インベスコ、ファクター投資家の動向や課題に関する調査結果を発表


インベスコは2020年10月19日、「インベスコ・グローバル・ファクター・インベスティング・スタディ2020」を発表した。同調査は、世界のファクター投資家の動向や課題に関する分析を提供するもので、今年で第5 回目となる。今回の調査では、回答した投資家の 97%が、今後 12 ヶ月間でファクター投資への資産配分を維持、または引き上げる計画であることが明らかとなった。アジア太平洋地域では、回答者の半分以上である 54%が、 同期間に、既存の配分を維持するとする一方で、回答者の44%が配分を引き上げる予定としている。

今回の調査では、2020年4月から5月の間に、合計25兆米ドルを超える資産運用を担う138の機関投資家と、100 のリテール部門の投資家を対象にインタビューを実施した。

今回の調査期間において、世界の株式市場では、モメンタム、クオリティ、低ボラティリティの各ファクターによる運用が、市場をアウトパフォームした。対照的に、バリュー・ファクターと小型株・ファクターはアンダーパフォームした。債務と流動性への懸念は、特に小型株およびバリュー・ファクターの足かせとなった。

機関投資家の 65%、リテール部門のファクター投資家の 67%が、調査を実施した過去 12 ヶ月間において、ファクタ ー・アロケーションによるパフォーマンスは、期待通り、あるいは期待以上であったと回答している。

またバリュー・ファクターにおいて低調なパフォーマンスが続いているにも関わらず、ほとんどの投資家が、これは一時的なものと考え、引き続きバリュー・ファクターへコミットしていることが分かった。アジア太平洋地域の投資家の 68%がバリュー・ ファクターは長期的にはアウトパフォームすると回答し、76%がバリュー・ファクターの長期的な有効性を信じていると回答している。この数字は、EMEA の投資家の 63%を上回ったが、北米の投資家の 87%は下回る結果となっている。

インベスコのファクター・インベスティングのグローバル・ディレクターであるスティーブン・クォンス氏は、次のように述べている。

現在のグローバル・マーケット環境では、古典的なバリュー・ファクターは、引き続き、逆風下にあります。現在の COVID-19 の影響を含む全景気サイクルを通じて、リスク調整後の好パフォーマンスを得るには、様々なファクター戦略を取り入れ ることが有効です。投資家は、厳格で規律正しいアプローチにより、ポートフォリオ構築の主たる要因となるファクター戦略 を見直しています。

 

投資家の債券運用におけるファクター採用の注目度は、ますます高まる傾向に

今回の調査では、債券投資にファクター戦略を適用する機関投資家やリテール部門のファクター投資家は、過去最多となった。回答者の 40%が債券運用にファクター戦略を採用しており、また 3 分の 1 以上が積極的な採用を検討していると回答している。ファクター戦略の採用を検討していないと回答した機関投資家は、回答者のわずか 17%にとどまった。

ファクター戦略が債券運用にも適用できると考える投資家は、2018 年の 59%から足元で 95%まで増加しており、インベスコは、これが投資家の共通した認識になりつつあることが分かるとしている。調査によると、投資家は、債券運用はファクター・ベースのアプローチに適していると考えており、63%が債券ファクターは株式ファクターと同様に重要であるとの見解を示している。

アジア太平洋地域の投資家がファクター戦略を適用している債券プロダクト別の割合は、投資適格社債(63%)、ハ イ・イールド社債(54%)、そして最も割合が高いのは国債(71%)となっている。システマティック・ファクター戦略が機能するためには最低限の取引量が必要であり、一部のアジア太平洋地域の債券の流動性の水準は、ファクター戦略 の採用にとって、引き続き、課題となっている。

スティーブン・クォンス氏は次のようにコメントしている。

アジア太平洋地域における債券市場の更なる国際化が進む中で、 グローバルな投資家が債券投資にファクター戦略を採用し始めたことは注目に値します。特に、中国のオンショア市場は 世界第 2 位の債券市場に拡大しており、同市場の国際化は、市場の流動性を高め、また債券運用者が同地域の投 資家のニーズを満たすために、より多くの債券ファクター戦略を提供するきっかけとなるだろうと見ています。

 

投資家はファクター・ベースの ETF への切り替えを継続

過去 12 ヶ月間で、機関投資家とリテール部門の投資家の双方で、ファクターETF の採用が増加している。現在では 大部分の機関投資家が ETF を利用し、その割合はファクター・ポートフォリオ全体の平均 14%を占めている。リテール 部門の投資家においては、3 分の 2 以上が ETF を採用し、その割合はファクター・ポートフォリオ全体の半分を占めている。地域別でみると、何らかの形で ETF を利用している投資家の割合は、アジア太平洋地域は 63%、EMEA では45%、北米では 77%となっている。

パッシブ・インデックス戦略を中心にしながらファクター戦略を採用している投資家にとって、ETF は使いやすさとフィー水準 の面で特に評価されている。「エンハンスト」あるいは「スマートベータ」という考え方を採用する投資家は、市場加重配 分よりもリスク・リターンの目標を実現することができる、透明性の高いルールに基づいた商品に魅力を感じている、と述べ ている。

アクティブなファクター戦略を実行するためにも、ETF がますます利用されている。インベスコでは、過去には、投資銀行経由でのスワップ 取引やその他のデリバティブを通じてファクター投資を行った投資家の話も聞いたが、デリバティブを利用した商品には 不透明であるとの懸念があり、これらに比べて透明性が高い ETF が好まれるようになってきている。アジア太平洋地域 の投資家の 69%は、ファクター戦略のために ETFを利用する最大の理由は、その流動性であると回答している。

 

ファクター投資と ESG

従前より、ファクターの採用は ESG の採用と並行して行われることが多く、2020 年においてもこの傾向は依然として顕著に見られた。84%の機関投資家と 71%のリテール部門の投資家が ESG を採用している中で、すでに全体の半数以上の投資家が ESG をファクター・ポートフォリオに組み込んでいるか、取り入れることを検討しています。

アジア太平洋地域では、79%の投資家が ESG を採用していると回答し、これは北米の 76%より高く、欧州の 82%よ り低いものでした。アジア太平洋地域の投資家にとって、ESG を運用に取り入れるかどうかは、その投資効果によって判断されることが多く、79%がリスク面での効果を、54%がリターン面での改善を期待する、と回答している。また、外部からの圧力が高まっているという証言の通り、72%が ESG を組み入れる動機としてステークホルダーからの要求を挙げている。

ESG 投資とファクター投資は一般的に異なるものだが、両者はしばしば補完的であると見なされ、アジア太平洋地域 の投資家の 60%は ESG はファクター投資に役立つとみている。インベスコによると、こうした利点は幅広く認識されており、アジア太平洋 地域の投資家からは、優れたリスク管理(91%)と ESG に関連するリターンの押し上げの可能性(74%)を期待する声が多く聞かれる。

スティーブン・クォンスは次のようにコメントしている。

ESG の採用は、アジア以外の地域でより広く行われているものの、 アジアにおいてもその動きは活発であり、関心も急速に高まっています。ESG とファクター投資の両者とも、定量的な情報 をシステマティックに使用して分散されたポートフォリオを構築するものであり、ファクター投資の考えはこれを自然に満たすも のです。