アジア地域ファンド・パスポート #
アジア地域ファンド・パスポートは、APEC加盟国のうち、参加を表明した国が投資家保護上の要件を満たしたファンド(投資信託等)について、相互に販売を容易にするために規制の共通化を図るための枠組みです。英語ではFramework for the Asia Region Funds Passport(ARFP)といいます。
アジア地域ファンド・パスポートの目的 #
ARFPでは、趣意書(statement of intent)において次の5つを目的として掲げています。
- アジア地域経済発展のための資金調達にむけ、アジア地域の資本市場 の深化を行い、
- 健全な経済成長を支援する観点から、アジア地域の金融市場及び資産 運用業の能力、専門性及び国際的な競争力の強化を行い、
- アジア地域の貯蓄が域内で流通することを促進し、アジア地域の投資 に利用可能な資金プールの拡大を図り、
- 各参加エコノミーの投資家に対し、より多様な投資機会を提供し、ポートフォリオのより適切な管理及び投資目的の達成を可能とし、
- 金融サービスのための市場の、投資家保護及び公平性、効率性及び透明性を促進する法・規制の枠組みを維持し、金融の安定性を支援し、 集団投資スキームの運用及び流通に関する高い水準を提供する。
(金融庁、アジア地域ファンド・パスポート創設についての声明(仮訳)より)
アジア地域ファンド・パスポート誕生までの経緯 #
アジア地域ファンド・パスポートは、2010年1月に、オーストラリアがアジア地域ファンド・パスポート(ARFP)構想を含むレポート「金融センターとしてのオーストラリア(Australia as a Financial Centre)」を発表したことから始まりました。
このレポートは、オーストラリアをオーストラリア・アジア地域の主要金融センターにするために2008年9月にオーストラリア政府が設立したオーストラリア金融センター・フォーラム(AFCF)が2009年11月に作成したレポートで、当時の会長がマーク・ジョンソン氏(元マッコリー銀行Macquarie Bankの副会長)だったことからジョンソン・レポートと呼ばれています。
2010年 1月 | オーストラリアがARFP構想を提案(ジョンソン・レポート)。 |
2010年11月APEC財務大臣会合 | アジア地域ファンド・パスポートのコンセプトが紹介される。 |
2012年12月APEC財務大臣会合 | アジア地域ファンド・パスポートのワーキング・グループが形成される。 |
2013年5月 | 第1回ワーキング・グループ会合。 |
2013年6月 | 第2回ワーキング・グループ会合。 |
2013年9月APEC財務大臣会合 | オーストラリア、韓国、ニュージーランド、シンガポールの4カ国が参加表明文書に署名。 |
2013年12月 | 第3回ワーキング・グループ会合。 |
2014年3月 | 第4回ワーキング・グループ会合。 |
2014年4月 | APECとしてARFPに係る規制案が示される。 |
2014年8月 | 第5回ワーキング・グループ会合。 |
2014年11月 | 第6回ワーキング・グループ会合。 |
2015年2月 | APECよりルール案が公表される。 |
2015年4月 | 投資信託協会(日本)が、上記ルール案に対して外部監査の仕組み、コンプライアンス・レビュー、ファンドのオペレーターの資格要件、ARFPファンド保持者への開示等に係る事項等について意見書を取りまとめ、関係規制当局に提出。 |
2015年5月 | 第7回ワーキング・グループ会合。 |
2015年8月 | 第8回ワーキング・グループ会合。 |
2015年9月APEC財務大臣会合 | 日本、ARFP参加表明文書に署名。 |
2016年6月 | 参加5カ国(日本、オーストラリア、韓国、ニュージーランド、タイ)で運用ルールの内容を定めた協力覚書(Memorandum of Cooperation)が発効。 |
2016年12月6日 | アジア地域ファンド・パスポート第1回合同委員会対面会合に係るプレスリリースの公表。運用会社と投資家に対する、より透明性が高く効果的な方式でのパスポート公式ウェブサイトのコンテンツと運営方針の策定等について合意。 |
2017年4月27日 | アジア地域ファンド・パスポート第2回合同委員会対面会合に係るプレスリリースの公表。パスポートの運営準備にかかるプロセスに関する情報を含んだ年次報告書を、2017 年7月に公表すること等で合意。 |
2017年7月25日 | アジア地域ファンド・パスポート合同委員会は、年次報告書及び市中協議文書「ARFPに関する各国規制ガイダンス」を公表。 |
2017年10月13日 | アジア地域ファンド・パスポート、第3回合同委員会対面会合に係るプレスリリースを公表。2018 年上半期中の開始見込みを発表。 |
2017年11月 | 金融庁、アジア地域ファンド・パスポートの創設及び実施にかかる協力覚書に基づく輸出ファンドの登録申請及び輸入ファンドの認証申請の手続等に関する実施要領発表。 |
2019年2月 | アジア地域ファンドパスポート開始。 |
2019年7月 | ニュージーランドは、実施のための要件を完了し、現地のパスポート取得予定ファンドからの登録申請および外国のパスポート取得予定ファンドからの入国申請を受け付ける準備が整っていることを確認した。 |
2020年5月 | 韓国は、ARFP実施のための法令改正を完了し、2020年末までにファンド・パスポート申請を受け付ける準備が整うことを確認した。 |
2022年1月 | ニュージーランド金融市場庁(FMA)は、ニュージーランドを拠点とする規制対象CISをパスポート・ファンドとして登録した。これはARFP制度の下で認められた世界初のパスポートとなる。 アジア地域ファンド・パスポート(ARFP)に基づくパスポートファンドとして承認されたのはスマートシェアーズ・リミテッドで、これによりスマートシェアーズは、オーストラリア、タイ、日本、韓国でファンドの販売が可能になる→詳細 |
2024年10月現在、日本においては、Smartshares のファンドの販売は行われていません。
アジア地域ファンド・パスポートまとめ #
アジア地域ファンドパスポート(ARFP)は、アジア太平洋地域の投資信託を対象とした制度で、各国間のファンドの相互販売を促進するために設立されました。このパスポート制度により、参加国(オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランド、タイなど)のファンドが他の参加国でも販売できるようになり、クロスボーダーでの資産運用が容易になります。ファンドの透明性や規制の統一を図り、投資家にとっての選択肢を拡大することを目的としています。