JPモルガン・アセット・マネジメントは、2017年2月20日、57資産の長期見通しと期待リターンについてのレポート「Long-Term Capital Market Assumptions」(以下、LTCMAs)の日本版を公表した。
LTCMAsは、J.P.モルガン・アセット・マネジメントが今後10~15年のマクロ経済の見通しに基づき、50を超える資産クラスや戦略について期待リターンや想定ボラティリティ、相関係数を算出したもの。過去21年にわたって毎年公表されていた同レポートの英語版について、内外の顧客から好評を得て、2017年版にて初めて日本版を発表した。
LTCMAsでは、投資家が今後の投資方針を検討し、ポートフォリオ運営を行うための一助となることを目的として長期見通しを提供している。同レポートの特徴は、具体的かつ透明性の高い形で、幅広い資産・戦略の期待リターンを算出している点。例えば、債券では金融政策の先行きを予想した上で、国債のみならず海外クレジットや新興国を含む幅広い資産クラスの長期見通しを策定している。また、株式でも、マクロ経済だけでなく各国の企業業績の見通しをもとに、明快な算出プロセスで期待リターンを算出している。加えて、為替ヘッジ後の期待リターンや、オルタナティブ資産における新戦略など、多様化する運用手法にも柔軟に対応した独自の見通しを提供している。
LTCMAsの発行にあたっては、J.P.モルガン・アセット・マネジメントの複数の部門・地域で横断的に編成された40名以上の専門家チームが、マクロ経済、為替、資産クラス別見通しについて協議を行い、総合的な長期見通しの策定を行っている。
2017年版のLTCMAsにおける今後10~15年の長期見通しの概要は下記のとおり。
GDP成長率見通しを下方修正
実質GDP成長率の見通しを下方修正し、先進国で0.25%、新興国で0.50%引き下げた。これは、人口の高齢化と生産性の伸び悩みによるもの。日本については実質GDP成長率の見通しは据え置いたものの、インフレ目標達成には更なる時間を要するという判断から、インフレ率見通しを引き下げている。その結果、幅広い国で均衡金利水準(経済成長やインフレ率見通しに整合的な短期金利水準)は低下している。これに伴い、各資産クラスの期待リターン見通しも同様に引き下げた。
国債のリターンは現預金とほぼ同水準
低成長による低金利政策是正の長期化や均衡金利の低下によって、日本国債のリターンは短期金利のそれを下回ると考えられる。また、米国債についても期待リターンの水準を引き下げ、結果として米短期金利と米国債のリターンの差はほぼゼロとなっている。総じて国債のリターンは低調であり、債券市場の中では米投資適格債券、米ハイ・イールド社債などの社債投資が堅調と見ている。
株式の期待リターンも低下、オルタナティブ資産の重要性高まる
高バリュエーションと低成長により株式の期待リターンは幅広い国・地域で引き下げられている。また、均衡金利の低下は、株式リスク・プレミアムの上昇につながり、株価のボラティリティを上昇させる要因となっている。一方、オルタナティブ資産の中では、実物資産、特に米国不動産が堅調に推移する見込み。結果として、株式・債券の比率が6対4のポートフォリオの期待リターン(米ドルベース)は、0.75%程度低下している。JPモルガン・アセット・マネジメントでは、「期待リターンを高めたいと考える投資家は、オルタナティブ資産についてより本格的に検討する、またはアクティブ運用やベンチマークに囚われない機動的な資産配分手法を検討する必要があると考えます」とコメントしている。
2017年版LTCMAsでの予想値 | 2016年版LTCMAsでの予想値 | |
日本国債 | 0.25% | 0.75% |
日本株式 | 4.75% | 5.75% |
先進国国債(日本除く・為替ヘッジなし) | 1.25% | 2.50% |
先進国国債(日本除く・為替ヘッジあり) | 0.75% | 1.50% |
先進国株式(日本除く) | 5.50% | 6.75% |
米国リート | 5.00% | 5.25% |
米国不動産 | 4.50% | 4.75% |
マクロ・ヘッジ・ファンド(為替ヘッジあり) | 2.75% | 3.50% |
グローバルインフラ | 5.25% | 5.75% |
注: 2015年9月30日時点と2016年9月30日時点の比較。
→JPモルガン・アセット・マネジメント