クローゼット・インデックスファンドとは #
Closet Index Fund(クローゼット・インデックスファンド)とは、アクティブ運用ファンドでありながら、ファンドの中身がベンチマークに酷似していて、運用成績もほとんどベンチマークに連動している疑似インデックスファンドと言えるような投資信託のことです。
英語ではCloset Indexing、Index Huggingとも呼ばれます。Hugは、~を抱きしめる、~に沿って進むという意味の英語です。なお、英語のclosetには「非実際的な,机上の空論的な」という意味があります。
本来アクティブ運用型のファンドは、ファンドマネージャーが自身や運用会社の分析能力や調査・経験を駆使して、リスクをとりつつも、ベンチマークを上回る運用成績を達成しようとするファンドです。
しかしながら、クローゼット・インデックスファンドは、アクティブファンドを標榜しながら、ファンドマネージャーがとるべきリスクをとらずに、ベンチマークと同じ銘柄を似たような組入比率で組み入れることで、ベンチマークと同じような運用成果を得ています。しかも、運用方針上はアクティブ運用ファンドを謳っているので、インデックスファンドよりも高い信託報酬を投資家から徴収しています。
クローセット・インデックスファンドの見分け方 #
ファンドがクローゼット・インデックスファンドかどうかを厳密に判断するのは難しいと言われています。
欧州連合(EU)の金融規制機関である欧州証券市場監督局(ESMA)では、次の3つの観点から、クローゼット・インデックスファンドかどうかの調査を実施しました。
- アクティブシェアの割合(ファンドのポートフォリオを構成する銘柄のうち、ベンチマークを構成する銘柄とは異なる銘柄が組み入れられている割合。)
- トラッキングエラー(ファンドのリターンとベンチマークのリターンの乖離。)
- R-squared 決定係数(ファンドのパフォーマンスとベンチマークのパフォーマンスの相関を示す値。ファンドのリターンのどのくらい(%)が対象とするベンチマークの動きに影響されたかを示す数値。決定係数が1というのは、ファンドのパフォーマンスがベンチマークに完全に連動していることを意味する)
欧州の投資家保護を目的とした非政府組織で、投資家保護のための調査研究や政策提言を行うBetter Finance(European Federation of Investors and Financial Services Users)では、ESMAの調査のフォローアップ調査を独自に行い、165のUCITSがクローゼット・インデックス・ファンドである可能性があると発表しました。なお、UCITSはEU(欧州連合)の法律に従って設立・運用されている投資ファンドで、欧州版の投資信託です。一方、これらのデータだけでCloset index fundかどうかを決めつけることに対する疑問もEFAMA(欧州投資信託協会)などから出ています。
クローゼット・インデックスファンドに関するレポートや調査 #
- PUBLIC STATEMENT – SUPERVISORY WORK ON POTENTIAL CLOSET INDEX TRACKING(ESMA)
- ESMA UPDATES ON SUPERVISORY WORK ON CLOSET INDEXING (ESMA)
- Better Finance Replicates and Discloses ESMA Findings on Closet Indexing(Better Finance)
- EFAMA’s Report on ESMA’s supervisory work on potential closet index tracking 6 July 2016(EFAMA)
自分の保有するアクティブファンドがクローゼット・インデックスファンドだったら #
上記のように、closet index fundについては、さまざまな議論がありますが、保有するアクティブファンドが、ベンチマークを上回る投資成果を達成していないなど、そのコスト(信託報酬)に見合った運用ができていないと感じたら、保有するアクティブファンドと同じベンチマークのインデックスファンドの中身を比較してみるのもよいでしょう。ファンドの構成銘柄、個別銘柄の構成比率、業種別配分、パフォーマンスといった中身がベンチマークとほとんど同じというのであれば、もしかしたら、コストの低いインデックスファンドに乗り換えることも検討してみてもよいかもしれません。