ラッセル・インベストメント・グループは、国内外の日本株運用機関を対象に実施した2007年6月度『運用機関の投資展望調査』(調査期間:6/1~6/7)結果を発表した。同調査によると、88%の運用機関が日本株式(全般)の今後1年間のパフォーマンスに強気の見通しを持っていることがわかった。2006年12月調査時点(2006/11/27-12/4)と並ぶ、調査開始以来の最高水準に再び達している。一方、内外債券に対しては弱気の割合が増加しており、特に日本の国債、事業債については、その弱気度合いが前回と比べて約20ポイント上昇している。
また、為替の見通しについて、ドルに対して円安を予想する運用機関の割合が調査開始以来初めて3割を超えた。2006年5月中旬に110 円割れの円高水準に達した後、円相場は円安トレンドを辿っていたものの、運用機関の為替見通しは、調査開始以来ほぼ一貫して5割程度が円高を予想し、円安予想は概ね15%程度にとどまっていた。
ラッセルの資産運用ソリューション担当執行役の木口愛友氏は、「今回、日本債券への弱気の割合が高まった一方で、為替見通しについては円安を想定する割合が増加したということは、米国の利下げ観測も後退している折、日米金利差がそれほど縮小しないと予測する運用機関が増えたことを表しているといえるでしょう。今後の市場変動リスク要因として、欧米などの海外金利上昇が流動性の縮小を引き起こし、円キャリー取引の巻き戻しによる円高や株安が起こることを懸念する声も聞かれますが、今回の調査結果からは、こうした懸念が現実に起こるリスクは低いと想定されていることが伺えます」と述べている。
セクター別の見通しでは、資本財や素材など景気敏感セクターの中でも外需関連度合いが高いセクターの強気度合いが高まった反面、一般消費財・サービスや生活必需品、電気通信サービス等の内需依存度が高いセクターの強気度合いが低下している。
現在の日本株式市場の水準について、調査に協力した51社中52%が適正水準にあると考える一方、割安だと考える運用機関の割合は42%と前回調査時点の34%からやや増加した。米国等、主要株式市場が2月末の急落前の水準を上回る回復を見せているのに比べ、日本株式市場の相対的な出遅れ感は目立っていることから、バリュエーション面での割安感がやや増加している。
今回の調査で、2008年3月期の全国上場企業(金融、新興市場除く)の連結経常利益の伸び率予想について尋ねたところ、マイナス成長および2割増益を見込む運用機関は皆無で、10%以上の増益率を予想する運用機関の割合が46%、5%以上の増益率を予想する運用機関の割合が42%とほぼ拮抗する結果となった。
前述の木口氏は、「企業側は、前期に引き続き、今期の予測数字を一桁前半程度と控えめに見積もっているといわれていますが、今回の調査結果から、多くの運用機関が、世界経済の拡大と円安基調の継続による日本株式の好パフォーマンスを予想し、慎重と言われる企業側の業績予想が、今後上方修正されることを想定していることがわかります。5%以上、10%以上の増益率を予測する運用機関の割合が合計で約9割を占めており、前期並みかややそれを下回る程度の底固い収益の伸びを期待していると考えられます」と述べている。
ラッセル『運用機関の投資展望調査』について
ラッセル・インベストメント・グループでは、2004年より米国をはじめ諸外国の運用機関の協力のもと、四半期毎に『運用機関の投資展望調査』を実施している。海外での評価を踏まえ、2006年3月より日本でも調査を開始した。同調査は、四半期に一度、主に各運用機関の投資意思決定を行っているチーフ・インベストメント・オフィサーやポートフォリオ・マネージャーなどに各市場動向やセクターの見通し、今後の投資戦略に影響を及ぼすと思われるトピックについて、オンライン上で質問を実施する。質問は4問あるが、長期的視点で継続した分析及び考察を行うため、そのうちの3問を毎四半期同じ内容とする一方で、残りの1問はその時期に注目を集めているテーマを盛り込んだ内容となっている。データの分析およびレポートの作成にあたっては、同社のインベストメント・マネージメント&リサーチ部門とインベストメント・ストラテジストが共同で担当し、各期のデータを吟味し、集められた回答の定量的な分析にとどまらず定性的な分析も行なっている。今回の調査期間は、2007年6月1日~6月7日。この期間に回答した運用機関は計51社で、日本株式を運用対象とする運用機関が大半を占めており、また、日本に拠点を持たない海外の運用機関も含まれる。なお、調査は同社が運用目的で実施する運用機関調査とは全く別のものであり、アンケートへの回答は各運用機関の任意の協力によるもの。