先物取引とは
先物取引とは、ある商品について、ある時点において、予め取り決めた価格で取引することを約束する契約のことです。
たとえば、「金1kgについて、1年後に、130万円で買うことを約束する」といった取引が先物取引です。
先物取引の利用目的
先物取引の利用目的としては、対象となる商品(原資産)の価格変動リスクを回避するためのリスクヘッジ目的、そして、先物価格と自らの将来についての予測との乖離から利益を得るために原資産の価格変動リスクを積極的に受け入れる投機(Speculation)目的、先物の理論価格と市場価格の差に着目して利益を得ようとする裁定(Arbitrage)目的があるといわれています。
ヘッジ目的
ヘッジ目的の先物取引の利用としては、例えば、コーヒー豆を原料として調達しなければならないコーヒーチェーンの会社が、先物取引を利用して、1年後に必要なコーヒー豆を買い付ける契約を結ぶといった例が考えられます。これによって、将来、価格変動が起こったとしても、このコーヒーチェーンの会社は、現時点で契約した価格で、必要となるコーヒー豆を調達することができ、その間の価格変動リスクを回避することができます。
投機目的
投機目的の先物取引の利用は、個人にとって、もっとも一般的な利用方法で、現時点で自らの予測する将来の価格と実際に市場で成立している先物価格の差から利益を得ようとするものです。
例えば、日経平均株価が3ヶ月後には12,000円になると自らは考えており、一方で、3ヶ月後に期日を迎える日経平均株価(日経225)先物の価格が市場において、10500円であるとするならば、この日経225先物を買うという取引を行います。もし、予測どおり、日経平均株価が値上がりをすれば、3ヵ月後にその差額分の利益を得ることができます。
逆に、9,000円に値下がりすると予測するならば、「10500円の日経225先物を売る」という取引をすることで、実際に値下がりした場合には、利益を得ることができます。
現物取引とは異なり、取引の時点においては、取引対象となる資産の価格の全額を用意する必要がなく、一定割合の証拠金の積むことで取引ができるために、少額でも大きな取引が可能である点が特徴的です。但し、このような取引は、原資産の価格変動リスクを積極的に受け入れて利益を得ようとするものですから、予測と反対の値動きをした場合には、利益の場合と同様に非常に大きな損失を被るリスクが存在し、またそのような値動きをした場合には、追加の証拠金の差し入れを求められることもあります。
裁定目的
裁定目的での先物取引の利用とは、先物の市場価格と先物の理論価格との差に着目して利益を得ようとする取引です
例えば、1年後に決済が行なわれる金先物の市場価格が120万円/1000g。一方、現物の市場価格は110万円。市場の金利が5%であったとしましょう。
そこで、まず、金利5%で110万円の資金を借り、その110万円で、現物の金を1000g購入し、さらに先物市場で1年後に1000gの金を120万円で売る取引を行うとしましょう。
この場合、1年後において、110万円で購入した金を120万円で売ることができます。その中から110万円の借入れを利子を含めて115万5千円を返却すると、4万5千円の利益が手元に残ることになります。
この取引においては、購入価格も、売却価格も、借入れ金利も当初の段階で決定されており、したがって、理論上4万5千円の利益がでることも当初の時点で確定しています。
ここでは、先物の理論価格については詳しくふれることはしませんが、このような先物と現物、また期間の異なる先物どうしの理論価格の差を利用した取引を裁定取引といい、低リスク・低リターンの取引であるといわれています。
ただし、実際には、取引コストなどが存在し、また資金調達のコストも全ての市場参加者が同じ条件ではないために、個人がこのような取引を行うことは困難であるといわれています。