グローバルな市場の混乱や再びリスク回避志向が高まる中でも、アジアのファンドマネージャーは、一般消費財・サービス、生活必需品および一般事業会社を中心にアジアの株式は強含みであると考えていることが、ラッセル・インベストメントが四半期毎に発行する『運用機関の投資展望調査(アジア版)』で明らかになった。
同調査は、欧州におけるソブリン債に対する懸念、米国経済成長の鈍化、中東および北アフリカにおける不安定な政情が続く状況下、第3 四半期の初頭にアジア地域に拠点を置く複数の運用機関の約50名のインベストメント・マネージャーの見解を取りまとめたもの。
韓国と中国に対する期待が集まる一方、インド、インドネシアについては回答者の過半数が弱気
調査では、78%の回答者が先進国よりもアジアを投資対象先として選好しているという結果が明らかになったた。また83%もの回答者がアジアの消費者市場の成長ストーリーに沿ったポートフォリオに調整をしていくとする意向を示している。
ラッセル・インベストメントのシニア・リサーチ・アナリストのサラ・リエンは「個人消費の成長がアジア経済の成長を牽引しており、今回の調査で運用機関もこの流れに沿った形でポートフォリオの組み替えをしていることが明らかになりました。運用機関はアジアの安定的な経済のファンダメンタル、好調な企業収益、株価に織り込まれている潜在的な成長の実現に注目しています」と述べている。
同調査によると、運用機関は中国が最も成長すると考えており、回答者の63%が引き続き中国に対して楽観的な見解を示しており、ハードランディングに対する懸念は少ないようである。また中国の信用問題とその影響についても比較的楽観的な見解を示しており、仮に金融危機が発生したとしても、政府は資金が潤沢で、流動性が高い市場へのアクセスが可能なため、銀行の破綻を防ぐことができるだろうという見解を示している。47%の回答者は韓国の経済の潜在的な成長にも期待しており、韓国に対しても一層の成長機会を見ている。一般事業会社の良好なキャッシュフローと高い生産性の向上を韓国経済の主な成長要因として挙げている。
一方、運用機関はインドとインドネシアに対してはインフレと金利上昇に対する懸念から消極的な見方をしている。インドに対しては48%、インドネシアについては51%の回答者が消極的な見解を示している。またその他のアジア諸国の中では、フィリピンが投資先として有望視されており、前回調査に比べ、同国に対して興味を示している回答者が8%増えた。
一般消費財・サービス、生活必需品、一般事業会社を最も有望視
セクター別でみると運用機関はアジアにおける国内個人消費の成長と直結したセクターを選好していることが伺える。回答者の59%は一般消費財・サービス、56%は生活必需品、50%は一般事業会社が上昇すると見込んでいる。
金利感応度が高いセクター、規制業種に関しては弱気の見通し
逆に、地域全体としてインフレ懸念があることと将来的な金融引き締めリスクがあることから、43%の回答者が不動産投資信託(REIT)および金融、40%の回答者が公益など金利変動の影響を受けやすいセクターや規制業種に対し弱気な見解を示している。
ラッセル・インベストメントでは、「全般的に、アジアの企業は財務的に健全であり、負債水準が低い強含みの個人消費にも期待できるでしょう。インフレと金融政策に対する懸念は引き続きあるものの、回答者からは価格と金利へのプレッシャーは、継続的な金融引き締めの効果が経済全体に広がる今年下半期以降に弱まっていくというコンセンサスが得られました」と述べている。
2011 年第3 四半期の「運用機関の投資展望調査(アジア版)1」は、以下からダウンロードできる。
http://www.russell.com/JP/PDF/Library/IMO/Asian_IMO/R_MKT_IMO_Asia_V1FF_WEB_1108.pdf
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