ナティクシス・インベストメント・マネージャーズは2019年12月5日、 アジア、 欧州、 北米、 中南米、 中東の500の機関投資家(企業・公的年金基金、 財団・基金、 保険会社、 政府系ファンド等を含む)を対象に行った最新の調査結果を発表した。 主な調査結果は以下の通り。(なお、本文書は翻訳作成された資料であり、 内容については2019年12月4日発表のリリースの英語原文が優先する。)
- 今回調査に応じた500の機関投資家の運用資産残高は総額で15兆ドルを上回るが、 実にその83%が今後5年以内に世界的な金融危機が発生すると予想。 2020年のトレンドを見るうえで、 9割の回答者が過去最高水準にある公的債務を懸念材料として挙げている
- 投資家はボラティリティの上昇、 歴史的な低金利環境の継続、 他国による選挙への干渉などを、 今後12カ月で注目すべき主要トレンドとして認識
- これらの漠然とした要因は市場に影響をもたらすと予想され、 機関投資家の75%はアクティブ運用に有利と見ている
- 機関投資家の71%が、 個人投資家はパッシブ運用に関して間違った安心感を抱いており、 実際のリスクを認識していないと回答
- 機関投資家の64%がポートフォリオに何らかの形でESGを取り入れており、 54%がESGはアルファにつながると回答
ナティクシス・インベストメント・マネージャーズが500の機関投資家を対象に行った調査では、 世界の機関投資家は、 2020年の投資トレンドを左右するマクロ経済情勢を見るうえで、 公的債務残高の増大および経済の低成長を懸念要因として挙げていることが判明した。
公的債務残高が過去最高水準を更新し続けるなか、 大多数(89%)の機関投資家は、 それが世界経済に与える影響を懸念している。債務問題に対する弱気なセンチメントは、次にいつ世界的な金融危機が起こるかという予測にも影響を与えており、 回答者の83%が今後5年以内に金融危機は発生すると予想し、 58%が今後1~3年の間に発生すると予想している。
ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの北アジア代表を務める加藤欣司氏は、 次のように述べている。
この一年でマクロ経済の様々な問題が露呈し、 世界の機関投資家は2020年に向けたポートフォリオの構築に頭を悩ませています。 その結果、 世界経済の減速が近い将来に起こると予測するようになりました。 しかしながら、 そうした見通しにも関わらず、 投資家の間には不透明感が漂っており、 『様子見姿勢』をとっていることから、 ポートフォリオに本格的な変更を加えるには至っていません。
他国による選挙への干渉はボラティリティを高める主因のひとつ
機関投資家は、 各国の厳しい財政状況や景気後退の可能性に加えて、市場の不透明感を高める要因となっている世界の政治局面にも目を光らせている。回答者の69%は、他国による選挙への干渉は世界的な問題になりつつあると認めており、 64%が米国大統領選は市場のボラティリティを高める主因になると見ている。
マクロ経済環境は依然として複雑な状況にあることから、ボラティリティが上昇するとの見方が強まっている。過半数の機関投資家(52%)が、2020年に為替市場のボラティリティの上昇を予想しており、株式市場に関しては77%、債券市場に関しては62%がボラティリティの上昇を見込んでいる。
機関投資家が2020年のポートフォリオに対するリスク要因としてボラティリティ(回答者の53%)を一番に挙げているのはこうした要因が一因と思われる。2番目に多かった回答は低金利の継続(50%)で、以下、信用収縮の影響(37%)や流動性問題(35%)、 デフレ(20%)が懸念要因として続いた。
2020年の上位5のポートフォリオ・リスクの懸念要因
ボラティリティ | 53% |
金利 | 50% |
信用収縮 | 37% |
流動性 | 35% |
デフレ | 20% |
ボラティリティの高まりに対応するためにアクティブ運用を活用
ボラティリティの上昇や厳しい金利環境を受け、機関投資家の46%がばらつきの拡大を予想しています。有価証券間の価格差が拡大したことが、機関投資家の75%が今日の市場はアクティブ運用に有利だと回答している理由のひとつであると思われる。これは、市場の効率性が高まるにつれ、アルファの創出が難しくなると回答した71%の機関投資家にとって好材料であると思われる。
市場のボラティリティの高まりに対応するため、投資家はアクティブ投資の比重を高めており(回答者の71%)、今後3年間はアクティブ投資を70%、パッシブ投資を30%とする比重を維持すると考えている。
進むESGの採用
機関投資家の64%はポートフォリオに何らかの形でESGを採用していると回答している。一般的に機関投資家は新しい取り組みの最先端にあると言えるが、この数字はESGを採用していないとの回答が40%だった2017年と比べて10%近くの増加となった。
