デュレーションとは #
デュレーションには①金利リスクの大きさ、及び②投資期間の目安の2つの使い方があります。
教科書等を見ますと、よく複雑そうな計算式が書いてありますが、それはここでは書きません。かぎられた一部の債券にしか妥当しない式ですし、またあまり現実的とも思えない前提がなくては、こうした教科書の式は使えないからです。
ここでは、例えばデュレーション = 7.6、と書いてあったとき、その「7.6」なる数字にどんな意味があるかをご説明します。
①金利に対する反応の大きさ #
まず、デュレーションがもっとも有効なのは、金利に対する債券や債券ポートフォリオの価格の反応の大きさを示す数字として使う場合です。
例えば前述の7.6とは、「金利が変動すると、この債券や債券ポートフォリオの価格は、概算でその7.6倍だけ変動しますよ」という意味です。
デュレーションが7.6の債券投資信託をもっていたとしましょう。ある日突然、金利が1%上昇したとしますと、その投資信託の基準価額は概算で1%×7.6 = 7.6%下落します。逆に、金利が0.5%下落したとしますと、その債券ポートフォリオの価格はその瞬間0.5%×7.6 = 3.8%上昇するはずです。
したがってデュレーションが0に近いほど、その債券やポートフォリオの現在価格は、金利の変動の影響を受けにくいことになります。この「その瞬間」というところにご注意ください。あくまでも「現在価格がどれだけ動くか」です。
この文脈でのデュレーションは、債券で相場を張っているときに、どれぐらいのリスクを取るかを考えるのに使います。
②投資期間の目安 #
デュレーションにはもう一つ「投資期間があらかじめ決まっているときに、その投資期間と大体デュレーションが同じになる債券や債券ポートフォリオを持っておくと、投資期間が終わったときの回収額が、投資期間中の金利変動の影響を受けにくい」という意味があります。
例えば、クーポンのない債券、つまりゼロクーポン債のデュレーションは、残存期間といつも同じです。7.6年後にまとまったお金が必要であることがわかっていて、今日の財産のうち一定額をその時の支払のために安全に運用したいとします。おそらく、一番安全なのは、残存期間7.6年の割引国債を買うことでしょう。今日買って、7.6年間じっと持ち続ければ、日本政府が倒産(?)しない限り、必ず額面と同じ額が帰ってきます。購入してから7.6年後までの間に、金利がどうなろうが、関係ありません。
これは、デュレーションを使えば、投資期間とデュレーションが一致しているために、投資期間終了時の価格リスクが0になっているからです。
なお、このように、投資期間と関係が深い点を重視し、デュレーションはしばしば「年」という単位で呼ばれます。この文脈でのデュレーションは、将来の資金計画と、債券の元利払いを合わせるのに使います。
まとめ #
①金利に対する反応の大きさと②投資期間の目安の違いにはご注意ください。
①は、「現在の価格」に関するリスク、②は投資期間終了時の価値に関するリスクです。
例えば、デュレーション1の債券と、デュレーション7.6の債券を比べてみましょう。
①の意味では前者のリスクは非常に小さいですが、②の意味では、そうでもありません。
1年物の割引債を買うと、1年後には償還になり、まだ投資期間は6.6年残っていますから、償還金を再投資しなければなりませんが、その再投資するときの金利は、当初投資をするときにはまだわかりません。不確実であり、リスクがあります。
一方、後者、デュレーション7.6の債券は、②の意味ではリスクのない(または非常に小さい)投資ですが、①の意味では、金利が変動するとき、その7.6倍もの価格変動をするわけで、非常にリスクの大きい債券であるといえます。
したがって、デュレーションを使って債券の運用を考えるときには、ご自分が何をしたいのか、ということを考えて、正しい使い方をしなければなりません。
最後に債券の特徴とデュレーションについて、一般的な関係をリストします。
- デュレーションは通常残存期間以下である。また、ゼロクーポン債のデュレーションは、残存期間に等しい。
- 残存期間が長い債券のデュレーションは大きく、残存期間が短い債券のデュレーションは小さい。
- クーポンレートが高い債券は残存期間が同様のクーポンレートが低い債券よりもデュレーションが小さい。
- フローター(変動利付債)のデュレーションは、次のクーポンを受け取るまでの時間の長さに等しい。
筆者:P太郎 (某大手運用会社勤務。専門はリスクマネジメント。 )