投資信託の投資対象の一つに優先株式があります。優先株式とはどのような株式でしょうか。
3種類の株式 #
まず、株式会社が発行する株式は、配当金、企業が清算される場合の残余財産の分配を受ける優先順位によって、優先株式、普通株式、劣後株式に分類されます。
優先株式 #
優先株式は、配当金や残余財産の分配を優先的に受けることができる株式のことです。通常、優先株式の保有者には株主総会における議決権は付与されません。優先株式を保有する株主を優先株主と呼びます。優先株式のことを英語ではpreferred stockと呼びます。
また、優先株式には、普通株式よりも高い配当が支払われるのが一般的です。これを優先配当と呼びます。優先配当の額は、例えば、普通配当額×125%を支払うというように、優先株式の発行時において定められます。また、普通株式への配当が無配の場合でも、優先株式に対して一定の優先配当が支払われることもあります。ただし、優先株式によっては必ずしも配当が保証されるわけではなく、無配となる可能性もあります。
なお、日本国内の優先株式は伊藤園が2007年9月に発行し、東京証券取引所に上場している(株)伊藤園第1種優先株式(銘柄コード:25935)だけです。
米国の優先株式
米国の優先株式は、通常、発行時に定められた固定利率で配当が支払われます。例えば、1資本証券(優先株式)当たり25ドルで発行し、1資本証券当たり発行額に対して年率6.5%の配当を支払うというものです。そのため、株式でありながら、債券の性格を持っているとも言えます。
ニューヨーク証券取引所では、「preferred stock」で検索すると29銘柄がヒットします(2024年11月4日現在)。
普通株式 #
普通株式は、最も一般的な株式です。配当金を受け取る権利、残余財産の分配金を優先株式の保有者の次に受け取る権利、議決権が付与されます。普通株式を保有する株主を普通株主と呼びます。東京証券取引所に上場している株式は2024年10月末現在、1銘柄を除き、全て普通株式です。
劣後株式 #
劣後株式とは、企業が発行する株式の一種で、倒産や清算時において、他の債務や株式よりも優先順位が低い株式のことです。つまり、会社が解散した場合、負債や優先株式の支払いが優先され、その後に残った資産があれば劣後株主にも分配されます。
優先株式の魅力 #
優先株式の魅力は高い配当利回りが期待できる点にあります。特に、米国など海外の優先株式の利回りは普通株式に比べてかなり高い水準にあります。通常、固定金利か、LIBORなどの基準金利プラス数%という形で設定されています。この高い配当利回りの獲得のために投資信託が投資対象とするわけです。2024年11月現在、ニューヨーク証券取引所に上場している優先株式の多くが年率6%から7%程度の配当を提供しています(2024年11月4日現在)。
優先株式に投資する投資信託・ETFの例 #
- iShares Preferred & Income Securities ETF(PFF)・・・米国NASDAQ市場に上場するETF。米ドル建てETF。米ドル建ての優先株式とハイブリッド証券に投資するファンド。ブラックロックが運用。
- 優先株ETFファンド(毎月分配型・ヘッジあり)・・・世界主要先進国の優先株を投資対象とする上場投資信託に実質的に投資し、安定した配当等収益の確保と投資信託財産の成長を目指すファンド。日本の投資信託。アセットマネジメントOneが運用。
優先株式まとめ #
優先株式とは、配当金や清算時の分配で普通株式より優先される株式です。議決権がないことが多いですが、安定した配当が期待できるため、リスクを抑えた収益を重視する投資家に向いています。日本では伊藤園の優先株式が上場しており、米国では多くの優先株式が年率6~7%の配当を提供しています。