ETFの受益権の併合とは、複数の受益権を一つにまとめることを言います。例えば、2口の口数を1口にまとめることです。分割(split)の反対の行為です。英語では、リバース・スプリット(reverse split)と呼びます。米国のETFではよく行われています。
併合の影響 #
併合によりETFの価格は上昇し、発行済みの総口数は減少します。時価総額は変わりません。投資家が保有しているETFの合計価値も変わりません。
例えば、ETFが、1対2の比率で併合が行われた場合、1口当たり価格は2倍となり、発行済総口数は半減します。1口=10ドルのETFを2口保有していた人であれば、保有価値は20ドルですが、1対2の比率で併合が行われた場合、保有口数は1口になり、1口当たりの価格は20ドルとなります(市場の値動きにより変動はあります)。保有価値は20ドルのままです。
なお、併合により1口当たりの価格が上昇することで、投資家に取っては買い難くなる可能性はあります。
<ETFの併合のイメージ・1対5での併合>
保有口数 | 基準価額 | 保有価値合計 | |
---|---|---|---|
併合前 | 1,000 | $10.00 | $10,000.00 |
併合後 | 200 | $50.00 | $10,000.00 |
併合の理由 #
併合の理由はETFにより異なりますが、上場廃止の回避がその一つとして挙げられます。ETFの価格が下がりすぎて、最低価格要件を満たせず、取引所から上場廃止になるリスクがある場合に併合が行われることがあります。例えば、米国のNASDAQ市場では、最低株価要件(Minimum Bid Price Requirement)があり、一定期間(通常30連続取引日)にわたって1口当たりの価格が1ドル未満になると、上場廃止の対象となります。
また、併合によりETFの価格が高くなることで、ペニー株(極めて低い株価の株式やETF)をポートフォリオに組み入れない、あるいは投資方針により組み入れることができないような機関投資家などを惹きつけることができるようになります。
併合の例 #
米国のETFでは、ETFの受益権の併合は比較的頻繁に実施されていますが、日本では2017年に実施された三菱UFJアセットマネジメントの「国際のETF VIX短期先物指数(銘柄コード:1552」が併合を実施しています。同ETFは200:1 の比率で併合が実施され、この併合により200口の受益権が1口となりました。
三菱UFJアセットマネジメント(併合当時は三菱UFJ国際投信)は併合の理由を次のように公表しています。
適正な商品性の維持のため、本ETFの受益権併合を実施いたします。
本ETF の基準価額は当初設定時には 13,092円でしたが平成29年5月19日時点で114円となっております。基準価額が低水準であることで、基準価額1円の変化与える影響が相対的に大きくなっております。本ETFの適正な商品性の維持および投資家の皆さまがより適正・円滑な形でお取引を行っていただけるよう受益権の併合を行うものです。
なお、「国際のETF VIX短期先物指数(銘柄コード:1552」は、2024年2月に上場廃止されました。
ETFの受益権の併合まとめ
ETFの受益権の併合とは、複数の受益権を1つにまとめることで、価格が上昇し、発行済み口数が減少しますが、全体の価値は変わりません。主な理由は、上場廃止の回避や機関投資家の関心を引き付けるためです。日本では稀に行われ、例として「国際のETF VIX短期先物指数」が挙げられます。このETFは基準価額の低水準維持を理由に200:1の比率で併合されましたが、最終的に上場廃止となりました。