企業型確定拠出年金(企業型DC: Defined Contribution plan)は、企業が従業員のために掛金を拠出し、従業員がその掛金を自ら運用する年金制度です。運用成果に応じて将来受け取る年金額が変動するため、従業員が自分で資産運用を行い、リスクを管理しながら資産を形成していくのが特徴です。これは、iDeCo(個人型確定拠出年金)と同じく、運用責任が加入者にある仕組みです。
1. 企業型確定拠出年金の仕組み #
企業型確定拠出年金は、次のような流れで運用されます:
企業が掛金を拠出 #
企業が従業員のために一定額の掛金を毎月拠出します。従業員はこの掛金を自分で管理し、運用先を選択します。
従業員が運用する #
従業員は、企業が提示する複数の運用商品の中から商品を選び、掛金をどの金融商品で運用するかを決定します。運用商品には、投資信託、定期預金などがあり、それぞれリスクとリターンが異なります。企業により用意されている投資信託や定期預金などの種類は異なります。
運用成果が年金に反映 #
運用結果によって将来受け取る年金額が決まります。運用が成功すれば年金額は増えますが、運用がうまくいかなければ減るリスクもあります。
2. 企業型確定拠出年金の特徴 #
a. 企業が掛金を負担 #
企業が従業員のために掛金を負担します。掛金の額は企業ごとに異なりますが、従業員自身が掛金を追加で負担することもできる場合があります(マッチング拠出と呼ばれます)。
b. 運用商品の選択肢 #
企業が提供する運用商品は、複数の選択肢があります。これにより、従業員は自分のリスク許容度に応じて、リスクの高い商品(株式投資信託など)やリスクの低い商品(定期預金など)を選ぶことができます。
実際には、運営管理機関から提供されるオンラインのサイトで、商品を選択したり、変更したり、投資割合を変更したりといったことを自分で行います。
c. 運用結果に基づく年金額 #
確定給付年金(DB)と異なり、企業型DCでは、将来受け取る年金額は運用成果次第です。つまり、従業員が積極的に運用成果を高めるか、リスクを避けて安全に資産を守るか、運用の仕方により大きく差が生じます。
d. 税制優遇措置 #
企業型DCも税制優遇があり、企業が拠出する掛金は従業員の給与として課税されず、運用期間中の利益も非課税です。また、年金として受け取る際には、税制上の控除(退職所得控除や公的年金等控除)があります。
3. 企業型確定拠出年金のメリット #
a. 企業による掛金拠出 #
企業が掛金を負担するため、従業員の経済的な負担がありません。加えて、企業によっては、従業員が自ら追加で掛金を拠出できる「マッチング拠出」という仕組みを採用している企業もあります。
b. 運用の自由度 #
従業員が運用先を選ぶ自由があり、自分のリスク許容度や将来の資産計画に応じた運用が可能です。リスクの高い投資信託や株式を選ぶことでリターンを追求したり、リスクの低い預金を選んで安全性を確保したりすることもできます。また、運用途中で商品を変更したり、資金の配分比率を変更することも可能です。
c. 税制上のメリット #
企業型確定拠出年金は、iDeCoと同様に、掛金の拠出、運用益、受け取り時に税制上の優遇があります。掛金は給与に課税されず、運用益も非課税となります。また、受け取り時には退職所得控除や公的年金控除が適用され、節税効果が得られます。
4. 企業型確定拠出年金のデメリット #
a. 運用リスク #
企業型DCでは、従業員自身が運用の責任を負うため、運用次第では元本割れのリスクがあります。株式市場の変動や商品選択の失敗により、拠出した掛金が減少する可能性もあります。
b. 投資の知識が必要 #
自ら運用商品を選び、リスクとリターンを管理する必要があるため、一定の投資知識が求められます。特に、初めて投資に触れる従業員にとっては、商品の選択の仕方や運用の仕方が難しく感じるかもしれません。
c. 長期の資金拘束 #
iDeCo同様、企業型確定拠出年金も60歳になるまで原則として資金を引き出すことができません。短期的な資金ニーズには対応できないため、長期的な資産形成を目的とする必要があります。
5. マッチング拠出とは? #
企業型確定拠出年金には「マッチング拠出」と呼ばれる仕組みがあり、これは企業が拠出する掛金に加えて、従業員も自ら掛金を追加で拠出できるものです。これにより、従業員はより多くの資金を運用し、老後資産をさらに増やすチャンスがあります。ただし、企業の掛金を超えない範囲で従業員が拠出できるため、掛金の上限は企業ごとに異なります。
6. 受け取り方法 #
企業型確定拠出年金で運用した資産は、退職時や定年後に次のような方法で受け取ることができます:
– 一時金として受け取る(退職所得控除が適用)
– 年金として分割して受け取る(公的年金控除が適用)
また、退職時に他の企業に転職する場合や、自営業になる場合には、iDeCoに移管して引き続き運用することも可能です。
企業型確定拠出年金まとめ
企業型確定拠出年金は、企業が拠出した掛金を従業員が運用し、老後資産を形成するための制度です。税制優遇や掛金の企業負担などのメリットがある一方、運用の知識が必要であり、元本割れのリスクがある点にも注意が必要です。従業員自身が運用をコントロールすることで、個々のライフプランに合わせた資産形成ができることが、この制度の大きな特徴です。