日本経済新聞社は、 日経平均株価をベースに温室効果ガス(GHG)排出量に応じて構成銘柄のウエート(構成比率)を調整した新しい株価指数「日経平均気候変動1.5℃目標指数」の算出・公表を2022年5月30日から開始する。米国のインデックス事業会社、 ウィルシャー*1と共同で開発した。
近年、 地球温暖化がもたらす異常気象は世界的な問題になっている。 温暖化防止の国際枠組みである「パリ協定」は、 産業革命以来の地球の気温上昇を2度未満におさえ、 1.5度以下を目指している。 株式投資の世界でも、 国内外の投資家の間で、 企業の気候変動への対応を投資行動に反映する動きが広がっている。
新指数は日経平均をベースとし、 欧州連合(EU)がパリ協定を踏まえて定めた気候変動分野の指数の作成基準(パリ協定適合ベンチマーク、 PAB)*2に従う。企業価値当たりのGHG排出量が少ない銘柄は指数に占める構成比率を増やし、 多い銘柄の構成比率は減らす。 加えて同基準に沿い、 化石燃料関連の売上高が一定水準を超える銘柄および、 ESG(環境・社会・企業統治)の視点から武器やたばこに関わる銘柄を指数から除く。 この方法により、 新指数全体のGHG排出量は、 日経平均に比べて50%減り、 かつ前年比で毎年7%以上削減される。新指数と日経平均の値動きの差が気候変動の要因に絞り込まれるように、 各業種セクターのバランスを日経平均と同じにする。ウエート設定や銘柄の除外にはウィルシャーが提供するデータを用いる。
日経平均気候変動1.5℃目標指数は日本経済新聞社がウィルシャーと共同で開発した指数の第1弾となる。 両者は、ノウハウを持ち寄り、 今後も新たな指数開発を続けていく。
長谷部剛・日本経済新聞社代表取締役社長は次のようにコメントしている。
日本経済新聞社は国内外での言論報道活動などを通じて地球環境を守るための活動を後押ししています。 日経平均気候変動1.5℃目標指数の開発によって環境意識の高い日本を代表する企業にグローバルな投資マネーが向かう機会を提供し、 パリ協定の目標の実現に向けた取り組みをサポートしていきます。
また、マーク・メークピース・ウィルシャー最高経営責任者(CEO)は次のように述べている。
今日、 我々は気候変動リスクを抑えるための重要な一歩を、 パートナーである日本経済新聞社とともに踏み出すことができました。 それはグローバルな投資家にとって、 脱炭素に向けた日本株投資、 という選択肢を与えることとなります。 日経平均気候変動1.5℃目標指数を通じ、 投資家は気候変動リスクの軽減に真剣に取り組む日本企業へ投資できるようになることを、 大変うれしく思っています。
*1:ウィルシャーとは
グローバルな指数提供を通じた投資情報サービス、 投資助言を手掛ける。 その対象資産は1.3兆ドル(156兆円)以上にのぼり、 世界中に500以上の機関投資家をはじめとする顧客を持つ。 設立は1972年で本社所在地は米国のカリフォルニア州(サンタモニカ)にある。 2021年2月に英フィナンシャル・タイムズと指数事業で提携し、 米国株の指数を「FTウィルシャー5000」シリーズに衣替えした。
*2:PAB(パリ協定適合ベンチマーク)とは
EUが定めた気候変動分野の指数の作成基準。 指数を構成する銘柄のGHG排出量がパリ協定の目標に適合するように求めている。 化石燃料関連の売り上げが多い銘柄などの除外を求めているほか、 親指数に比べてGHG排出量が50%減となり、 かつ前年比で毎年7%減になるようにしなければならない。 気候変動分野の株価指数の国際標準になっている。