大半の機関投資家は上昇の可能性を求めて投資を行うが、 機関投資家の54%がESG投資によりアルファ創出が見込まれるとしている。 ほぼ同数の57%がESGに投資する理由として、アセットを自分たちの組織の価値観に合致させるためとしている。 また、 37%はヘッドライン・リスクを最低限に抑えるためとしている。
利回り追求は引き続き困難
超低金利が継続するなか、機関投資家にとって利回りの追求が引き続き大きな課題となっている。その結果、 4分の3に当たる機関投資家が利回りを求めるあまりリスクをとり過ぎていると回答している。
投資家の56%は2020年にマイナス金利の債券が増加すると考えており、54%は中央銀行が新たな危機に対処するために必要な手段を持ち合わせていないと懸念している。
伝統的資産から利回りが得られない結果、機関投資家はプライベート・アセットに目を向けている。全体的に伝統的資産に比べて、プライベート・アセットの方が、分散化の実現ができ(回答者の62%)、より良好なリターンが得られる(61%)ことから、ポートフォリオの2つの重要な機能を果たすのにより適していると考えている。機関投資家で最も採用が進んでいる戦略は、プライベート・エクイティ(79%)とプライベート・デット(76%)。
加藤欣司氏は次のようにも述べている。
10年におよぶ低金利および経済成長の低迷を受け、 投資家は利回りを追求し、 代替資産に目を向けるようになりました。 伝統的資産は機関投資家が必要とする長期的なリターン目標を提供しておらず、 近い将来、 景気は再度後退局面入りすると予想されていることから、 68%の機関投資家が、 今後はプライベート・アセットへの投資がポートフォリオの恒久的な役割を果たすと回答しています。
投資家は、 政治情勢が市場のボラティリティの上昇をもたらす可能性があり、 低金利環境が利回りの追求をより困難なものにしていることを認識しています。 世界経済は低成長が続くと予想されるものの、 この1年でどのトレンドが実際のものとなるかを見極めるには時間を要することを認識しており、 忍耐強く様子見をしています。
→ナティクシス・インベストメント・マネージャーズが実施した調査結果の全文
調査方法
ナティクシスは、 500名の機関投資家を対象に、 アジア、 欧州、 北米、 中南米、 中東の計28カ国の企業年金、 公的年金基金、 財団、 各種基金、 保険会社、 政府系ファンドなどの運用担当者に回答を求めた。 回答は、 調査会社であるCoreData社により2019年10月~11月に集計された。
ナティクシス・インベストメント・インスティチュートについて
ナティクシス・インベストメント・インスティチュートは、 Active Thinking(R)のもと、 投資をとりまく環境を形づくる重要な問題に対する様々な考察を行っている。同機関は世界中で、ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの投資家心理、マクロ経済、ポートフォリオ構築の分野における専門知識や運用子会社およびグループ外の専門家による独自の見解など、幅広い知見を集約させている。全方位からの市場見解や投資トレンドの洞察に満ちた分析を提供することで、 問題に関する議論をより根拠のあるものとすることを目的としている。
ナティクシス・インベストメント・マネージャーズについて
ナティクシス・インベストメント・マネージャーズは、ポートフォリオ構築に対する鋭い洞察力に裏付けられたアプローチを通じて金融プロフェッショナルにサービスを提供している。24の投資運用会社のグローバルな専門能力を結集して、 Active Thinking(R)のもと、あらゆる市場でより良い成果を追求するお客様をサポートする先見的なソリューションを提供している。ナティクシスは世界トップクラスの資産運用会社のひとつで、運用資産総額2は9,210億ユーロに達する。パリとボストンに本社を置くナティクシス・インベストメント・マネージャーズは、ナティクシスの子会社である。パリ証券取引所に上場するナティクシスは、フランス第2位の銀行グループBPCEの子会社。投資ソリューションは、ナティクシス・アドバイザーズおよびダイナミック・ソリューションを通じても提供される。管轄地区によりご提供できない運用戦略もございます。
- Cerulli Quantitative Update: Global Markets 2018によれば、 ナティクシス・インベストメント・マネージャーズは2017年12月末時点の受託運用資産規模で世界第16位となっている。
- 2019年9月末現在の純資産(NAV)、 これには、 想定資産、 資産運用サービスを提供している資産、 グロス資産、 関連会社の少数株主持分としての資産、 その他の規制対象外の資産が含まれている可能性がある。