高配当株ETF #
高配当株ETFは、配当利回りが高い企業に焦点を当てて投資する上場投資信託(ETF)です。高い株式配当利回りに着目した株価指数への連動を目指して運用を行います。これらのETFは、企業の株価上昇だけでなく、安定した分配金収入を重視する投資家にとって魅力的な選択肢となります。分配金を重視するポートフォリオを持ちたい、かつ分散投資をしたい投資家には便利な商品です。
このようなETFを海外ではDividend ETFなどと呼びます。Dividendは配当という意味です。なお、ETFでは、株式の「配当」に相当するものは「分配金」と呼ばれます。
ETFの分配金の原資は、ETFが保有している株式や債券などの有価証券からの配当や受取利息などです。ETFでは、法律によって、計算期間中に発生した配当や受取利息などの収益から支払利子、信託報酬、株価指数に係る商標使用料、監査費用などの費用を控除した全額を分配するものと定められています。
高配当株ETFの主な特徴 #
1. 高配当企業への分散投資 #
高配当株ETFは、配当利回りが高い企業を中心に組み入れたポートフォリオを構築しています。例えば、S&P 500の中で特に高い配当を提供する企業に投資するETFや、日本の高配当企業にフォーカスしたETFがあります。
これにより、個別の高配当株を選ぶ手間を省き、分散投資によってリスクを分散させることができます。個別株と比べ、特定の企業の業績悪化によるリスクを軽減しつつ、比較的高い分配金を得ることが可能です。
2. 安定した分配金収入 #
高配当株ETFの主な目的は、株価の上昇を追い求めるというよりも、安定的な分配金収入を得ることです。高配当を行う企業は、一般的に成熟しており安定したキャッシュフローを持つ企業が多いため、安定した配当が継続することが期待できます。これにより、株価が短期的に変動しても、分配金という形で利益を得ることができます。分配の頻度はETFにより異なります。
3. 長期投資向けの資産形成手法 #
高配当株ETFは、長期的に資産を形成したい投資家にとっても適しています。分配金は再投資することで、時間をかけて資産を増やすことができます。高配当株ETFは、退職後の生活費を補填するために安定した収入源を求める投資家や、長期的なポートフォリオ構築を目指す人々にとって魅力があります。
ただし、高配当株ETF自体は分配金を自動的に再投資する仕組みを提供していません。ETFでは、通常、分配金は現金で支払われます。そのため、分配金を再投資したい場合は、受け取った分配金を自分でETFの追加購入などに充てる必要があります。
4. コストが低い #
高配当株ETFに限りませんが、ETFは一般の投資信託に比べて運用コストが低い傾向にあります。ETFはインデックスに基づくパッシブ運用であるため、信託報酬が比較的低く設定されており、この低コストの運用は、投資家が手にする利益を最大化するのに役立ちます。
5. 配当スクリーニングによる選定 #
高配当株ETFは、さまざまな配当重視型の株価指数がベンチマーク(連動の対象)として採用されていますが、一般に、それらの株価指数は、企業の配当利回りや配当の持続可能性を基準に銘柄が選定されます。多くの場合、企業の過去の配当履歴や財務状況が調査され、安定した配当を維持できる企業がポートフォリオに含まれます。これにより、単に配当が高いだけでなく、持続的に配当を提供できる企業への投資が可能になります。
高配当株ETFのメリットとリスク #
メリット #
安定的な収入: 分配金を受け取りつつ、株価の成長も期待できるため、安定した収益を得たい投資家に適しています。
分散投資: 分配金を重視しつつも、複数の企業に分散投資することでリスクを低減できます。
低コスト: ETFの運用コストは通常低めに設定されており、手数料が低いため、リターンを高めやすい特徴があります。
リスク #
株価の変動リスク: 分配金が安定していても、株価そのものが下落するリスクがあります。
分配金の減少リスク: 経済の状況や企業の業績に応じて、配当が減少する可能性があります。特に、不景気時には企業が配当を削減したり、停止することも考えられます。ETFが受け取る配当が減少すれば、ETFの投資家に支払われる分配金も減少する可能性があります。
東京証券取引所に上場している高配当株ETF #
2024年10月現在、次の指数連動型の高配当株ETFが東京証券取引所に上場しています。
日本の高配当株を対象とするETF #
- 上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)(1698)
- NEXT FUNDS 日本株高配当70連動型上場投信(高配当70)(1577)
- iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF(1478)
- NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)
- One ETF 高配当日本株(1494)
- iFreeETF TOPIX高配当40指数(1651)
- グローバルX MSCIスーパーディビィデンド-日本株式 ETF(2564)
- グローバルX Morningstar 高配当 ESG-日本株式 ETF(2849)
