マルチセクター債券ファンドとは
マルチセクター債券ファンドとは、さまざまなタイプ(セクター)の債券に分散投資するファンドのことです。
債券のタイプ
債券には、国債、地方債、社債、政府機関債、資産担保証券、モーゲージ債など、さまざまなタイプがあります。さらに、これらの債券を発行する国、企業、通貨、格付などにより、新興国の国債、先進国の国債、現地通貨建て新興国国債、米ドル建て新興国国債、投資適格社債、ハイイールド社債など、より小さな分類に分けることもできます。それぞれの債券の利回りは異なり、価格動向の特徴、経済や投資要因の変化に対する反応も異なります。
債券の分類方法については、ファンドにより異なりますが、世界的な指数算出会社などが創設した分類方法が使われることが多いようです。例えば、大手指数会社のバークレイズ・キャピタル社では、債券市場を国債(Treasury)、政府機関債(Government-Related)、社債(Corporate)、証券化商品(Securitized)の4つのカテゴリーに分類し、各カテゴリーを、例えば、社債であれば発行体の業種により産業(Industrial)、公益(Utility)、金融(Financial Institutions)のように細かく分け、その中も小分類化しています。
マルチセクター債券の運用
マルチセクター債券ファンドは、これらの異なるタイプの債券に分散投資を行なうことで、市場や投資環境が変化しても、それに応じて各債券への投資比率を柔軟に変化させ、そのときどきに最適な投資割合で異なる債券を保有することで、利益を最大化させようというファンドです。
データ:Bloomberg、2014年8月18日現在
(米国国債:Bloomberg US Treasury Bond Index、日本国債:Bloomberg Japan Sovereign Bond Index、日本投資適格社債:Bloomberg JPY Investment Grade Corporate Bond Index、英国国債:Bloomberg U.K. Sovereign Bond Index、英国ハイイールド社債:Bloomberg GBP High Yield Corporate Bond Index、オーストラリア国債:Bloomberg Australia Sovereign Bond Index、ドル建てハイイールド新興諸国債券:Bloomberg USD High Yield Emerging Market Bond Index、ドル建てハイイールド新興国国債Bloomberg USD High Yield Emerging Market Sovereign Bond Index)
マルチセクター債券ファンドの例
2014年10月現在、運用されているマルチセクター債券ファンドには、三井住友アセットマネジメントの運用する「グローバル・マルチボンド・ストラテジー(1年決算型)」、三菱UFJ国際投信の「バリュー・ボンド・ファンド」、マニュライフ・インベストメンツ・ジャパンの「マニュライフ・フレキシブル戦略ファンド」などがあります。
「グローバル・マルチボンド・ストラテジー(1年決算型)」は、国債、社債、モーゲージ証券、アセット・バック証券、政府機関債、地方債に投資しています(2014年7月末現在)。「バリュー・ボンド・ファンド」は、国債、国際機関債、地方債、資産担保証券・モーゲージ証券、投資適格社債、バンクローン、ハイイールド社債、エマージング債券、転換社債などに(2014年6月末現在)、そして「マニュライフ・フレキシブル戦略ファンド」は、先進国国債、新興国債券、投資適格社債、ハイイールド債券、資産担保証券、バンクローン、転換社債を投資対象としています(2014年7月末現在)。これらのファンドでは、先進国の投資適格債券に70%、新興国のソブリン債券に30%というような基本となる投資割合を決めた上で、そこから一定の範囲内で投資比率を変更するファンドもあれば、特に基本となる投資資産配分比率を決めていないファンドもあります。ただ、いずれも、投資環境の変化に応じて投資資産配分を柔軟に変更することを投資方針としています。
債券ファンドのリスク
一般に、特定の国の特定のタイプの債券に集中投資するファンドに比べて、マルチセクター債券ファンドの方がリスクは低いと考えられていますが、ハイイールド社債や新興国の債券を含めて投資されるため、国債だけに投資するファンドよりもリスクをとって、より高いリターンの獲得を目指すファンドであると言えます。一方で、新興国債券やハイイールド社債に集中投資するファンドよりもリスクは低いと考えられます。また、ファンドにより組入債券のデュレーション、残存年数、平均格付、組入銘柄数、為替ヘッジの有無は異なるため、同じマルチセクター債券ファンドでも、そのリスクや期待されるリターンはファンドにより異なります。