投資信託の中に、「アクティブ・アセット・アロケーション・ファンド」と呼ばれるものや、「アクティブ・アセット・アロケーション戦略」を用いて運用を行うと説明されているものがあります。このアクティブ・アセット・アロケーションとはどのようなファンドのことでしょうか。
アセット・アロケーションとは
まず、アセット・アロケーションとは何でしょうか。
アセット・アロケーションとは、投資信託を含めた運用の世界では、投資家のリスク許容度、年齢や投資期間、投資目標などを考慮して、異なるリスクやリターンの特性をもつ資産クラス(株式・債券・短期金融資産・不動産投資信託など)への投資配分比率を決定し、運用を行なう手法のことです。
アセット(asset)は資産、アロケーション(allocation)は配分という意味です。このような運用を行う投資信託を一般にアセット・アロケーション型ファンドと呼びます。
アクティブ・アセット・アロケーション・ファンドとは
アセット・アロケーションには、最初に決定した資産配分比率を維持する手法と、投資環境の変化に応じて各資産の配分比率を機動的に変更する手法があります。例えば、株式に40%、債券に60%投資するという投資信託において、この配分比率を変えないものと市場の状況に応じて、株式に30%、債券に70%、次に株式に45%、債券に55%と言うように機動的に変更するものです。この後者の機動的に配分比率を変更する手法をアクティブ・アセット・アロケーションと呼び、この運用手法を採用している投資信託をアクティブ・アセット・アロケーション・ファンドと呼びます。なお、アクティブ(active)は機動的という意味です。
アクティブ・アセット・アロケーション戦略では、高度なコンピュータモデル等を利用して、リスクをコントロールしながら、長期において最適なリターンの獲得を目指します。ファンドマネージャーは、金利、インフレ動向、金融政策、経済指標などを含む世界中のさまざまなデータをリアルタイムでインプットして、それらを分析しながら相場見通しを立て、資産の配分の変更を機動的に変更します。
投資制限
機動的に資産配分を変更するといっても、リスクを抑えるという観点から、各ファンドは一般的には投資制限を設けています。
例えば、世界の株式と債券及び金を投資対象としているアクティブ・アセット・アロケーション・ファンドにおいて、金の値上がりが期待できるからといって、資産を全て金に集中させるようなことは行われません。
一般的に、各投資信託では、ベース・ポートフォリオと呼ばれる基本となるポートフォリオ(基本資産配分)を決定し、その配分比率から、例えば、プラスマイナス10%など一定の許容変動範囲内で配分を機動的に変更します。
例えば、次の表のように、基本資産配分を国内株式20%、国内債券40%、外国株式30%、外国債券15%、短期金融商品5%として、各資産への配分の上限を次のように設定するというものです。基本資産配分の見直しの検証も5年のように一定期間ごとに実施されます。
国内株式 | 国内債券 | 外国株式 | 外国債券 | 短期金融商品 | |
基本資産配分 | 20% | 40% | 30% | 15% | 5% |
上限 | 35% | 50% | 40% | 25% | 20% |
下限 | 5% | 30% | 15% | 5% | 0% |
投資対象国や地域はファンドにより異なる
アクティブ・アセット・アロケーション・ファンドが投資対象とする国や地域はファンドにより異なります。先進国だけを対象にするファンド、新興国だけを対象にするファンド、両者を対象にするファンドがあります。また、特定の国の上場株式、国内の公社債、有価証券先物取引、有価証券指数等先物取引の中で配分を行うファンドもあります。
投資対象資産の範囲はファンドにより異なる
アセット・アロケーション・ファンドは、複数の資産を投資対象としますが、その範囲もファンドにより異なります。株式と債券だけを対象とするファンドもあれば、これらに加えて、不動産投資信託、短期金融資産、デリバティブ、コモディティを含めるかどうかはファンドにより異なります。また、債券についても、不動産担保証券と呼ばれる不動産関連債券を含めるかどうかなど、特定の資産内での種類の違いも見られます。
上手く行くのか
運用の世界では、アセットアロケーションは運用成果の9割を決めると言われることもあります。それほど重要な判断です。アクティブ・アセット・アロケーションはその重要な判断を機動的に行うわけですが、その結果、目的通りの運用成果が挙げられるかどうかは別問題です。美しい理論と説明に惑わされることなく、過去の運用成績をきちんと確認することが大切です。
アクティブ・アセット・アロケーションファンドの特徴
- 株式、債券、短期金融資産、不動産投資信託、デリバティブ、コモディティなど、様々な資産に分散投資する(組み入れ対象とする資産はファンドにより異なる)。
- 投資環境や見通しの変化に応じて各資産への配分比率を機動的に変更する。
- 極端な集中投資は行わない。