AI(人工知能)ファンドとは?


AI(人工知能)ファンド

まとめ

  • AIファンドという場合、①AI関連株式に投資するファンドと②AIを利用して運用を行うファンドという二つの意味がある。
  • AI関連株式に投資するファンドは、他のテーマ型ファンドと同様に、集中投資によるリスクがある。また、市場の注目が長続きするとは限らない。
  • AIを利用して運用を行うからといって、優れた投資成果が保証されるものでも、他の運用手法に対して優位であるわけでもない。

 

投資信託の世界で「AI(人工知能)ファンド」という場合、二つの意味があります。一つは、AI関連銘柄(株式)に投資するファンド、そしてもう一つはファンドの運用にAIを活用するファンドです。

 

AI関連銘柄に投資するファンド

AI関連銘柄には、ディープラーニングを含むAI(人工知能)技術の開発に携わる企業、AI技術を利用した製品やサービスの開発・提供を行う企業、AIやビッグデータ分析を行うためのハードウェアを提供する企業、AIを活用して事業を展開する企業などがあり、AI関連銘柄に投資するファンドは、これらの企業の株式に的を絞って投資します。テーマ型ファンドの一つとして捉えることができます。

AI関連銘柄の業種は情報テクノロジーセクターを中心に、一般消費財、通信、ヘルスケア、輸送、不動産、金融など、多岐に渡ります。

わたしたちの周りでも、スマート・スピーカー、お掃除ロボット、自動翻訳、スマホのカメラ機能、自動車の自動運転、病気の症例をAIに読み込ませて診断に活用する技術、工場において不良品を見分ける画像診断技術、AIによる記事作成、AIを利用した資産運用など、既に日常生活の様々な場所でAIは利用されています。

 

AI関連銘柄に投資するファンドのリスク

AIという言葉が注目されるようになるに伴い、2016年頃からAI関連銘柄に投資するファンドも多く設定されるようになりました。AI関連銘柄に投資するファンドにはどのようなリスクがあるでしょうか。

 

集中投資によるリスク

AI関連銘柄に投資するファンドは、他のテーマ型ファンドと同様に集中投資によるリスクが伴います。AIの開発やAIを利用したサービス・製品を提供する企業の業種は多岐に渡りますが、AI関連銘柄に投資するファンドの業種別内訳を見ると、情報技術と通信業が占める割合が高い傾向にあります。そのため、それらの業種の株価動向の影響を強く受ける傾向があります。

例えば、ナスダックに上場しているAI関連銘柄に的を絞って投資する「グローバルX AI&ビッグデータETF(ティッカーコード AIQ)」の業種別内訳を見ると、次のグラフのように情報テクノロジーと通信サービスで全体の8割を占めていることがわかります。業種別内訳はファンドにより異なりますが、傾向としては、情報テクノロジーと通信サービスの占める割合が高くなっています。

グローバルX AI&ビッグデータETF(ティッカーコード AIQ)の業種別内訳

情報テクノロジー銘柄のみに的を絞って投資するテーマ型ファンドに比べれば分散は効いていますが、東証株価指数日経平均株価のように全ての業種に幅広く分散された指数に連動する投資信託に比べると、集中的な投資によるリスク−特定の業種の動向がファンドの基準価額に与える影響が大きくなる−があるわけです。

 

テーマに対する人気の持続性

もう一つのリスクは、AIという投資テーマの人気が継続するか不透明であるということです。株式市場は、常に新しい投資テーマを見つけ、投資信託業界では、そのテーマに沿った投資信託が次々に設定されてきました。AIに関しては、2000年代から第三次AIブームが始まっていると言われており、AIファンドも多く設定されています。

2021年時点では、AI関連銘柄の人気は高い傾向にあります。この人気が長期に継続するものかどうかは誰にもわかりませんが、このブームが終わってしまった時に、ファンドはどうなるでしょうか。たとえ、投資対象となっている企業の業績が好調であった場合でも、株式への人気が後退してしまうこともあります。話題がある時には、割高でも買われる銘柄が、ブームが終われば今度は割高だからという理由で売られることもあります。一般的には、ブームが終わったテーマ型ファンドは資金流出に見舞われ、運用残高の減少を経験することが多くあります。最悪のケースでは、残高減少により、ファンドが繰上償還されてしまうこともあります。テーマ型ファンドでは、そのテーマの持続性が高いものかどうかを十分検討することが大切です。

 

AI関連銘柄に投資するファンドの例

グローバルAIファンド(三井住友DSアセットマネジメント)(設定日:2016年9月9日)

世界の上場株式を対象に、AIテクノロジーの開発のほか、AIの開発に必要なコンピューティング技術、AIを活用したサービス、ソフトウェア・アプリケーションの提供を行う企業や、AIを活用したサービスを駆使して自社ビジネスを成長させる企業等に投資する。

 

イノベーション・インデックス・AI(三井住友DSアセットマネジメント)(設定日:2018年6月29日設定)

世界各国の企業の中から、AI関連企業の株式に投資し、STOXXグローバルAIインデックス(ネット・リターン、円換算ベース)の動きに連動する投資成果を目指すインデックスファンド

 

ダイワ・グローバルIoT(Internet of Things)関連株ファンド-AI新時代-(為替ヘッジあり)(大和アセットマネジメント)(設定日:2017年4月21日)

世界のIoT関連企業に投資するファンド。このファンドにおいて、IoT関連企業とはIoT関連企業とは、IoTを活用した製品・サービスの提供およびビジネスの創出・拡大を行う企業、IoTを支 える通信インフラ(社会基盤)を管理、提供する企業、IoTに関連した技術を駆使し、AI(人工知能)に携わる企業等を指します。

ニッセイ・ジャパンAI関連株式ファンド(ニッセイアセットマネジメント)(設定日:2017年4月17日)

