高配当株式ファンド #
株式投資から得られる収益には値上がり益(キャピタルゲイン)と配当収入(インカムゲイン)がありますが、後者の配当収入を安定的に獲得することを主な目的として投資・運用される株式ファンドを一般に高配当株式ファンドと呼びます。
また、高配当株式ファンドは、短期的な株価の値動きよりも、配当収入と安定的な成長を重視する投資スタイルを維持します。したがって、一度ポートフォリオが構築されると、原則としてバイ・アンド・ホールドといって、組入銘柄の売買を頻繁に行なわずに長期的に保有し続けるという方針がとられることが一般的です。このため、キャピタルゲインの獲得を目指して、組入銘柄の売買を積極的に行なうファンドと比較すると、ファンドが負担する株式売買手数料等のコストが低く抑えられると考えられています。
高配当株式ファンドは、利回り株ファンド、株式インカムファンド、またはインカム・ストック・ファンドなどと呼ばれることもあります。米国ではインカム・エクイティ・ファンド(Income-Equity Funds)と呼ばれています。
高配当株式ファンドの仕組み #
高配当株ファンドは、①予想配当利回りが市場平均と比較して高い銘柄、②過去において安定的に高い配当が支払われてきた銘柄、③株主還元に対する姿勢の積極的な企業の株式などに投資を行います。高い配当収入を獲得し、それを投資家に分配金として還元します。これにより、投資家は分配金を定期的に受け取ることができるため、インカムゲインを目的とした投資家に適しているファンドです。
①予想配当利回りが高い銘柄 #
東京証券取引所のプライム市場の配当利回りは次のグラフのように2010年以降は、1.5%から2.5%程度で推移しています。高配当株式ファンドでは、この平均値よりも高い銘柄を投資対象とします。
②安定的に高い配当が支払われてきた銘柄 #
日本の株式の中には、今期一時的に配当利回りが高くなったというのではなく、安定的に高い配当を支払ってきた銘柄があります。高配当株式ファンドでは、これらのように安定的に高い配当が支払われてきた銘柄を投資対象とします。
③株主還元に対する姿勢の積極的な企業 #
株主還元に対する姿勢の積極的な企業とは、安定的な配当の支払いに加えて、増配を行う会社、自社株買いを行う会社、「利益の30%を配当に充てる」というような利益還元方針の明確な会社などです。
高配当株式ファンドの人気 #
配当に主眼を置いた株式ファンドの設定が目立つようになったのはこの2000年以降のことです。その背景には、日本銀行による低金利政策が継続する一方で、景気回復に伴い増配を実施する企業が増えたことで、投資家の配当への関心が高まったことがあるのではないでしょうか。
高配当株式ファンドのリスク #
高配当株式ファンドは、高い配当が安定して期待できる銘柄に投資することから、投資対象となる株式は成長株よりも割安株が多くなる傾向にあります。一般に、大型優良株のように、安定した配当支払いが継続的に行われてきた実績があり、かつ株価の上昇も期待できるような株式に投資されることが多いようです。公益株も高配当株ファンドがよく組み入れる銘柄です。このため、リスクは成長株ファンドよりも低いと考えられています。
高配当株式ファンドの投資対象 #
高配当株式ファンドが投資対象とする国や地域はファンドにより異なります。日本の高配当株に的を絞って投資するファンドもあれば、世界中の高配当株に分散投資するファンド、アジアやオセアニアといった地域を限定するファンドがあります。
海外の高配当株式に投資するタイプのファンドでは、比較的高い配当収入が期待できますが、一方で為替リスクが伴います。また、分配金が毎月支払われていても、一方で組入株式の値下がりにより基準価額が下落していたというのでは、トータル・リターンがマイナスになることもありますので、配当と基準価額の動向の両者に注意を払う必要があります。
また、配当利回りの高いリート(不動産投資信託)を投資対象に含めているファンドもあります。
日本の高配当株に投資するファンド #
- インデックスファンド日経平均高配当株50(奇数月分配型)
- 日興ジャパン高配当株式ファンド
- 日本高配当株フォーカス(マイルドジャパン)
- 日本高配当株フォーカス(プレミアジャパン)
海外の高配当株に投資するファンド #
- 北米高配当株ファンド(年2回決算型)
- ブラジル高配当株オープン(毎月決算型)
- フランクリン・テンプルトン・ブラジル高配当株ファンド(毎月分配型)
- フランクリン・テンプルトン・オーストラリア高配当株ファンド(年2回決算型)
- フランクリン・テンプルトン・オーストラリア高配当株ファンド(毎月分配型)
- フランクリン・テンプルトン・アメリカ高配当株ファンド(3ヵ月決算型)
- ニッセイ世界高配当株ファンド(年2回決算型)
- ダイワ・スイス高配当株ツインα(毎月分配型)
高配当株式ファンドのまとめ #
高配当株式ファンドは、安定した配当収入(インカムゲイン)の獲得を主目的とし、配当利回りが高い銘柄や株主還元に積極的な企業の株式に投資するファンドです。短期的な値動きよりも配当収入と長期的な成長を重視し、バイ・アンド・ホールド戦略を採用することが一般的です。日本国内外の高配当株に分散投資するファンドがあり、低金利環境下で人気が高まっていますが、為替リスクや基準価額の下落に注意が必要です。