一帯一路 #
一帯一路は、中国が主導する大規模な国際的経済プロジェクトで、正式には2013年に中国の習近平国家主席が提唱しました。この構想は、古代のシルクロードを現代版として再構築し、アジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ巨大な貿易・インフラネットワークを構築することを目的としています。中国では、Belt and Road Initiative: BRI）と呼ばれます。
このプロジェクトには、2つの主要なルートが含まれます。中国を起点として、中央アジア、ロシア、そしてヨーロッパを通りイタリアのベニスまでの陸路ルートはシルクロード経済ベルト「One Belt）」と呼ばれています。また、中国の泉州市からマラッカ海峡を通り、ケニアのナイロビを経てアテネ、そしてベニスに至る海上ルートは「21世紀海上シルクロード（One Road)」と呼ばれています。この壮大な経済圏構想は、中国が主導し、関係国や地域と緩やかな経済協力関係を構築することを目指した中国の国家的戦略です。
一帯一路の現状については、Belt and Road Portal で確認できます。
一帯一路の構成要素 #
一帯一路は、次の2つの主要な構成要素から成り立っています。
1. 一帯（シルクロード経済ベルト）: 主にユーラシア大陸を横断する陸上の貿易ルートで、中国と中央アジア、ヨーロッパを結ぶことを目的としています。
2. 一路（21世紀海上シルクロード）: 中国から東南アジア、南アジア、アフリカ東岸、そしてヨーロッパへと続く海上貿易ルートを発展させ、海上貿易の強化を目指しています。
一帯一路の目標 #
一帯一路には、以下のような目標があります。
- インフラ整備: 高速鉄道、港湾、道路などの建設を通じて、各国の貿易と経済成長を促進する。
- 貿易の拡大: 参加国間の貿易と投資を強化する。
- エネルギー供給の強化: エネルギーインフラの整備と供給の安定化を目指す。
- 文化交流: 参加国同士の文化的・人的交流を促進し、結びつきを強化する。
一方で、一帯一路はその拡大する影響力により、一部の国や国際社会からは中国の影響力拡大を狙った地政学的戦略だと見なされることもあり、借金外交などに関する懸念も出されています。
一帯一路に投資するETF #
「一帯一路」をのことを英語に訳すと、One Belt One Roadとなります。その略称としてOBORが使われることがあります。
このOBORをティッカーコードとするETFが、ニューヨーク証券取引所ARCAに上場している「KRANESHARES MSCI ONE BELT ONE ROAD INDEX ETF (OBOR)」です。
KRANESHARES MSCI One Belt One Road Index ETFは、MSCI Global China Infrastructure Exposure Indexをベンチマークとして、同指数への連動を目指すETFです。設定されたのは2017年9月7日で、経費率は0.79%（年）（2024年10月現在）。運用・管理会社はKrane Funds Advisors, LLC https://kraneshares.com/obor/です。
KRANESHARES MSCI One Belt One Road Index ETFのチャート→https://www.nyse.com/quote/ARCX:OBOR
MSCIグローバル中国インフラエクスポージャー指数 #
KRANESHARES MSCI One Belt One Road Index ETFのベンチマークである「MSCIグローバル中国インフラエクスポージャー指数（MSCI Global China Infrastructure Exposure Index）」は、先進国、新興国、そしてフロンティア市場に上場している企業の中から、中国のインフラ開発に大きく関わる企業のパフォーマンスを示すものです。この指数は、「一帯一路」プロジェクトに関連する特定の産業に属し、主に中国のインフラ事業から多くの収益を上げている企業を対象としています。2024年9月末現在、121銘柄で構成されています。
MSCIグローバル中国インフラエクスポージャー指数の国別内訳 #
中国の構成比率が46.08%と最も高く、次いで、シンガポール10.95%、クウェート9.34%の順となっています。
（データ出所：MSCI FactSheet、2024年9月）
MSCIグローバル中国インフラエクスポージャー指数のセクター別内訳 #
セクター別内訳では、資本財が30.15%で最も大きく、次いで、金融（21.89%）、素材（19.45%）の順となっています。
（データ出所：MSCI FactSheet、2024年9月）
一帯一路に投資するETFのまとめ #
一帯一路プロジェクトの成長ポテンシャルを取り込むことを目指す投資家にとって、一帯一路に投資するETF「OBOR ETF」は魅力的な選択肢となり得ますが、一帯一路に関わる国々は、政治的・経済的に不安定な地域が多く、政策の変更や外交関係の悪化がプロジェクトや投資に影響を与える可能性も十分考慮する必要があります。