- 上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(1399)
米国の高配当株を対象とするETF #
- グローバルX S&P500配当貴族ETF(2236)
- グローバルX S&P500配当貴族 ETF(為替ヘッジあり)(2095)
- iシェアーズ 米国高配当株 ETF(2013)
いろいろなベンチマーク #
これらのETFが連動の対象としている株価指数には次のような特徴があります。
東証配当フォーカス100 #
2010年3月に東京証券取引所が算出を開始した株価指数。東証配当フォーカス 100 指数は、TOPIX 1000 及び東証 REIT 指数の算出対象を母集団とし、四半期ごとに安定的に配当の獲得を目指すことを目的として選定された 100 銘柄 により構成される指数。
野村 日本株高配当70(配当除く) #
2012年12月に野村證券金融工学研究センターが算出を開始した日本株を対象とした株価指数。国内金融商品取引所に上場する全ての普通株式のうち、今期予想配当利回りの高い原則70銘柄で構成されています。
MSCIジャパン高配当利回り指数 #
MSCI社が算出する日本株の株価指数。配当性向や配当継続性、財務指標(ROE、負債・自己資本比率等)の要件を満たした銘柄の中で、配当利回りが高い銘柄で構成されています。REITは含まれません。構成銘柄は40銘柄から100銘柄程度で推移しています。英語名称はMSCI Japan High Dividend Yield Index。
日経平均高配当株50指数 #
日経平均構成銘柄のうち配当利回りの高い50銘柄から構成される配当利回りウェート方式の株価指数。
MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数 #
MSCI社が算出する日本株の株価指数。相対的に配当利回りが高い銘柄で構成され、低ボラティリティの特性を併せ持ちます。構成銘柄数は115から140銘柄程度。英語名称はMSCI Japan IMI Custom Liquidity and Yield Low Volatility Index (JPY)。
S&P 500配当貴族指数 #
米国を代表する株価指数であるS&P500の構成銘柄のうち、25年以上連続して増配を継続している銘柄で構成される株価指数
実際の分配金利回り #
では、これらのETFの分配金利回りはどうだったでしょうか。2024年1月時点での分配金利回りを見ると、日本株式を対象とした高配当株ETFの分配金利回りは、東証プライム市場の2023年の単純平均利回り2.21%を概ね上回りましたが、下回ったETFも一部にありました。また、米国株式を対象とした高配当株ETFも、S&P500株価指数の配当利回り1.32%(2024年6月現在、データ出所:YCharts)を為替ヘッジなしでは上回っていますが、為替ヘッジありでは下回っています。
ETF名 | 銘柄コード | 分配金利回り |
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上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100) | 1698 | 2.91%(2024/1/31) |
NEXT FUNDS 日本株高配当70連動型上場投信(高配当70) | 1577 | 3.14%(2024/1/31) |
iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回りETF | 1478 | 1.97%(2024/1/31) |
NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信 | 1489 | 3.30%(2024/1/31) |
One ETF 高配当日本株 | 1494 | 2.80%(2024/1/31) |
iFreeETF TOPIX高配当40指数 | 1651 | 1.90%(2024/1/31) |
グローバルX MSCIスーパーディビィデンド-日本株式 ETF | 2564 | 3.73%(2024/1/31) |
グローバルX Morningstar 高配当 ESG-日本株式 ETF | 2849 | 2.36%(2024/1/31) |
上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ | 1399 | 2.53%(2024/1/24) |
グローバルX S&P500配当貴族ETF | 2236 | 1.47%(2024/1/31) |
グローバルX S&P500配当貴族 ETF(為替ヘッジあり) | 2095 | 0.36%(2024/1/31/) |
iシェアーズ 米国高配当株 ETF | 2013 | n/a (2024/1/18上場) |
高配当株ETFまとめ #
高配当株ETFは、安定した分配金収入を得ながら、分散投資でリスクを抑えたい投資家にとって魅力的な投資手段です。特に、定期的な分配金を受け取りつつ、長期投資で資産を形成したいというニーズに合った商品です。分配金を再投資し、運用額を増やすことで、長期では将来的に資産を築くことも可能です。