ラッセル・インベストメント・グループは、3月27日、国内外の日本株運用機関を対象に実施した2007年3月度『運用機関の投資展望調査』(調査期間:3/1~3/8)の結果を発表した。同調査によると、84%の運用機関が日本株式(全般)の今後1年間のパフォーマンスに強気の見通しを持っていることがわかった。調査開始以来の最高水準(88%)に達した前回調査時点(2006/11/27~12/4)と比べるとその度合いは若干低下したものの、引き続き高水準を保っている。
一方、セクター別の見通しでは、電気通信サービスとヘルスケアに対する強気度合いが、前回と比べて、それぞれ16 ポイント、13 ポイント上昇した。全体の順位に大幅な変動は見られなかったが、為替相場や海外景気動向の影響を受けにくいディフェンシブセクターの選好度がやや高まったことが見て取れる。
他の資産クラスに目を向けると、日本の事業債に対する弱気度合いが高まった点が目を引く。ラッセルの資産運用ソリューション担当執行役の木口愛友氏は、「2月21日に日銀は追加利上げを実施しましたが、日本国債に関しての見通しは前回とほとんど変わっていないにも関わらず、事業債に対する弱気の割合は前回の37%から49%へ上昇しました。日本株式市場が上昇傾向にあった年明け以降に、一部の企業の不正会計疑惑を受けてこれまで縮小が進んでいた社債スプレッドが拡大した局面があり、従来よりもクレジットリスクへの注目が高まったことの表れかもしれません」と述べている。
また、現在の日本株式市場の水準について、調査に協力した56社中59%が適正水準に位置していると答えた一方、割安だと答えた運用機関の割合は34%と前回調査時点の55%から低下した。株価急落直前まで、日経平均株価で約6年9ヶ月ぶりに1万8000円台を回復するなど、年明け以降の日本株式市場はほぼ一本調子で上昇していた。今回の世界連鎖株安の結果、株価急落前からの下落率が日経平均株価で一時8%以上に達したものの、なお前回調査時点より高い水準にあり、割安感が高まることにはならなかったようである。
今後の日本株式市場のパフォーマンスに対する最大のリスク要因とその順位に関する質問では、1位については「米国景気の減速」、2位については「円高」を挙げる運用機関が群を抜いて多く、どちらもその占率はほぼ5割近くに達した。3位については要因ごとの差が縮小したが、「政局(24%)」「金利上昇(18%)」が上位に並んだ。
前述の木口氏は、「今回の調査の結果、多くの運用機関が『米国景気の減速』と『円高』を今後の日本株式市場のパフォーマンスに影響を与える2大リスク要因と捉えていることが分かりました。一方で、日本株式や為替に対する見方に変化がないことから、多くの運用機関は足元の混乱があくまで一時的なものに留まると想定していると言えるでしょう」と述べている。
ラッセル『運用機関の投資展望調査』について
ラッセル・インベストメント・グループでは、2004年より米国をはじめ諸外国の運用機関の協力のもと、四半期毎に『運用機関の投資展望調査』を実施している。海外での評価を踏まえ、2006年3月より日本でも調査を開始した。同調査は、四半期に一度、各運用機関の投資意思決定を行っているチーフ・インベストメント・オフィサーやポートフォリオ・マネージャーなどに各市場動向やセクターの見通し、今後の投資戦略に影響を及ぼすと思われるトピックについて、オンライン上で質問を行う。質問は4問あるが、長期的視点で継続した分析及び考察を行うため、そのうちの3問を毎四半期同じ内容とする一方で、残りの1問はその時期に注目を集めているテーマを盛り込んだ内容となっている。データの分析およびレポートの作成にあたっては、ラッセル・インベストメント・グループのインベストメント・マネージメント&リサーチ部門とインベストメント・ストラテジストが共同で担当し、各期のデータを吟味し、集められた回答の定量的な分析にとどまらず定性的な分析も行っている。
今回の調査期間は、2007年3月1日~3月8日。この期間に回答を提供した運用機関は計56社で、日本株式を運用対象とする運用機関が大半を占めており、また、日本に拠点を持たない海外の運用機関も含まれている。なお、この調査はラッセル・インベストメント・グループが運用目的で実施する運用機関調査とは全く別のものであり、アンケートへの回答は各運用機関の任意のご協力によるものである。