まずは、投資信託の費用の代表格である信託報酬について考えましょう。
信託報酬 #
信託報酬は、ファンドの運用等の手数料として投資家が負担する費用です。投資信託の信託財産から支払われます。ファンドの信託財産(純資産総額)にとってはマイナス要因です。ファンドを保有している間はずっと負担し続けることになります。
信託報酬は、投資家が保有するファンド資産額に対して何パーセンテージという形で決まっていて、ファンドの目論見書に明記されています。
投資信託によってこの信託報酬の率は異なります。インデックスファンドの信託報酬率は、アクティブ運用のファンドの信託報酬率に比べて低く設定されており、それがインデックスファンドを利用するメリットの一つでもあります。
投資信託協会の「投資信託の主要統計2024年8月」によると、2024年8月現在、インデックスファンドの信託報酬率の平均が0.36%であるのに対し、アクティブファンドの信託報酬率の平均は1.11%です。
信託報酬率の違いの影響 #
信託報酬率の違いが、ファンドの資産額にどのような影響を与えるかを見てみましょう。
仮に、組み入れている資産(株式や債券など)の価格に変化がなかった場合(元本が変わらなかった場合)、つまり運用益も運用損も発生していない状況で、信託報酬の違いが、どのような影響をファンドの資産額に与えるのでしょうか。
次の表は、異なる信託報酬(1.8%、1.5%、1.0%、0.5%、0.2%)のファンドに、各々100万円を投資した場合に、投資額が20年間でどのように変化するかを示しています。
信託報酬率 | 1.80% | 1.50% | 1.00% | 0.50% | 0.20% |
---|---|---|---|---|---|
1年後 | 982,000 | 985,000 | 990,000 | 995,000 | 998,000 |
2年後 | 964,324 | 970,225 | 980,100 | 990,025 | 996,004 |
3年後 | 946,966 | 955,672 | 970,299 | 985,075 | 994,012 |
4年後 | 929,921 | 941,337 | 960,596 | 980,150 | 992,024 |
5年後 | 913,182 | 927,217 | 950,990 | 975,249 | 990,040 |
6年後 | 896,745 | 913,308 | 941,480 | 970,373 | 988,060 |
7年後 | 880,604 | 899,609 | 932,065 | 965,521 | 986,084 |
8年後 | 864,753 | 886,115 | 922,745 | 960,693 | 984,112 |
9年後 | 849,187 | 872,823 | 913,517 | 955,890 | 982,143 |
10年後 | 833,902 | 859,730 | 904,382 | 951,110 | 980,179 |
11年後 | 818,892 | 846,834 | 895,338 | 946,355 | 978,219 |
12年後 | 804,151 | 834,132 | 886,385 | 941,623 | 976,262 |
13年後 | 789,677 | 821,620 | 877,521 | 936,915 | 974,310 |
14年後 | 775,463 | 809,296 | 868,746 | 932,230 | 972,361 |
15年後 | 761,504 | 797,156 | 860,058 | 927,569 | 970,416 |
16年後 | 747,797 | 785,199 | 851,458 | 922,931 | 968,476 |
17年後 | 734,337 | 773,421 | 842,943 | 918,316 | 966,539 |
18年後 | 721,119 | 761,820 | 834,514 | 913,725 | 964,606 |
19年後 | 708,139 | 750,392 | 826,169 | 909,156 | 962,676 |
20年後 | 695,392 | 739,136 | 817,907 | 904,610 | 960,751 |
結果は、信託報酬が1.8%のファンドに投資した100万円は、10年後には833,902円に減少し、20年後には695,392円へと3割以上も減少してしまいます。一方で、信託報酬が0.2%のファンドの場合は、100万円は980,179円に減少し、20年後でも960,751円に減少しますが、減少額は1.8%のファンドに比べるとずっと少なくてすみます。
その差は、1年間では1万6,000円にすぎませんが、10年間では146,277円に拡大し、20年では265,359円にまで拡大します。
実際の投資においては、運用益により投資残高は上下しますので、一方的に投資元本が減り続けるわけではありませんが、信託報酬(費用)の影響がいかに大きいかは御理解いただけたと思います。わずか1%程度でも、長期では大きな違いをもたらすのです。同じインデックスファンドでも、信託報酬率には差がありますし、アクティブファンドでも同様にファンドにより信託報酬率は異なります。ファンドを選択する際には、最も注意して確認すべきポイントです。
信託報酬の運用成績への影響のまとめ #
信託報酬は、ファンド運用にかかる費用として投資家が負担し、長期的に資産額に大きな影響を与えます。信託報酬率が高いほど資産減少のペースが速くなり、特に長期投資ではその影響が顕著です。例えば、信託報酬が1.8%のファンドでは20年間で元本の約3割が減少する一方、0.2%のファンドでは減少幅がわずかに抑えられます。信託報酬の低いファンドを選ぶことは、長期投資の成果を高める重要な要素です。