MLPとは #
2013年頃からMLPを投資対象とするファンドが設定されるようになりました。このMLPとはどういう投資対象なのでしょう。
MLPとは、Master Limited Partnership(マスター・リミテッド・パートナーシップ)の略称で、米国における共同投資事業の形態の1つであるLP(リミテッド・パートナーシップ)のうち、総所得の90%以上を歳入法で定められたエネルギー・天然資源関連・不動産などの特定の事業から得ており、かつ、その出資持分がニューヨーク証券取引所やNASDAQなどの金融商品取引所に上場されているもののことをいいます。
米国におけるリミテッド・パートナーシップは無限責任を負うゼネラル・パートナーと一般投資家として出資し、有限責任を負うリミテッド・パートナーによって構成される組織形態を指します。リミテッド・パートナーは経営には参加できません。また、MLPでは、株式に相当するものをユニットと呼び、MLPのユニットを保有しているということは、リミテッド・パートナーであることを意味します。ユニットの保有者はユニット・ホルダーと呼ばれます。
米国歳入法で定められたエネルギー・天然資源関連事業には次が含まれます。
- 探査、開発、生産
- 採鉱
- 収集、処理
- 精製
- 圧搾
- 輸送(パイプライン、海上輸送、陸上輸送)
- 貯蔵、マーケティング、流通
なお、米国歳入法の上記規定については、IRSのSection7794(d)(1)等でご確認下さい。
米国の上場パートナーシップの業界団体であるEnergy Infrastructure Council (EIC)によると、2024年9月30日現在、約40のMLPが米国の取引所に上場しています。
MLPの魅力 #
1. 高い配当利回り #
MLPは、収益の多くをパートナーシップの形で投資家に分配する仕組みになっているため、通常は高い配当利回りを提供します。この点は、日本の不動産投資信託(REIT)に似ています。エネルギーインフラ事業(特にパイプラインや保管施設)など、安定した収益を生む資産を運営しているため、定期的なキャッシュフローが期待でき、その一部が投資家に高い配当として支払われます。
2. エネルギーインフラへの投資機会 #
MLPは主にエネルギー関連のインフラ企業に投資しているため、エネルギーセクターに参加する一つの手段となります。特に、パイプラインや貯蔵施設の運営は、エネルギー価格の変動に直接影響されにくいビジネスモデルであり、安定した収益をもたらします。石油や天然ガスの輸送に関わるMLPは、物理的なエネルギーの流れに依存しているため、商品価格に比べて収益の変動が少ないことが特徴です。
3. インフレーション対策 #
エネルギーインフラを運営するMLPは、長期的な契約を通じて収益を得ることが多く、その契約にはインフレーションに応じて料金が調整される仕組みが組み込まれていることがよくあります。そのため、インフレーションが上昇した場合でも、インフラ料金が引き上げられることで、インフレリスクをある程度ヘッジすることが可能です。
MLPを投資対象とする投資信託 #
2013年頃からMLPを投資対象とする投資信託が設定されるようになりました。2024年10月現在、次の6本のMLPファンドが運用されています。
MLPに投資する投資信託の例:
- インデックスファンドMLP(毎月分配型)
- インデックスファンドMLP(年1回分配型)
- 米国エネルギーMLPオープン(毎月決算型)為替ヘッジなし
- 米国エネルギーMLPオープン(毎月決算型)為替ヘッジあり
- MLP関連証券ファンド(為替ヘッジなし)
- MLP関連証券ファンド(為替ヘッジあり)
(2024年10月現在)
MLPに投資する投資信託のリスク #
MLPファンドのリスクにはいくつかの特徴的な要素があります。MLPは主にエネルギーインフラセクターに関連しており、投資家に高い配当利回りを提供する一方で、以下のリスクが伴います。
1. エネルギー価格変動リスク #
MLPの多くは、パイプラインや石油、天然ガスの輸送・保管といったエネルギーインフラに関連しているため、原油や天然ガスなどのエネルギー価格の変動が大きな影響を与えます。エネルギー価格が低迷すると、MLPの収益や配当金に悪影響を及ぼす可能性があります。
2. 規制リスク #
エネルギーインフラは規制が厳しい分野であり、政府や規制機関による新たな規制や税制の変更がMLPの運営コストや収益性に影響を与える可能性があります。特に、環境規制や税制改正によって、事業運営に支障が生じることがあります。
3. 金利リスク #
MLPは一般的に高い配当利回りを提供するため、投資家にとって金利リスクが重要な要因となります。金利が上昇すると、投資家はMLPの高配当利回りに対する魅力が低下し、価格が下落することがあります。また、MLPはしばしば多額の借入金を抱えているため、金利の上昇は借入コストの増加につながり、利益を圧迫するリスクもあります。
4. 流動性リスク #
MLPは、取引市場での流動性が低い場合があり、大口の売買が価格に影響を与えることがあります。また、MLPが関連する市場自体が小さいため、流動性が限られ、短期間での売買が困難になることもあります。
5. 集中リスク #
MLPは特定のセクター、特にエネルギーセクターに集中して投資されるため、セクター全体の経済状況や業界の変化に大きく影響されます。エネルギーインフラ以外に分散が難しいため、ポートフォリオ全体としてリスクが高くなる可能性があります。他の特定の業種やテーマに的を絞った投資信託と同様に、集中投資によるリスクがあることを念頭に置くことが大切です。
MLPのまとめ #
MLP(Master Limited Partnership)は、主に米国でエネルギー・天然資源関連の事業を行う企業が、上場した有限責任事業組合の形態で提供する高配当の投資対象です。MLPはエネルギーインフラへの投資機会とインフレ対策としての魅力がありますが、エネルギー価格や金利、規制などのリスクを伴います。