JPモルガン・アセット・マネジメント、「企業年金運用動向調査」を公表ーオルタナティブ投資の割合が過去最大


JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社は、2020年10月 から2021年1月末にかけて、日本の企業年金基金を対象に、過去2年間の運用状況の変化および今後の方向性につ いて聞き取り調査を行い、2021年3月31日にその調査結果を発表した。

JPモルガン・アセット・マネジメントによると、この調査を開始した2008年度以降、伝統的な資産に対する運用構成が崩れ、オルタナティブ投資の割合が増加する一 方、各基金が新型コロナウイルスの影響による世界的な低金利局面を見据え、改めてポートフォリオの中身を吟味す るニューノーマルな時代の到来を示唆する結果となった。

主なポイントは以下の3点。

  • オルタナティブ投資の割合が、22.5%と過去最高の水準
  • ポストコロナの環境下で、実物資産への移行が鮮明に
  • ESGは、特別な存在から、「当たり前に組み込まれる」時代へ

 

オルタナティブ投資の割合が、22.5%と過去最高の水準

近年、オルタナティブへの配分は増加傾向にあったが、今回の調査でも、政策アセット・ミックスにおけるオルタナ ティブの割合は昨年度の21.3%から22.5%と増加し、過去最高となった。2018年度以降からオルタナティブは2割余りの配分が定着し、確定給付企業年金(以下、DB年金)の投資において定番の存在になったと言える。オルタナ ティブは相対的に、利回り・リターンの高さ、また価格変動性の低さが特徴であるため、ポートフォリオにおいて重要な 役割を果たしていると考えられる。

 

ポストコロナの環境下で、実物資産への移行が鮮明に

今後の資産配分の方向性を問う質問に対して、回答者の29%がオルタナティブを増やす方向と回答した。同様の 質問における国内債券(1%)、国内株式(3%)など伝統資産への回答と比較すると、突出した割合。オルタナティ ブの中でも、低相関系資産である保険関連の配分減(昨年度1.7%から1.0%に)が見られる一方、インフラ投資(昨年 度7.8%から18%に)、実物不動産(昨年度5.2%から15%に)など、実物資産への配分増が目立った。オルタナテ ィブへの配分増は近年続く傾向だが、コロナ禍以降、世界的な低金利が続く見通しを受け、相対的に安定的なインカムゲインが期待される実物資産への入替姿勢が鮮明に現れた結果となった。

 

ESGは、特別な存在から、「当たり前に組み込まれる」時代へ

2019年度、国内株式において新規にESG投資を採用した基金はゼロだった。これはESG投資が運用会社・DB年金 に浸透した結果と見られる。具体的には、数多くの戦略にESGが考慮されることが当然となったため、以前のようなESG投資を前面に押し出した商品採用というよりも、ESG付きの特定戦略という文脈で商品採用が進み、票が分散し たためと考えられる。

この調査を分析しているJPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル運用商品部 インベストメント・スペシャリストの國京 彬氏は、今回の調査結果を振り返り、次のように述べている。

全体を通してみると、DB年金は、以前ほどの急なペースではないものの、オルタナティブ全体への配分を引 き続き増やしていくスタンスと見られます。その中で、低相関系資産から実物資産への入替姿勢が鮮明になった点は 今回の調査の特徴であり、コロナ禍以降でのニューノーマルを模索する動きとも言えるでしょう。また、国内株式にお いて近年注目されてきたESG投資が、運用戦略に当たり前に組み込まれる時代を迎えたことは、新しい時代の資産 運用の動きとして注視すべき点でしょう。