証券を投資対象とするファンドが登場しています。ハイブリットは「混成の、混合の」という意味の英語からきています。自動車でハイブリッド車というと、ガソリンエンジンと電気など二つの動力源を持つ車ですが、証券の場合は債券と株式の中間の特性を持った証券を指します。
具体的には優先株、劣後債、永久債、優先出資証券などが含まれます。ただし、実際に各ファンドが組み入れているハイブリッド証券の種類、組入比率、格付けなどは、ファンドにより異なります。
ハイブリッド証券の特徴
種類により違いはありますが、一般的に、ハイブリッド証券は利息(または配当)が支払われ、満期や繰上償還時に額面で償還されるという債券に似た特質と、発行する企業にとっては、株式のような資本性があるという特徴があります。
また、期待収益で見ると、普通社債よりも高く、普通株式よりも低い傾向にあります。また、価格変動リスクは普通社債より高く、普通株式より低く、弁済順位は普通社債より低く、普通株式より高いと言えます。
普通社債 | ハイブリッド証券 | 普通株式 | |
期待収益 | 低い | → → → → → → | 高い |
価格変動リスク | 低い | → → → → → → | 高い |
弁済順位 | 高い | ← ← ← ← ← ← | 低い |
ハイブリッド証券の例:
優先株
優先株は、普通株式に比べて、剰余金の配当を優先的に受ける、または、残余財産の分配を優先的に受ける、あるいは両方について優先的に受けることができる株式のことです。ただし、株主総会において議決権を行使することはできません。
預金保険法では、「その発行の時において議決権を行使することができる事項のない株式であって、剰余金の配当及び残余財産の分配について優先的内容を有するもの」を優先株式等と定義しています。
劣後債
劣後債は、元利金の支払い順位が普通社債よりも低い社債のことで、劣後特約付債券とも呼ばれます。満期はなく、主に銀行などの金融機関が資本増強のために発行します。劣後債は、破産手続の開始・会社更生手続の開始・民事再生手続の開始などの劣後事由が発生した場合に、その元利金の支払いを、劣後債権以外の上位債権にかかる債務の履行よりも、後順位になるため、その分、普通社債よりも利率が高く設定されます。
預金保険法では、「元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された社債であって、銀行等若しくは銀行持株会社等又は株式会社商工組合中央金庫の自己資本の充実に資するものとして政令で定める社債に該当するもの」を劣後債(劣後特約付社債)と定義しています。
永久劣後債
永久劣後債は劣後債の中でも償還期限の定めがないもののことです。また、発行会社が債務超過に陥った時あるいは分配可能額がない時などは、利払いを行なわなくてよく、次回の利払い時まで延期が認められています。
優先出資証券
優先出資証券は、債券と普通株の中間の性質を持ち、優先株に類似した有価証券で、共同組織金融機関の優先出資に関する法律に基づき発行されるものと資産の流動化に関する法律に基づき発行されるものがあります。
共同組織金融機関の優先出資に関する法律とは、協同組織金融機関について、自己資本の充実に資するため、普通出資を補完するものとして優先出資を発行できる制度を設けるとともに、優先出資者の権利の保護について定めることにより、協同組織金融機関の経営の健全性の確保を図ることを目的とした法律です。
一方、資産の流動化に関する法律とは、特定目的会社又は特定目的信託を用いて資産の流動化を行う制度を確立し、これらを用いた資産の流動化が適正に行われることを確保するとともに、資産の流動化の一環として発行される各種の証券の購入者等の保護を図ることにより、一般投資者による投資を容易にし、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする法律です。
つまり、優先出資証券は金融機関が自己資本の充実を目的として発行する有価証券という位置付けです。優先出資証券は、通常は残余財産分配請求権において、劣後債権者より劣後し、普通株より優先します。一般的な発行条件は、議決権を有さず、配当率があらかじめ定められ、償還期限が定められていないという条件が多く見られます。優先出資は、租税特別措置法条の株式等とされており、譲渡した場合の所得は、キャピタルゲイン課税の対象となります。
⇒「優先出資証券とは?」
ハイブリッド証券を投資対象とするファンド例(2020年3月24日現在)
- グローバル・ハイブリッド証券ファンド(為替ノーヘッジ型)
- グローバル・ハイブリッド証券ファンド(為替ヘッジ型)
- ダイワ世界コーポレート・ハイブリッド証券F(為替ヘッジあり)
- ダイワ新グローバル・ハイブリッド証券F(為替ヘッジあり)
- ダイワ新グローバル・ハイブリッド証券F(為替ヘッジなし)
- ドイチェ世界コーポレート・ハイブリッド証券F(年4回決算型)Aコース(H)
- ドイチェ世界コーポレート・ハイブリッド証券F(年4回決算型)Bコース(F)
- ニッセイ世界ハイブリッド証券戦略F(毎月決算型・為替ヘッジありコース)
- ニッセイ世界ハイブリッド証券戦略F(毎月決算型・為替ヘッジなしコース)