超長期債とは?


超長期債とは

2016年に入って以降、欧州ではベルギー、フランス、スペインが償還までの期間が50年という超長期国債を発行し、日本でも、トヨタや大和ハウスなど大手企業が20年債等を相次いで発行するなど、超長期債が注目を浴びています。

では、この超長期債とはどのような債券でしょうか。

超長期債は、一般に、償還までの期間が10年を超える債券のことを言います。超長期債には、償還期間が15年程度のものから、長いものでは100年という債券もあります。

 

日本国債の場合

日本国債の場合は、次表のように償還までの期間の違いにより、短期債、中期債、長期債、超長期債券に分類されています。超長期国債は償還期間が10年超の国債ことです。

【日本国債の種類と償還期間】

名称

償還期間

短期債 1年以内(3カ月、6カ月、1年など)
中期債 1年超~5年以内
長期債 5年超~10年以内
超長期債 10年超~

 

日本の超長期国債には15年、20年、30年、40年のものがあります。国債の発行残高に占める割合を見ると、2015年末時点で、超長期債の割合は約35%で、長期債と並んで、国の借金を支える柱になっています。なお、超長期債の銘柄数は2015年末で219銘柄ありました。

 

米国の超長期債券

米国の債券は、満期の違いにより短期債、中期債、長期債、超長期債に分類されますが、日本とは期間の定義に違いが見られます。米国政府の発行する債券の場合は、次の表のように、償還期間の違いにより、Treasury Bill(トレジャリー・ビル)、Treasury Note(トレジャリー・ノート)、Treasury Bond(トレジャリー・ボンド)があり、米国財務省によると、各債券の償還期間は次の通りです。

【米国の国債の分類】
債券の種類 日本語訳

償還期間

Treasury Bill(トレジャリー・ビル) 短期国債 52週以内
Treasury Note(トレジャリー・ノート) 中期国債 2年、3年、5年、7年、10年
Treasury Bond(トレジャリー・ボンド) 長期国債 10年超

 

このように、日本語では、トレジャリー・ビルは短期国債、トレジャリー・ノートは中期国債、トレジャリー・ボンドは長期国債と訳されています。ビル(bill)、ノート(note)、ボンド(bond)と異なる英語が使われますが、日本語では全て債券として訳され、このトレジャリー・ボンドが日本でいうところの超長期債券に該当します。なお、米国では、償還期間が最も長い国債は30年債です(2016年現在)。

 

欧州政府による超長期債の発行

欧州では、2016年3月に、アイルランドが私募により償還期間が100年の債券を発行しました。 4月にはフランスとベルギーの各政府が償還期間が50年という超長期債を発行し、5月にはスペインがこれに追随し、同じく50年債を発行しています。

 

日本政府は超長期国債にシフト

政府が発表している「国債管理政策の概要」を見ると、市中発行額における超長期債券の割合は過去10年にわたって増加傾向にあります。実際に、超長期債券の割合は平成17年度には市中発行額全体の10.4%でしたが、平成27年度には26%に増加しています。超低金利環境を利用して、超長期債券で資金調達を行うことで、将来における金利上昇局面での利払い費の上昇を抑える効果が期待されています。また、超長期債へのシフトについて、政府は、国債管理政策の概要の中で、生命保険会社や年金等の機関投資家の長期運用ニーズの増大に配慮しているとも説明しています。

 

企業による超長期社債の発行

一方、日本の民間企業を見ると、2016年に入ってから、超低金利を背景に、低コストで長期の資金を確保しようとする企業による償還期間が20年を超える超長期債の発行が相次いでいます。最も長い償還期間は40年債で、6月に三菱地所が150億円、7月に東日本旅客鉄道が200億円発行しました。

 

 

