分配金を抑制するとは? #
投資信託は、基本的には、定期的に分配を行う投資商品です。
通常、運用会社が基準価額水準、市況動向、分配対象額の水準等を勘案し、分配金額を決定し、分配方針に従って定期的に分配が実施されます。収益分配に充てなかった利益(留保益)については、信託財産中に留保し、運用の基本方針に基づいて運用されます。
一方で、「投資信託が分配金を抑制する」とは、投資信託の運用会社が意図的に分配金の支払いを少なくしたり、場合によっては分配金を全く支払わない選択をすることを指します。これは、ファンドの運用方針や投資家にとってのメリットを考慮した判断に基づいて行われます。
投資信託の運用において、分配金を抑制するとは、分配金を抑制してその運用収益を信託財産中に留保させたまま運用が継続されることです。これは、長期の資産形成を行う場合には有利に働きます。収益の一部が決算のたびに分配されてしまうと、運用資産が都度減少することになり、その分の運用効率が下がってしまうからです。
分配金の抑制の2つのケース #
通常、投資信託は運用益や配当金などから発生した収益を投資家に分配金として支払います。しかし、分配金を抑制するファンドには次の2つのケースがあります。
1. 分配金の金額を少なくする: ファンドが生み出した収益の一部を分配金として支払うのではなく、そのかなりの部分をファンド内に留保することで、分配金を減らす措置です。
2. 無分配とする(分配金を出さない): ファンドが収益を得ているにもかかわらず、分配金を支払わずにその資金をファンド内に留めて運用を継続することで、運用資産を増やす形を取ります。
分配金を抑制する理由 #
1. 長期的な資産成長を目指すため
分配金を支払うと、ファンドの総資産が減少します。分配金を抑制することで、分配のための資産売却を行わずに運用を継続できるため、ファンド全体の資産が減少しません。これにより、ファンド内の資産をそのまま運用し続け、長期的には資産が効率的に成長することが期待できます。
2. ファンドのパフォーマンスを向上させるため
分配金を支払わずにその資金を運用に回すことで、ファンドのトータルリターン(総合収益)を向上させることが期待できます。資産の売却を避けて効率的に運用することで、より大きなリターンを生み出せる可能性がでてきます。ただし、資産規模の成長は運用成績にも依存するため、長期的にパフォーマンスが必ず向上するとは限りません。
分配金を抑制するファンドの例 #
分配金を抑制することを目論見書で明記しているファンドには、三菱アセットマネジメントが運用するeMAXIS Slimシリーズのインデックスファンドがあります。
例えば、eMAXISSlim 米国株式(S&P500) の分配方針には、「分配金額の決定にあたっては、信託財産の成長を優先し、原則として分配を抑制する方針とします。(基準価額水準や市況動向等により変更する場合があります。)と記載されており、2018年7月3日に設定されてから一度も分配金が支払われたことがありません。ファンドの人気と分配金抑制方針もあって、同ファンドの純資産総額は2024年10月24日現在、約5.7兆円と、国内最大の規模を誇っています。
分配金の抑制のまとめ #
投資信託が分配金を抑制するのは、長期的な資産成長を目指し、運用資産の成長を最大化するためです。特に、長期投資を考えている投資家や、資産形成の途中にある人にとっては、分配金を抑制する方針はメリットが大きいと言えます。一方、定期的な現金収入を求める投資家には、分配金が多いファンドの方が適している場合もあるため、投資目標に応じた選択が重要です。