株式ロング・ショート戦略 #
株式ロング・ショート戦略は、ファンドの運用手法の一つで、株式市場において、値上がりが期待できる割安な銘柄(過小評価された銘柄)を買い、同時に値下がりが予想される割高な銘柄(過大評価された銘柄)を空売りします。株式を買うことを「ロングポジションを取る」と言い、売ることを「ショートポジションを取る」と言います。この戦略を組み合わせることで、ロング・ショート戦略と呼ばれます。
一般の株式投資信託では、割安と判断した銘柄を購入し、その株価が上昇した際に売却して利益を得ます。一方、ロング・ショート戦略では、値上がりだけでなく、割高と判断した銘柄を空売りし、その株価が下落した際に買い戻すことで、下落局面からも利益を得ることが可能です。これにより、相場の上下に対応し、より柔軟な運用ができると考えられています。
具体的な仕組み #
- ロングポジション(買い)
ファンドマネージャーは、割安で成長が期待できると判断した株式を購入します。株価が上昇すると、その差額で利益を得ます。 - ショートポジション(売り)
ファンドマネージャーは、割高だと判断される株式を借りて売却します。株価が下落すると、安い価格で買い戻し、その差額で利益を得ます。株価が上昇すると損失が生じるため、リスクが高くなる可能性もあります。
株式ロング・ショート戦略のメリット #
ロングとショートを同時に持つことで、相場の上下どちらにも対応でき、市場全体の大きな変動(ベータリスク)に対して、相対的に安定したリターンを目指すことができます。例えば、株価が全体的に下落しても、ショートポジションの利益でその損失を相殺できる可能性があります。これにより、投資全体のボラティリティ(変動リスク)を抑えつつ、安定した運用が期待されます。
株式ロング・ショート戦略のデメリット・注意点 #
市場全体の動きに対するリスク: ロング・ショート戦略では、個別銘柄の動きに依存するため、予測が外れた場合には、ロングとショートの両方で損失が生じる可能性があります。市場全体の動きが予測と異なる場合も、両方で損失が発生するリスクがあります。
取引コスト: ショートポジションでは、借株料や売却コストがかかるため、通常の買いのみの投資よりもコストが高くなりがちです。さらに、ショートポジションでは、株価の上昇が続くと損失が無限に拡大するリスクもあります。
高度な運用技術が必要: ロング・ショート戦略には、個別銘柄ごとの動きだけでなく、相場全体の動きを的確に見極め、ロングとショートのバランスを適切に取る運用技術が求められます。リスク管理が重要であり、経験豊富なファンドマネージャーによる慎重な運用が必要です。
ショートポジションのリスク: 空売りは株価の上昇が続くと、理論上無限大の損失が発生する可能性があり、ロングポジションと比べリスクが高い点に注意が必要です。
ロング・ショート戦略のファンドのリスク #
ロングショート戦略は、適切に運用されれば市場の上下に関わらず利益を狙える手法ですが、上手くいかなかったり、運用残高が減少したりして、繰上償還になったファンドも数多くありました。ロング・ショート戦略のファンドに投資する際にいは、過去の運用成績を確認することや、十分に長い運用実績があること、運用残高が十分大きいことを確認することが大切です。
株式ロング・ショート戦略を活用する投資信託 #
株式ロング・ショート戦略はヘッジファンドが活用する代表的な運用手法の一つです。しかし、投資信託の運用においても、これまでの規制緩和により空売りを含む金融派生商品のヘッジ目的以外での利用が可能となったことから、ロング・ショート戦略を採用した投資信託が運用されています。なお、ロング・ショート型の投資信託は、投資信託協会の商品分類において「特殊型」に分類され「投資家に対して注意を喚起する必要と思われる特殊な運用手法の記載がある」とされています(2024年9月末現在)。
スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド #
独立系運用会社のスパークス・アセット・マネジメントが運用する日本株を対象としたロング・ショートファンド。「勝ち組」・「負け組」の二極化現象を投資機会と捉えて運用。すでに20年以上の運用実績があります。
メガトレンド・ロング・ショート・ファンド #
日本を含む世界の株式を対象に、メガトレンド(世界の長期的な構造変化)を背景とした複数のテーマを基にロング/ショート戦略を構築するファンド。運用会社は大和アセットマネジメント。
日本株ロングショート戦略ファンド #
日本株を対象としたロング・ショート戦略のファンド。原則として、ロング・ポジションで100銘柄~200銘柄程度、ショート・ポジションで50銘柄~100銘柄程度を保有することでリスク低減を図る。運用会社はファイブスター投信投資顧問。
ブラックロック・アメリカ大陸ロング・ショート・ファンド(ダイワ投資一任専用) #
アメリカ大陸株式(米国、カナダ、およびラテンアメリカ諸国の株式)を対象としたロング・ショート・ファンド。独自の計量モデルを活用し、ロングショート戦略によりポートフォリオを構築する。運用会社はブラックロック・ジャパン。
株式ロング・ショート戦略のまとめ #
株式ロング・ショート戦略は、割安な株を買い(ロング)、割高な株を空売り(ショート)することで市場の上下にかかわらず利益を狙う運用手法です。相場の変動リスクを抑えた安定したリターンが期待できますが、空売りの無限損失リスクや取引コストが高く、高度な運用技術が必要です。慎重なファンド選びと過去の実績確認が重要です。