サクソバンク、『2012年度大胆予測(日本語版)』と『2012年度第一四半期世界経済予測(日本語版)』を発表


オンライン・トレーディングおよび投資を専門とするサクソバンク(Saxo Bank A/S、デンマーク)は、2月2日に、2012年「大胆予測」を発表した。現時点では想像もできない出来事としてサクソバンクが予測した10項目には、「オーストラリアの景気後退」「EU諸国、自己資本基準をクリアできない50行を国有化」「アップルの株価、2011年最高値から50%暴落」などが含まれている。

サクソバンクでは次のように述べている。

「大胆予測」は起こりそうにない出来事に焦点をあてていますが、それらが発生する可能性はいずれも市場が考えるより高いものばかりです。もちろん通常の経済予測ではありません。しかし、投資においては確率が低いと思われている出来事にも注意を払うことが重要です。10項目のいずれかでも現実のものになれば、市場は大変な影響を受けることになります。

なお、「第一四半期世界経済予測」では、より正確な視点で2012年に待ち受ける「パーフェクトストーム」=(1)欧州金融危機、(2)緊縮財政、(3)社会的緊張に焦点を当てたレポートになっている。全文レポートはこちらからダウンロード

【サクソバンク2012年「大胆予測」】

1.アップルの株価、2011年最高値から50%暴落

アップルの最先端商品であるiPhoneやiPadは2012年に入りグーグル、アマゾン、マイクロソフト・ノキア連合、サムソンとの複合的な競争に直面する。その結果、iOSで55%(アンドロイドの3倍)、iPadで66%を誇ってきた市場シェアを維持することができなくなる。

2.EUは「長期バンクホリデー」で市場閉鎖

2011年12月の欧州連合(EU)首脳会議は、財政規律を強化する政府間協定を結ぶことで合意したが、2012年に入るとこの協定ではイタリアをはじめとする欧州諸国の財源問題を解決するには不十分だということがはっきりしてくる。欧州債務危機は年央までにものすごい勢いで再燃する。株価の値崩れが本格化して、一気に25%も暴落が起きる。EU諸国は、欧州全域の証券取引所と銀行を1週間あるいはさらに長期間閉鎖するために「長期バンクホリデー」に踏み切る。

3.米大統領選を制するのは伏兵候補

1992年の米大統領選では、テキサス州出身の億万長者のロス・ペローが、米国の景気低迷と米国民の政治への不満を背景に二大政党以外の候補として浮上し、18.9%という得票率を実現した。現職のバラク・オバマ大統領は就任から3年になるが、「チェンジ」をもたらすどころか、米国の政治全体への失望感を拡大させるばかりである。2012年11月の大統領選ほど第三の候補が当選する条件がそろっていることは過去にはない。本格的な改革のためのしっかりした政策を打ち出す候補者が2012年初めに出てきて、得票率38%で米国史上最も重要な選挙の1つを制するであろう。

4.オーストラリア経済が後退

アジアの新興経済大国の景気減速がアジア太平洋圏に影響を及ぼし始め、他の国のなかには景気後退に陥るところが出てくる。中国の経済成長への依存度でいえばオーストラリアの右に出る国はない。とりわけ、オーストラリアの鉱業・天然資源部門は中国に大きく依存している。中国からの鉱物・資源への需要が減少してオーストラリアは景気後退局面を迎える。景気後退は、他の先進国より5年遅れで住宅市場のバブル崩壊を引き起こし、さらに悪化していく。

5.バーセルIIIで欧州50行が国有化

2012年のスタートとともに、新しい自己資本規制を含めた金融機関への規制強化で、欧州の銀行はデレバレッジの加速化を余儀なくされる。市場は買い手不在のために金融資産の投げ売りが発生し、欧州のインターバンク市場は完全に機能しなくなる。財政破綻をしている国による預金保護を信じない、不安にかられた預金者による銀行取り付けが一気に起こる。その結果、50行以上が国有化される一方、名門商業銀行のいくつかが姿を消す。

