プロ向け投資運用業 #
プロ向け投資運用業とは、他者の資金や財産の運用を業務として行なう投資運用業の中で、一般の個人投資家などを対象とせず、「適格投資家」だけを対象とした投資運用業のことを指します。つまり投資運用業者には、「プロ」だけを対象としている運用会社と「素人(アマ)」も対象としている運用会社が存在し、前者をプロ向け投資運用業者と呼ぶというわけです。正式には適格投資家向け投資運用業を行なう金融商品取引業者となります。
プロ投資家とは? #
では、どんな人が適格投資家=プロ投資家なのでしょうか。金融商品取引法において、プロとして扱われる「適格投資家」は次のように定義されています。
「適格投資家」とは? #
適格投資家=特定投資家、その他その知識、経験及び財産の状況に照らして特定投資家に準ずる者として内閣府令で定める者又は金融商品取引業者と密接な関係を有する者として政令で定める者。
上記の「特定投資家」は次のように定義されています。
特定投資家(一般投資家への移行不可) #
- 適格機関投資家
- 国
- 日本銀行
特定投資家(一般投資家への移行可能) #
- 特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(いわゆる「特殊法人 」及び「独立行政法人」)
- 投資者保護基金
- 預金保険機構
- 農水産業協同組合貯金保険機構
- 保険契約者保護機構
- 特定目的会社
- 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
- 取引の状況その他の事情から合理的に判断して資本金の額が5億円以上であると見込まれる株式会社
- 金融商品取引業者又は特例業務届出者である法人
- 外国法人
さらに、上記の「適格機関投資家」は有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者と定義されています。具体的には、銀行、信用金庫、生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社、信託銀行、年金基金など、顧客から預かったお金の運用を業務として行っている法人や団体を指します。
つまり、プロ投資家は、機関投資家または機関投資家並みの知識と経験、財産のある投資家ということになります。
個人が特定投資家に準ずる者として認められるためには、次の要件を満たしている必要があります。
- 1年以上の取引経験があり、取引状況などから合理的に判断して、
- 純資産額3億円以上
- 投資性のある金融資産3億円以上
と見込まれる個人。
- または、任意組合・匿名組合などの運営者である個人
プロ向け投資運用業誕生の背景 #
このプロ向け運用業は、平成23年5月25日に公布された「資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律」によって誕生した新しい制度です。
一般の投資運用業は、個人投資家にもサービスを提供することから、投資家保護の観点からさまざまな規制の対象となってきました。しかし、相手がプロであれば、プロ同士の契約となり、厳しい規制の対象外としてもよいのではないか、プロ向けに限定することでより柔軟なサービスが提供できるようになるのではないかという意見が金融業界の中にありました。
また、このような制度を設けることで、投資運用業の立ち上げが促進され、それが日本の資本市場及び金融業の基盤強化にもつながるという考えもあり、法律が改正され、同改正に係る政令・内閣府令等が2012年4月1日に施行されました。これにより、プロ向け投資運用業については登録要件も一部緩和され、最低資本金等の要件が、これまでの5000万円以上から1000万円以上に引き下げられました。取締役会が不要であり、運用財産の総額の上限は200億円以下と規制されています。
プロ向け投資運用業のまとめ #
プロ向け投資運用業とは、一般の個人投資家ではなく、知識や経験が豊富な「適格投資家」だけを対象とする投資運用業です。適格投資家には、金融機関や特定の法人が含まれ、特定の基準を満たす個人も該当します。プロ同士の契約として、一般向けより規制が緩和されており、資本金要件の引き下げや取締役会不要などの特徴があります。この制度は、資本市場の基盤強化と投資運用業の促進を目的として導入されました。