JPモルガン・アセット・マネジメントは、2017年3月上旬~6月中旬にかけて日本の企業年金基金を対象に、過去2年間の運用状況の変化および今後の方向性について
聞き取り調査を行い、その調査結果を発表した。
調査結果から、年金運用の資産配分においては、国内債券や株式などの伝統資産の減少と、オルタナティブ資産の増加というトレンドが継続してみられた。政策アセット・ミックス(政策AM)内のオルタナティブ資産の割合は過去最高の16.5%まで拡大した。国内債券への資産配分割合は、2008年度の本調査開始以降で最低となる27.9%にまで減少した。国内債券では、マイナス金利政策やイールドカーブコントロール政策を背景に、パッシブを中心に解約の動きが加速した。
確定給付企業年金(DB年金)の市場環境への認識に関しての調査では、「日銀のマイナス金利政策や低金利の長期化」など、国内債券に関する問題を注視しているDB年金が75%と最も多く、次いで「急激な市場のボラティリティ上昇」が53%に達した。「米国の利上げペース、為替ヘッジコスト上昇」に対する問題意識は47%と昨年に引き続き高い一方で、「トランプ政策による株高や金利上昇」「トランプ政策による保護主義の高まり」を注視しているDB年金はそれぞれ18%、13%と低水準に留まった。また、約8割のDB年金が「マイナス金利政策によって運用環境が変化した(する)」と回答し、当該政策による運用難を指摘する回答が並んだ。マイナス金利政策への具体的な対応策としては、政策アセット・ミックスは変更せず、マイナス金利対応型商品やヘッジ外債等の個別商品採用で対応したDB年金が多くみられた。さらに、米ドルの為替ヘッジコスト上昇を受けた対応策としては、ユーロ建て資産や債券先物の活用、為替オーバーレイの導入が多くみられた。
JPモルガン・アセット・マネジメントによると、伝統4資産が割高になる中で、今後の年金運用の資産配分ではオルタナティブ資産への資金シフトが継続するとみられる。マイナス金利政策やイールドカーブコントロール政策を背景に、国内債券の削減はさらに加速する見込み。2008年以降のリスク抑制の動きで削減が進んでいた国内株式は、配
分比率の引き下げに一服感がみられる。金融危機以降、ボラティリティ抑制のために、景気変動への感応度が相対的に低い資産や戦略の採用が進んでおり、DB年金は今後も保険関連や不動産、インフラなど『景気中立型』の資産を選好することが予想される。
2016年度末時点で約8割のDB年金がオルタナティブ資産に投資をしており、その資産配分比率は19.8%で国内債券の25.4%に次ぐ資産クラスとなっている。JPモルガン・アセット・マネジメントでは、「一部で高バリュエーションを警戒する声があるものの、リスク抑制や安定したインカム・ゲイン獲得を狙う動きが優勢となっていると考えられます」とコメントしている。オルタナティブ資産の中でも配分が多いカテゴリは引き続き絶対収益型(ファンド・オブ・ファンズ型)だったが、パフォーマンスの苦戦もあり減少傾向が続いている。今後の方向性としては、オルタナティブ資産内での戦略変更がトレンドとして確認されている。増加が予想されるカテゴリはインフラ投資、実物不動産、プライベート・デット、保険関連。
またポートフォリオの管理方法では、従来型の伝統4資産の枠を超えた新たな管理方法を採用しているDB年金が約4割に達した。JPモルガン・アセット・マネジメントでは、「要因としては、為替レートを通した内外株式の相関の高さやオルタナティブ資産を中心とした金融商品の多様化、いわゆる「金融相場」での株式と債券の相関の高まりなどが考えられます」と述べている。
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