グループ株式ファンド #
特定の企業グループの株式だけに的を絞って投資する投資信託のことを一般に、「グループ株式ファンド」と呼びます。
最初に登場したグループ株式ファンドは、トヨタアセットマネジメント株式会社(現在は三井住友DSアセットマネジメント)が2003年11月に設定した「トヨタグループ株式ファンド」でした。「トヨタグループ株式ファンド」は、トヨタ自動車とそのグループ会社に的を絞って投資するファンドです。同ファンドは、2019年にファンド名を「トヨタグループ株式ファンド」から「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」に変更していますが、運用は継続しています。
特化型運用 #
投資信託は、一般的には、数百銘柄、多いものでは数千銘柄など、多くの株式や債券等に分散投資することでリスク低減が図られている投資商品ですが、例外として、限られた数の銘柄に集中投資が行われる投資信託があり、そのような投資信託を「特化型運用ファンド」と呼びます。そして、このグループ株式ファンドはすべて特化型運用ファンドに分類されます。
投資信託協会の規則では、株式や債券であれば1銘柄当たりの組入比率がファンド全体の純資産総額の10%を超えてはいけないと定めており、超過した場合は、比率以内となるよう調整を行なわなければなりません。
しかし、このルールにも例外が認められており、例外的に特定の銘柄に集中的に投資を行う投資方針のファンドでは、交付目論見書の表紙に「特化型運用ファンド」と明記する、交付目論見書の「ファンドの目的・特色」の欄に支配的な銘柄が存在することを明記するなどの措置を講じることで設定・運用が可能となっています。この場合、1銘柄当たりの組入比率の上限は35%とされます。ここでいう支配的な銘柄は、1銘柄の構成比率が10%を超える銘柄のことを意味しています。
さらに、この35%の上限を超えて、特定の銘柄を組み入れる方針の投資信託も例外として認められており、これらのファンドにおいては、ファンドの名称にその銘柄の名称が明確に付されていることが条件とされています。
グループ株式ファンドのリスク #
グループ株式ファンドのリスクとしては、集中投資によるリスクが挙げられます。投資対象となる企業は、同じ業界に属する企業が多く、そのために例えば、トヨタグループ株式ファンドであれば自動車業界、ソフトバンクグループ株式ファンドであれば、IT・インターネット業界の影響を、組入企業全体が強く受ける傾向にあり、分散投資効果が低いといえます。また、上限は設けられているものの、一銘柄当たりの投資配分が一般の投資信託と比較すると大きくなりがちであり、最大組入銘柄の株価の影響をファンド全体がより強く受ける傾向にあります。
現在運用されているグループ株式ファンドの例(2024年9月現在) #
トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド(特化型運用) #
トヨタ自動車株式会社およびそのグループの株式に投資するファンド。トヨタ自動車株式の投資比率を約50%までとして、残りの約50 %を、グループ会社株式の各銘柄の時価総額に応じた比率で投資します。
ソフトバンク&SBIグループ株式ファンド(特化型運用) #
ソフトバンクグループ株式会社、SBIホールホールディングス株式会社およびそれらのグループ関連企業の株式するファンド。原則として、銘柄の組入比率は、組入銘柄の時価総額に比例して決定します。1銘柄の組入比率は、100%を主要投資先の数で除した値を概ねの上限とします。
日本製鉄グループ株式オープン(特化型運用) #
日本製鉄株式会社およびそのグループ会社のうち、原則として東証プライム市場および東証スタンダード市場に上場されている株式の中から、流動性を勘案した銘柄に投資し、日本製鉄およびそのグループ会社の銘柄群全体の動きを捉えることを目標に運用する。日本製鉄株式の投資比率を約50%までとし、残りの約50%をグループ会社の株式の各銘柄の時価総額に応じた比率で投資します。
日本郵政株式/グループ株式ファンド(特化型運用) #
日本郵政株式会社およびそのグループ会社の株式に投資を行ない、信託財産の成長をめざす。2024年9月現在、組入銘柄は日本郵政株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険の3銘柄。
グループ株式ファンドのまとめ #
グループ株式ファンドは、特定の企業グループの株式に集中投資する投資信託で、トヨタグループやソフトバンクグループなどの例があります。このファンドは「特化型運用ファンド」に分類され、分散投資効果が低いため、業界や主要銘柄の株価変動の影響を受けやすいリスクが伴います。