6.安全な避難場所としてスウェーデンとノルウェーが浮上

通貨安競争のなかで安全な避難場所となることが、その国の経済にとっては多くのリスクを伴う事実を、世界はスイスの例で改めて認識した。資本市場の規模で見ると、スウェーデンとノルウェーはスイスには遠く及ばない。しかしスイス当局がスイスフラン安の実現に躍起となるなかで、マネーマネジャーたちは資本の安全な避難場所を探している。安全性が評価されてスウェーデンとノルウェーの国債市場への資本流入が増え、10年債の利回りは伝統的な安全資産のドイツ国債を100ベーシスポイントも下回るであろう。

7.スイスの通貨高阻止が実り、1ユーロ=1.50スイスフランへ

スイスの懸命なスイスフラン高阻止の動きは、2012年には実る。過去のスイスフラン高でスイス経済のファンダメンタルズ、とりわけ輸出関連産業が大きな打撃を受けてきたことに対して、スイス国立銀行(中央銀行)とスイス政府は通貨高による新たな被害を食い止めるためにさらなる努力を惜しまず、既存のプログラムを延長するとともに、マイナス金利を導入する。これまで資産の安全な避難場所だったスイスからの資本流出を促し、年内に1ユーロ=1.50スイスフランに誘導していく。

8.中国人民元は10%切り上がって1ドル=7.00元

広大な都市開発による限界利益が減少し、人民元高で輸出産業の利益率が極端に薄くなるなかで、中国は「景気後退」の瀬戸際に立つ。経済成長率は5~6%へ減速する。人民元は、世界経済の成長鈍化とユーロ圏債務危機を背景に、安全な避難通貨としての地位を向上させてきたが、中国当局は輸出産業を救済するために、人民元の対米ドルレートの低下を容認する。その結果、1ドル=7.00元へと10%の人民元安となる。

9.バルチック海運指数は100%上昇

2012年はばら積み船の数がその需要を上回ると見込まれているが、いくつかの要因でバルチック取引所のドライ指数(穀物や鉄鉱石などを運ぶドライカーゴ船の運賃指数)が驚異的に上がるかもしれない。まず、原油価格が下がることによって船の運行費用が軽減され、同指数の上昇を導く可能性がある。次に、ブラジルとオーストラリアが鉄鉱石の供給を増やすことが予想され、それが鉄鉱石価格のさらなる低下につながる。そうなれば中国は国内産業の飽くなき需要を満たすために輸入量を増やす。金融緩和とあいまって、鉄鉱石需要の急増につながる。最後は、エルニーニョ現象による異常な乾燥気候が水力発電量を減少させ、それが石炭の輸入需要を促進させる。

10.小麦相場は倍増

2012年のシカゴ商品取引所(CBOT)の小麦相場は、2011年の過去最悪の収穫を受けて、倍増する。世界の人口が70億人に達する一方、全面的な金融緩和が続くなかで、不幸なことに世界的な悪天候が繰り返されるために、農産品相場にとってはトリッキーな1年となる。特に小麦相場は、投機筋が過去最大級の売り持ちを積み上げているために、大きく値を戻し、2008年につけた史上最高値を目指す動きとなるであろう。

サクソバンクのチーフエコノミスト、ステーィン・ヤコブセン氏は次のように述べている。

「サクソバンクの大胆予測は、投資家の皆様に枠にとらわれない思考を楽しんでいただき、世界を変えてしまうような異変に備える一助になればという思いから作成しています。枠にとらわれず考えたからといって楽しい結論に至る
ことは滅多にありませんが、きちんと備えをしないまま不快な異変に直面することは、決して楽しいことではありません」。

「大胆予測のどれかが現実に起きるとすれば、2012年は激変の年となるでしょう。サクソバンクのネガティブな見方が間違いであることを願っていますが、それには中央銀行や政府が現在主導するパラダイムにかわる何か良いことがある場合に限ります」。

【関連リンク】