特殊型の投資信託とは
投資信託の商品分類に「特殊型」という分類があります。特殊型の投資信託とは、運用方法が一般的ではない、あるいは複雑な投資信託のことです。投資信託協会が採用している投資信託の商品分類において、「投資家に対して注意を喚起する必要と思われる特殊な運用手法の記載がある」投資信託とされています。商品分類は目論見書に記載されています。購入しようとしている投資信託が「特殊型」に分類されている場合は、再度、その仕組みをきちんと理解できているか確認してましょう。
一般的な投資信託では、集めたお金を株式や債券、あるいは不動産投資信託などに投資して、それらが値上がれば売却して利益を出すということを繰り返します。買って、上がったら、売るというのが基本です。売るまでの期間は投資信託により異なり、非常に長い投資信託もあれば、機動的に売買を繰り返す投資信託もあります。一方で、特殊型のファンドでは、そのような運用は行われません。
具体的には、特殊型は次のタイプの投資信託のことを指します。
- ブル・ベア型
- 条件付き運用型
- ロング・ショート型/絶対収益追求型
- その他
ブル・ベア型
ブル・ベア型は派生商品を用いて、指数などに2倍、3倍あるいはそれ以上といった複数倍の割合で連動若しくは逆連動を目指す投資信託です。例えば、東証株価指数の2倍の投資成果や、2倍逆方向の投資成果を目指すファンドです。ブル型は、指数に複数倍連動するタイプ、ベア型は指数に逆連動するタイプのファンドです。一般の投資信託だけでなく、東京証券取引所に上場しているETFにも、ブル・ベア型は多くあります。東京証券取引所ではブル型をレバレッジ型、ベア型をインバース型と呼んでいます。
→東京証券取引所に上場しているブル・ベア型ETF一覧
ブル・ベア型の投資信託は、思惑通りに相場が動いた場合には、2倍、3倍の投資成果が期待できますが、思惑の逆方向に相場が動いた場合には、2倍、3倍の損失を被ることになる、非常にリスクの高い投資対象です。しかしながら、東京証券取引所におけるETFの売買高を見ると、上位には常にブル・ベア型のファンドが並んでおり、人気が高い商品でもあります。
投資信託協会によるブル・ベア型の定義
目論見書又は投資信託約款において、派生商品をヘッジ目的以外に用い、積極的に投資を行うとともに各種指数・資産等への連動若しくは逆連動(一定倍の連動若しくは逆連動を含む。)を目指す旨の記載があるものをいう。
条件付運用型
条件付運用型は、仕組債への投資やその他特殊な仕組みを用いることにより、目標とする投資成果を目指す投資信託です。
「東京海上日動 条件付運用型ファンド11-02」がその一例です。同ファンドは、主として、高格付のユーロ円建て債券に投資し、償還価額が投資元本に最終計算期間の分配相当額を加算した価額となることを目指す投資信託です。投資対象のユーロ円建て債券が、上記の仕組債に該当し、日経平均株価の水準に応じて利金額が決定される仕組みになっています。同ファンドは、基本的にファンドは、この仕組債1銘柄に投資し、償還まで保有します。
投資信託協会による条件付運用型の定義
目論見書又は投資信託約款において、仕組債への投資またはその他特殊な仕組みを用いることにより、目標とする投資成果(基準価額、償還価額、収益分配金等)や信託終了日等が、明示的な指標等の値により定められる一定の条件によって決定される旨の記載があるものをいう。
ロング・ショート型
ロング・ショート型は、ロング・ショート戦略により収益の追求を目指す投資信託です。例えば、株式ロング・ショート戦略は、株式市場において、値上がりが期待できる割安な銘柄を買い、同時に値下がりが予想される割高な銘柄を空売りする投資手法です。株式などを買うことを「ロング」にする、あるいはロング・ポジションをとると言い、売ることを「ショート」にする、あるいはショート・ポジションをとるなどと言うことから、この戦略はロング/ショート戦略と呼ばれています。株価の値下がりからも利益を獲得する機会が生まれ、より機動的な運用が可能だと考えられています。
ロング・ショート型の投資信託の例:
- Bayview 日本株式ロングショート ファンド(ベイビュー・アセット・マネジメント株式会社 )
- 日本株ロング・ショート戦略ファンド(日本アジア・アセット・マネジメント株式会社 )
- スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド(スパークス・アセット・マネジメント株式会社)
- 野村グローバル・ロング・ショート(野村アセットマネジメント株式会社)
- 日本株ロングショート戦略ファンド(ファイブスター投信投資顧問株式会社)
絶対収益追求型
絶対収益追求型は、特定の市場に左右されにくい収益の追求を目指すファンドで、市場動向に関わらず投資元本を増やすことを目標とし、これをコンピュータ・プログラムを活用することで実現します。2017年2月1日に設定された三菱UFJ国際投信の「AI日本株式オープン」がその一例です。同ファンドは三菱UFJ信託銀行及び三菱UFJトラスト投資工学研究所が開発したAIを利用することで、株式個別銘柄戦略と先物アロケーション戦略の2つを組み合わせて絶対収益を追求するファンドです。
絶対収益追求型の例:
- AI日本株式オープン(絶対収益追求型)(三菱UFJ国際投信株式会社)
- ブラックロック世界株式絶対収益追求ファンド(為替ヘッジあり)(ブラックロック・ジャパン)
- ブラックロック世界株式絶対収益追求ファンド(為替ヘッジなし)(ブラックロック・ジャパン)
投資信託協会によるロング・ショート型/絶対収益追求型の定義
目論見書又は投資信託約款において、特定の市場に左右されにくい収益の追求を目指す旨若しくはロング・ショート戦略により収益の追求を目指す旨の記載があるものをいう。
なお、ロング・ショート型や絶対収益追求型と呼ばれる運用手法は、元来、ヘッジファンドが利用する運用手法です。そのため、投資信託の評価会社であるモーニングスターの商品分類ではロング・ショート型や絶対収益追求型のファンドは「ヘッジファンド型」として分類されています。
その他型
その他型の投資信託は、目論見書又は投資信託約款において、ブル・ベア型、条件付き運用型、ロング・ショート型/絶対収益追求型のいずれにも該当 しない特殊な仕組みあるいは運用手法の投資信託です。2017年2月末現在、投信協会の投信総合検索ライブラリーでは、この分類に属する投資信託はコモディティ(商品)に投資するファンドを中心に次の4本となっています。
- 新興国高金利通貨ファンド(毎月決算型)
- SMTAMコモディティ・オープン
- コモディティ・オープン
- コモディティ・オープン(SMA専用)