モメンタムファンド #
ヘッジファンドを中心に、米国の投資信託や一部の日本の投資信託でも利用される投資戦略の一つに「モメンタム」があります。モメンタム(momentum)とは「勢い」「弾み」という意味の英語で、モメンタムファンドは、企業の収益、または株価、あるいは両者の成長が加速している銘柄に投資します。
モメンタムファンドは、成長が加速している間、株価の上昇が加速している間は、その銘柄を保有し続け、成長の勢い(=モメンタム)が緩和し始めると売却します。そのため、モメンタムファンドでは、モメンタムの変動を反映して、比較的短期的な銘柄の入れ替えが行われる傾向にあります。
モメンタムファンドの特徴 #
モメンタムファンドは、通常は、業種配分やセクター配分にはこだわりません。一般に、成長企業が中小型株に多いことから、モメンタムファンドもこういった銘柄への投資が多くなるため、一般のグロースファンドよりも、値動きが大きくなる傾向があります。また、ハイテクや通信などの一部のセクターに投資が集中しやすいという傾向も持ち合わせています。
また、モメンタムファンドのポートフォリオは比較的頻繁にリバランスされます。これは、トレンドが変化した際に迅速にポジションを調整するためであり、機動的に新たに勢いを増した(モメンタムの上昇した)銘柄に移行します。
モメンタムファンドの種類 #
モメンタムファンドにはいくつかの種類がありますが、代表的なものとして「プライス・モメンタム」と「収益成長モメンタム」があります。
プライス・モメンタム #
株価の動きを重視したモメンタムファンドでは、プライス・モメンタムと呼ばれる一定期間前の終値と当日の終値の差額や変化率といったテクニカル指標を利用し、株価の変動のモメンタム(勢い)を判断します。この時、5日から30日程度のモメンタム指標が利用されることが多いと言われています。
収益成長モメンタム #
一方、収益成長のモメンタムを重視するファンドでは、売上増加率、利益増加率、ESPモメンタム(1株当たり利益の変化率)などが利用されます。これらを利用した評価を業績モメンタム(アーニング・モメンタム)評価と呼びます。また、収益成長が加速している企業だけでなく、アナリストによる業績予想を継続的に上回る企業、あるいはアナリストによる業績の上方修正が定期的に実施される企業も、モメンタムファンドが注目する点です。
モメンタムファンドの例 #
モメンタム戦略を採用しているファンドには、ヘッジファンド、ミューチュアル・ファンド(米国の投資信託)、ETFなどがありますが、日本の投資信託でも採用されています。
- ダイワDBモメンタム戦略ファンド(為替ヘッジなし)や・ダイワDBモメンタム戦略ファンド(為替ヘッジあり)・・・両ファンドは、ドイツ銀行が開発したDBモメンタム・アセット・アロケーター指数という指数の動きを反映した投資成果を目指します。運用会社は大和アセットマネジメントです。
- iShares MSCI USA Momentum Factor ETF (MTUM)・・・アメリカ市場のモメンタム銘柄に投資するETFです。MSCI USA Momentum Indexに連動し、最近の株価パフォーマンスが良好な銘柄に重点を置いています。運用会社はブラックロックです。
- Invesco Dorsey Wright Momentum ETF (PDP)・・・Dorsey Wright社が作成したモメンタムインデックス(Dorsey Wright Technical Leaders Index)に基づいて投資を行います。同インデックスは、米国の中でも相対的に強いモメンタムを持つ株式を選んで構成されています。
モメンタムファンドのまとめ #
モメンタムファンドは、収益や株価の成長が加速している銘柄に投資し、成長の勢いが弱まると売却する短期志向の投資戦略を採用したファンドです。株価動向(プライス・モメンタム)や収益成長(収益モメンタム)を重視し、ポートフォリオを頻繁にリバランスする特徴があります。ハイテクや通信など特定セクターに投資が集中しやすく、値動きが大きい傾向があります。