相場のこころ(6)


今回は「意思決定」についてお話しをします。相場はその都度、その都度意思決定をしていく上に成り立っていきます。 意思決定というのは他の参加者がどうするか、そしてそれにどう順応していくかが一つの重要なポイントです。もう一つの重要なポイントはそう言いつつ、いかに集団思考に陥らないかということです。順応とはどういうことかというと「アッシュの同調」や「ドッキリカメラ」で述べましたが、エレベーターで扉が開くと乗っている人たちが全員後ろを向いていると自分も後ろ向きになって他の人たちと同じようにエレベーターに乗ってしまうということです。周りと違う行動ができなくなります。マーケットも同じことが言えます。

しかし、ある程度は、周りがドルを買ったほうがいいと言っている時には買うほうがいいし、逆に周りがドルを売リ始めると売ったほうがいいことになります。これはいかに順応していくかということです。

ディーラー時代の上司に、相場に乗るには一番電車に乗ることが肝腎だと教えられましたが、この一番電車に乗ることは非常に大変なことなのです。新しい情報を常に研ぎ澄ましながら真剣に考えなければならないのですが、この一番電車が走る頃はまだ世の中が真っ暗です。すなわち、人と違うことをする苦しみがそこにあるわけです。そこで常に「僕は2番電車でいい」と思っているのです。みんなが動き始めたところで上手く順応し、そのまま2番電車に乗リ、そのまま最後まで乗って行かないで、最後よりは少し早めに降りるわけです。2番電車に乗って最後から2番目に降りるというのが大事なことなのだと思います。上手く順応していくということがマーケットでは一つのポイントです。

そうは言いつつ、もう一つ「集団思考」というものがあります。簡単に言いますとこれは誰も何も考えていない状態のことです。バブル、ユーフォリアなどこういうことが起こっているということがマーケットで起こる、これが集団思考の状態です。集団思考が何故危ないかと言いますと、順応が昂じると集団思考に陥るのですが、結論的に誰も何も真剣に考えていないということが起こってしまうからです。たとえばテクニカル分析で言いますとRSIのオシュレーターがオーバーボート、オーバーソールドになっている状態ですが、これは誰も何も考えないでみんなが買っているから買った、または売っているから売ったということで、バブルやユーフォリアと同じ状態です。

オランダのチュ-リップもそうです。何も考えないでチュ-リップを買い始めたのが昂じてバブルが崩壊しました。上手く順応していかに集団思考に陥る直前に降りるかということが、意思決定をして行く上で大事なことなのです。相場の心理的な側面を踏まえながらいかに自分で意思決定をしていくかが、大事なのです。この話をしますと、「では順応と集団思考の境目はどこなのですか」という質問をよく受けます。それは大変難しい問題です。

明らかに上手く順応して集団思考に陥る直前に逃げるかということを考えているか、そうでないかが相場の運用に出てくるのだということだけを述べておきたいと思います。違いはそこに出てくるのです。