パラジウムETF #
パラジウムETFは、貴金属パラジウムの価格の動きに連動するように設計された上場投資信託(ETF)です。これにより、投資家はパラジウムを直接購入せずに、パラジウム市場の変動に投資することができます。
パラジウムの主な用途 #
パラジウムとはレアメタルの一つで、触媒(自動車用など)、産業製品(電子・電気材料・歯科用)、宝飾品などに利用されます。また、投資対象としても近年需要が増えています。
1. 自動車産業 #
- 触媒コンバーター:パラジウムの最大の用途は、自動車の排ガス浄化装置である触媒コンバーターです。特にガソリンエンジン車において、排ガス中の有害物質(特に一酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物)を無害なガスに変換する触媒として使用されています。これが世界的な自動車産業の需要に大きく影響し、パラジウム価格の変動要因となっています。
2. 電子産業 #
- コンデンサー:パラジウムは電子部品、特にセラミックコンデンサーの製造に使用されます。コンデンサーは、スマートフォン、コンピューター、家電製品など多くの電子機器に不可欠な部品です。
- 接点材料:高い導電性や耐腐食性を持つため、電気接点にも利用されています。
3. 化学産業 #
- 触媒:パラジウムは、化学反応を促進する触媒として多くの化学プロセスに利用されています。特に、石油精製やプラスチックの製造過程において、パラジウム触媒が使われています。
4. 歯科・医療 #
- 歯科材料:パラジウムは、耐食性や生体適合性が高いため、歯科用の金属合金として使用されます。特にクラウンやブリッジの素材として用いられることがあります。
- 医療機器:パラジウムはその特性から、特定の医療機器や外科用器具にも使われています。
5. ジュエリー #
- パラジウムは、プラチナと並んでジュエリーの素材としても使用されます。特に、ホワイトゴールドの合金材料として使われることが多く、耐久性が高い特徴を持っています。
6. 水素の精製と貯蔵 #
- パラジウムは、選択的に水素を吸収し、他のガスを通さない特性を持っています。このため、水素の精製や貯蔵システムにおいても使用されています。
7. 投資 #
- 金やプラチナと同様に、パラジウムは貴金属の一種として投資の対象にもなります。パラジウム地金やコイン、ETFなどを通じてパラジウム価格の上昇に投資する人もいます。
パラジウムETF #
パラジウムETFは、貴金属であるパラジウムの価格に連動するように設計されています。投資家から集められた資金でパラジウムが購入され、購入されたパラジウムはカストディアンと呼ばれる金融機関に保管されます。ただし、ファンドの形態やパラジウムの保管場所、ベンチマーク、現物との交換の可否はファンドによって異なります。
2024年10月末現在、日本国内の取引所には「純パラジウム上場信託(現物国内保管型)」(銘柄コード:1543)と「WisdomTreeパラジウム上場投資信託」(銘柄コード:1673)の2本のETFが上場しています。
純パラジウム上場信託(現物国内保管型) #
「純パラジウム上場信託(現物国内保管型)」は、初の国内組成による内国商品現物型ETFです。地金は国内で保管されており、日本でのパラジウム現物との交換が可能です。管理会社は三菱UFJ信託銀行です。
WisdomTree パラジウム上場投資信託 #
一方、「WisdomTree パラジウム上場投資信託」は、ロンドン証券取引所をはじめ海外の市場にも上場している外国籍のパラジウムETFです。現物との交換はできません。パラジウムの現物はHSBC銀行USAがカストディアンとして保護預かりを行なっています。管理会社はウィズダムツリー・マネジメント・ジャージー・リミテッドです。
2本のETFを比較すると次のような違いが見られます。
ETF名 | 純パラジウム上場信託(現物国内保管型) | WisdomTree パラジウム上場投資信託 |
---|---|---|
銘柄コード | 1543 | 1675 |
上場市場 | 東京証券取引所 | 東京証券取引所 |
上場日 | 2010年7月2日 | 2009年8月24日 |
海外での上場市場 | なし | ロンドン証券取引所ユーロネクスト・アムステルダムフランクフルト証券取引所ユーロネクストSAイタリア証券取引所 |
信託報酬 | 0.50%(税抜) | 管理費用0.49%(税抜) |
売買単位 | 1口 | 1口 |
分配金の支払い | なし | なし |
管理会社 | 三菱UFJ信託銀行 | ウィズダムツリー・マネジメント・ジャージー・リミテッド |
形態 | 内国信託受益証券 | 外国投資証券 |
ベンチマーク | 国内の商品先物取引市場におけるパラジウムの先物価格から評価した、パラジウム地金の現在の理論価格 | ロンドン白金・パラジウム市場 (LPPM)の規格にもとづく パラジウム地金 |
現物との交換 | 可 | 不可 |
パラジウムは貴金属市場において非常に価格変動が大きいため、リスクの高い投資商品とされています。価格変動の要因としては、自動車産業の需要、供給チェーンの問題、鉱山労働の問題などが挙げられます。パラジウムETFは、このパラジウム市場の動向に直接投資する手段であり、産業需要や価格変動リスクを理解しながら、分散投資やインフレ対策として活用できます。