日本の株式の中から、主にAI(人工知能)関連企業の株式に投資するファンド。

 

野村グローバルAI関連株式ファンドAコース・Bコース(野村アセットマネジメント)(設定日:2017年2月23日)

主として新興国を含む世界各国のAI(人工知能)技術関連の株式に投資する。

 

ファンドの運用にAIを活用するファンド

ファンドの運用にAIを活用するファンドとは、運用会社などが独自に開発したAIモデルを活用し、過去の株価や財務に関する膨大なデータをAIに読み込ませ、それらを基にAIモデルが銘柄を評価し、株価の上昇が期待される銘柄を選別して組み入れるファンドです。

ファンドの運用にAIを活用するファンドでは、AIの判断とファンドマネージャー(人間)の判断を融合して運用するファンドとAIが投資判断、取引の執行まで行うAIが運用するファンドがあります。

 

運用にAIを活用するファンドの例

AI(人工知能)活用型世界株ファンド(愛称:ディープAI)(アセットマネジメントOne

AI活用型世界株ファンドは、アセットマネジメントOneが開発した「ディープラーニングモデル」による銘柄選択に、ニュースデータ等の「テキスト解析」による投資テーマ、注目銘柄等の情報やアナリストによる銘柄情報を融合させ、ポートフォリオ構築を行います。最新テクノロジーとアナリストによる定性分析の融合を図ることで、リターンの獲得を目指すファンドです。「ディープラーニング」技術を活用した国内初の海外株式ファンドだと言われています。

 

中国株AI運用ファンド(運用会社:SOMPOアセットマネジメント

上海・深セン証券取引所に上場されている人民元建て株式(中国A株)等に投資するファンド。UBPインベストメント・マネジメント(上海)リミテッドが独自に開発したAIモデルを活用した運用を行います。AIモデルでは、過去の株価のボラティリティや出来高等のデータを用いたパターン分析を行い、上昇が予想される銘柄を選定。市場のボラティリティについても独自に推定し、ポートフォリオ全体のボラティリティを抑制するために、株式の組入れ比率を0~100%の範囲で機動的に調整します。

 

楽天・ビッグデータ日本株ファンド(運用会社:楽天投信投資顧問

日本の取引所に上場している株式のうち、ビッグデータを活用した分析と独自の定性判断により、今後成長が見込まれる銘柄に厳選投資するとともに、株価指数先物取引の売建て取引を活用し、絶対収益の確保を目指すファンド。株式の個別銘柄選択にあたっては、楽天グループをはじめとする様々な情報ソースのビッグデータを活用した分析に加え、独自の定性判断により今後成長が見込まれる銘柄を厳選する。

 

AI日本株式オープン(絶対収益追求型)(愛称:日本AI)(運用会社:三菱UFJ国際投信

三菱UF信託銀行と三菱UFJトラスト投資工学研究所(MTEC)が開発したAIモデルを利用して、日本の株式に投資を行うと同時に株価指数先物取引等への投資を行い、特定の市場に左右されることなく収益の獲得を目指すファンド。

 

楽天グローバル・プレミア・ファンド(ロボット自動運用型)(楽天投信投資顧問

主として、英国のマン・グループが運用する外国投資信託を通じて、世界中の株式、債券、通貨および派生商品を主要投資対象に、『ロボットによる自動運用』を実践するファンド。

 

AIは運用が上手いのか

運用にAIを活用するファンド5本の騰落率(過去1年、過去3年)は次の表の通りでした。AI(人工知能)と聞くと、何やらとても賢く、優れた運用ができるようなイメージを受けますが、実際の運用結果からは、AIを活用するからと言って、必ずしも優れた運用実績を残しているわけではないことがわかります。将来AIが更に高度に進化し、優れた運用力を持つようになる可能性はありますが、現時点では、AIモデルの活用が優れた運用を意味する訳でも、他の運用手法よりも優れた運用成績を保証するわけでもありません。

ファンド名 設定日 基準価額(2021年4月30日現在) 騰落率(過去1年)(税引前分配再投資 騰落率(過去3年)(税引前分配金再投資)
AI(人工知能)活用型世界株ファンド 2017年9月29日 13,776円 48.91% 34.68%
中国株AI運用ファンド 2018年10月26日 15,437円 49.77% n/a
楽天・ビッグデータ日本株ファンド 2019年4月22日 10,643円 7.8% n/a
AI日本株式オープン(絶対収益追求型 2017年2月1日 8,725円 1.3% -13.1%
楽天グローバル・プレミア・ファンド(ロボット自動運用型) 2018年1月19日

 

7,829円 -5.7% -19.5%

時代の流れの中で、AIファンドだけでなく、様々なテーマ型ファンドが登場しますし、運用の世界においても、他の業界と同様に、AIの活用は益々盛んになると予想されます。しかし、すぐに飛びつくのではなく、5年などの運用実績ができてから、じっくりとその評価をして、それから購入した方が良いでしょう。ただし、上記の5本のファンドのケースでは、信託期間が無期限のファンドは楽天グローバル・プレミア・ファンドのみであり、他のファンドは運用期間が5年、10年と短くなっていますので、5年経過してからでは、残りの運用期間は最大5年程度となってしまい、長期的な資産形成が目的であれば適さないということになります。

 

もう一度まとめ

  • AIファンドという場合、①AI関連株式に投資するファンドと②AIを利用して運用を行うファンドという二つの使い方がある。
  • AI関連株式に投資するファンドは、他のテーマ型ファンドと同様に、集中投資によるリスクがある。また、市場の注目が長続きするとは限らない。
  • AIを利用して運用を行うからといって、優れた投資成果が保証されるものでも、他の運用手法に対して優位であるわけでもない。