1月は17本の追加型株式投資信託が償還、このうち8本が繰上償還
投資信託協会によると、2023年1月に17本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することをいいます。
この17本のうち満期償還(定時償還)は9本だけで、8本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。
繰上償還の理由
2023年1月に繰上償還されたファンド8本の繰上償還の理由を見てみましょう。
7本については、純資産総額が減少し、信託約款の繰上償還条項に定める金額を下回り、効率的な運用を行うことが困難な状況が続いていることが理由でした。1月も残高の減少が繰上償還の理由として最も多いものでした。
残りの1本となる大和アセットマネジメントの「世界インフラ戦略ファンド(為替ヘッジなし/毎月分配型)」は、受益者が1名であり、その受益者が全口数を換金したい意向があったためという理由でした。
繰上償還の影響
投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。
保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。
これにより、投資家は運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。
多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することがとても大切です。
- 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
- 運用残高が減少傾向にないこと
なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約150億円です(2022年12月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は343本(2022年12月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。
1口当たり償還額
2023年1月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、17本中10本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。
1口当り償還額が最も低かったのは、大和アセットマネジメントの「ダイワ・オーストラリア高配当株α(毎月分配型) 株式&通貨ツインαコース」で1口当り償還額は2,054.47円でした。同ファンドは、2013年1月に設定され、2023年1月に満期償還されました。
一方で、1口当り償還額が最も高かったのは、アセットマネジメントOneの「グローバル・アロケーション・ファンド 年2・為替ヘッジなし」で、1口当り償還額は16,017.03円でした。同ファンドは、2013年2月に設定され、2023年1月に満期償還を迎えました。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが3本ありました。
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額が最も低かったのは、インベスコ・アセット・マネジメントの「インベスコ 米国公共インフラ債<為替あり>(年1回決算型)」で、合計額は8,893.52円(1口当り償還額8,893.52円+分配金0円)でした。
一方、この合計額が最も高かったのは、「グローバル・アロケーション・ファンド 年2・為替ヘッジなし」で、合計額は18,451.03円(1口当り償還額16,017.03円+分配金2,434円)でした。
2023年1月に償還した追加型株式投資信託の一覧
運用会社 | ファンド名 | 設定日 | 償還時純資産 総額 |
1口当り 償還額 (A) |
期中 分配金 (B) |
合計 (A) + (B) |
満期/繰上 |
大和 | 利回り株チャンス13-03(年4回決算型) | 2013.3.15 | 1,203 | 9,490.98 | 6,670.00 | 16,160.98 | 満期 |
大和 | ダイワ・オーストラリア高配当株α(毎月分配型) 株式αコース | 2013.1.23 | 103 | 3,459.57 | 8,330.00 | 11,789.57 | 満期 |
大和 | ダイワ・オーストラリア高配当株α(毎月分配型) 通貨αコース | 2013.1.23 | 279 | 4,680.51 | 9,480.00 | 14,160.51 | 満期 |
大和 | ダイワ・オーストラリア高配当株α(毎月分配型) 株式&通貨ツインαコース | 2013.1.23 | 3,192 | 2,054.47 | 9,395.00 | 11,449.47 | 満期 |
大和 | 世界インフラ戦略ファンド(為替ヘッジなし/毎月分配型) | 2020.12.21 | 1 | 12,326.15 | 420.00 | 12,746.15 | 繰上 |
JPモルガン | JPM新興国好利回り債投信 | 2008.1.30 | 3,642 | 4,312.93 | 6,015.00 | 10,327.93 | 満期 |
インベスコ | インベスコ 米国公共インフラ債<為替なし>(毎月決算型) | 2016.7.29 | 190 | 11,405.23 | 1,460.00 | 12,865.23 | 繰上 |
インベスコ | インベスコ 米国公共インフラ債<為替あり>(毎月決算型) | 2016.7.29 | 47 | 7,911.16 | 1,095.00 | 9,006.16 | 繰上 |
インベスコ | インベスコ 米国公共インフラ債<為替なし>(年1回決算型) | 2016.7.29 | 55 | 13,061.67 | 0.00 | 13,061.67 | 繰上 |
インベスコ | インベスコ 米国公共インフラ債<為替あり>(年1回決算型) | 2016.7.29 | 29 | 8,893.52 | 0.00 | 8,893.52 | 繰上 |
三菱UFJ | 三菱UFJ 米国債券インカムオープン | 2002.1.18 | 1,522 | 6,814.25 | 6,671.00 | 13,485.25 | 繰上 |
One | Oneフレキシブル戦略日本株ファンド | 2018.1.31 | 1,095 | 10,905.85 | 2,000.00 | 12,905.85 | 満期 |
One | グローバル・アロケーション・ファンド 年2・為替ヘッジなし | 2013.2.8 | 3,019 | 16,017.03 | 2,434.00 | 18,451.03 | 満期 |
One | グローバル・アロケーション・ファンド 年2・限定為替ヘッジ | 2013.2.8 | 298 | 9,490.03 | 1,958.00 | 11,448.03 | 満期 |
UBS | UBS ゴールド・ファンド(為替ヘッジあり) | 2020.11.27 | 154 | 9,889.83 | 0.00 | 9,889.83 | 繰上 |
三井住友DS | <七十七>ESG日本株オープン | 2018.8.10 | 248 | 11,600.92 | 0.00 | 11,600.92 | 満期 |
三井住友DS | 日興グラビティ・ヨーロピアン・ファンド | 2014.3.7 | 658 | 10,276.43 | 60.00 | 10,336.43 | 繰上 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)