コモディティファンドとは
原油・ガソリン・天然ガスなどのエネルギー、銅・ニッケル・金などの金属、小麦・とうもろこし・大豆・牛・牛乳などの農産物といった各種商品のことをコモディティ(commodity)と呼び、これらの商品の値上がりから利益を得ることを目的とした投資信託のことを一般にコモディティファンドと呼びます。コモディティ投信と呼ぶこともあります。
日本の投資信託は、2009年7月末現在、法律上、このようなコモディティや商品先物に直接投資することはできませんが、三つの投資対象を活用することで、コモディティの値上がりからの恩恵を享受することを目指すことが可能となります。
①商品指数を利用する
一つは、DJ-UBSコモディティ・インデックスやロジャーズ・インターナショナル・コモディティ・インデックスのような代表的な商品指数の騰落率に償還価額が連動する外貨建ての証券に投資する方法です。このような性格の証券のことを指数連動債や仕組み債と呼びます。この場合、直接の投資対象は“債券”となるため、分類上はバランス型の投資信託になります。
②外国籍の投資信託を利用する
二つ目の方法は、商品や商品先物に投資する外国籍の投資信託に投資する方法です。外国籍の投資信託とは外国において、現地の法令や規則に基づいて設立された投資信託のことです。日本とは異なり、商品や商品先物に投資する投資信託の設定が認められている国や地域で設定された外国籍の投資信託に投資することで、商品の値上がりを追うことが可能となります。この場合、直接の投資対象は“他の投資信託”となるので、このような投資信託はファンド・オブ・ファンズとして分類されます。
③指数連動債を利用する
もう一つの方法は、商品指数の騰落率に償還価額が連動する指数連動債に投資する外国籍の投資信託に投資する方法です。この場合も投資対象は“他の投資信託”なので、分類上はファンド・オブ・ファンズになります。
いずれの方法も、直接、商品や商品先物に投資しないものの、ファンドの値動きが商品市況の動向を捉えるように設計・運用されており、2004年頃から設定が相次いでいます。
コモディティファンドの運用(インデックスとアクティブの違い)
コモディティファンドの運用方法にはインデックス運用とアクティブ運用があります。
インデックス運用とは、ファンドの値動きが特定の商品指数に連動することを目指す運用のことです。商品指数が上昇すれば、ファンドの基準価額も同程度上昇し、商品指数が下落すれば、ファンドの基準価額も下落する仕組みです。
前述の、商品指数に連動する仕組み債に投資するファンドや指数連動債に投資する外国籍の投資信託に投資するファンドは、ファンドの基準価額が対象となる商品指数に連動することを目指すファンドですから、インデックス運用のファンドと言えます。
アクティブ運用はより積極的に投資対象の値上がり益を追求するファンドのことで、商品指数の構成や構成比率にとらわれず、ファンドマネージャーが商品市場や経済動向の調査分析結果や見通し、長年の経験をもとに、世界中の商品市場の中から値上がりの期待できる投資対象を選別し投資するファンドです。
運用会社の運用力がファンドの運用成績の鍵を握ります。コモディティファンドの中では、2008年8月末現在、アクティブ運用が採用されているのは日興・シュローダー・コモディティ・ファンドのみです。同ファンドでは、投資対象としている外国籍投資信託において、アクティブ運用が行なわれています。
日本のコモディティファンドの歴史
日本ではコモディティファンドは比較的新しい商品ですが、その登場により、個人投資家でも少額で商品市場の動向を捉えた運用を行なうことが可能となりました。ここでは、これまでの日本におけるコモディティファンドの進展を振り返ってみましょう。
日本で最初に設定されたコモディティファンドは2004年12月10日に設定されたダイワ・コモディティ・インデックス・ファンドです。同ファンドは外国籍の投資信託への投資を通じて、ロジャーズ国際コモディティ指数への連動を目指すファンドです。
その後、商品市況の上昇を背景に、2005年から2007年にかけては多くのコモディティファンドが設定されました。ほとんどが、商品指数に連動する仕組み債に投資することで、ファンドの値動きが商品指数の値動きに連動することを目指すものでした。対象となる指数には、ダウジョーンズ-AIGコモディティ・インデックス、ゴールドマン・サックス・コモディティ指数、ロジャーズ国際コモディティ指数などが含まれていました。
2007年8月10日には金価格への連動を目指すETF「金価格連動型上場投資信託(銘柄コード:1328)」が大阪証券取引所に上場しました。同ETFは1グラム当たりの円表示の金価格に連動する投資成果を目的とした金価格連動債券に投資を行うもので、金には直接投資しません。
2008年3月7日に、日本初のアクティブ運用を採用したコモディティファンドとなる「日興・シュローダー・コモディティ・ファンド」が設定されました。同ファンドは、アクティブ運用により商品価格の値上がり益を追求する外国籍投資信託に投資するファンドで、為替ヘッジのあるタイプと為替ヘッジのないタイプの二種類があります。
2008年6月30日には金に直接投資することでファンドの値動きが金の価格に連動することを目指すETF「SPDR ゴールド・シェア受益証券(銘柄コード:1326)」が東京証券取引所に上場しました。同ファンドは2008年3月に信託法が改正されたために、商品に直接投資するETFの設定が可能になったために実現した形態です。また、「SPDR ゴールド・シェア」は、最初に2004年11月12日に米国で設定された米国籍のETFで、東京の他にもシンガポール等にも上場されています。
なお、商品市場の代表的な指数である「ダウジョーンズ-AIGコモディティ・インデックス」は、2009年5月7日に、「ダウジョーンズ-UBS コモディティ・インデックス(Dow Jones-UBS Commodity Index)」に名称変更されました。
2018年1月現在、東京証券取引所には、金、銀、パラジウムなどの貴金属の他、とうもろこし、大豆、小麦、原油などの価格への連動を目指す商品(コモディティ)ETFが数多く上場しています。