【2016年に発行された超長期社債
起債日
(月/日)
証券コード 回号/銘柄名 発行額
(億円)
利率
(%)
発行   価額
(円)
応募者利回り(%) 償還期間(年月日) 年限
(年)
4/8 9022 79 東海旅客鉄道 (社債間限定同順位特約付) 100 0.421 100.00 0.421 H48.4.14 20
4/15 9005 84 東京急行電鉄 (社債間限定同順位特約付) 100 0.662 100.00 0.662 H48.4.22 20
4/13 9508 439 九州電力 (一般担保付) 200 0.907 100.00 0.907 H48.4.25 20
4/13 9509 332 北海道電力 (一般担保付) 200 0.907 100.00 0.907 H48.4.25 20
5/18 9506 484 東北電力 (一般担保付) 200 0.758 100.00 0.758 H48.5.23 20
5/25 9503 503 関西電力 (一般担保付) 200 0.848 100.00 0.848 H48.5.23 20
5/27 3231 9 野村不動産ホールディングス 100 0.99 100.00 0.990 H48.6.2 20
5/27 7203 18 トヨタ自動車 (社債間限定同等特約付) 200 0.343 100.00 0.343 H48.6.3 20
6/3 4188 23 三菱ケミカルホールディングス (社債間限定同順位特約付) 200 0.85 100.00 0.850 H48.6.9 20
6/3 9202 32 ANAホールディングス (社債間限定同順位特約付) 200 0.99 100.00 0.990 H48.6.9 20
6/1 1925 8 大和ハウス工業 (特定社債間限定同順位特約付) 100 0.603 100.00 0.603 H48.6.20 20
6/3 9023 18 東京地下鉄 (一般担保付) 100 0.343 100.00 0.343 H48.6.20 20
6/10 9502 510 中部電力 (一般担保付) 100 0.628 100.00 0.628 H48.6.25 20
6/15 9508 442 九州電力 (一般担保付) 100 0.668 100.00 0.668 H48.6.25 20
7/5 3270 19 森ビル (社債間限定同順位特約付) 100 0.83 100.00 0.830 H48.7.11 20
7/5 4631 38 DIC (社債間限定同順位特約付) 50 0.95 100.00 0.950 H48.7.11 20
7/8 9062 12 日本通運 (社債間限定同順位特約付) 200 0.7 100.00 0.700 H48.7.14 20
7/8 7012 46 川崎重工業 (社債間限定同順位特約付) 100 0.82 100.00 0.820 H48.7.15 20
7/13 8015 23 豊田通商 (社債間限定同順位特約付) 200 0.7 100.00 0.700 H48.7.18 20
7/8 9506 486 東北電力 (一般担保付) 100 0.485 100.00 0.485 H48.7.25 20
7/8 9502 512 中部電力 (一般担保付) 100 0.435 100.00 0.435 H48.7.25 20
7/15 4568 5 第一三共 (社債間限定同順位特約付) 750 0.81 100.00 0.810 H48.7.25 20
7/7 9020 116 東日本旅客鉄道 (社債間限定同順位特約付) 100 0.21 100.00 0.210 H48.7.28 20
4/14 9021 43 西日本旅客鉄道 (社債間限定同順位特約付) 100 0.714 100.00 0.714 H58.4.20 30
4/20 8801 50 三井不動産 (社債間限定同順位特約付) 100 1.0 100.00 1.000 H58.4.27 30
6/3 8951 14 日本ビルファンド投資法人 投資法人債(特定投資法人債間限定同順位特約付) 50 1.0 100.00 1.000 H58.6.8 30
6/3 9023 19 東京地下鉄 (一般担保付) 100 0.608 100.00 0.608 H58.6.21 30
7/15 4568 6 第一三共 (社債間限定同順位特約付) 250 1.2 100.00 1.200 H58.7.25 30
7/7 9020 117 東日本旅客鉄道 (社債間限定同順位特約付) 200 0.39 100.00 0.390 H58.7.27 30
6/21 8802 117 三菱地所 (担保提供制限等財務上特約無) 150 0.789 100.00 0.789 H68.6.27 40
7/7 9020 118 東日本旅客鉄道 (社債間限定同順位特約付) 200 0.5 100.00 0.500 H68.7.28 40

(出所:日本証券業協会

 

超長期債を投資対象とするETF・投資信託

このように世界的に注目されている超長期国債ですが、日本で証券会社を通じて購入できる外国籍投資信託の中に、次の3本のように超長期債を投資対象とするETFがあります。

上記はいずれも超長期債を投資対象とするETFですが、平均残存期間や構成比率はファンドにより異なりますので、詳細は各ETFのホームページでご確認下さい。

バンガードETF

i シェアーズ

また、三井住友DSアセットマネジメントが運用する「日本超長期国債ファンド」は、大和投信の運用する「ダイワ円債セレクト超長期国債コース」などは、日本の超長期債を主な投資対象とする投資信託です。