外国籍投資信託の中に、元本確保型ファンドがありますが、これはどのような仕組みでしょうか。
元本確保型ファンドとは #
外国籍投資信託の元本確保型ファンドとは、外国の銀行の信用状や元本確保オプション契約などによって、償還時の元本部分が外貨ベースで確保される外国籍投資信託です。(日本の投資信託にも元本確保型はありますが、ここでは外国籍投資信託について説明しています。)
元本確保型の投信は、積極運用による高収益の追及と元本確保という一見同時には実現不可能な難題を抱えているように思えますが、その基本となる仕組みは以外と単純な発想からきています。
元本確保型ファンドの仕組み #
ファンドの資産を安定運用部分と積極運用部分の2つに大きく分けて、安定部分では、債券などの収益が読めるものに投資して、その利金収入でファンド償還時に元本が確保できるように安定運用部分と積極運用部分の比率を調整します。
たとえば、安定運用部分を全体の90%、積極運用部分を全体の10%とします。すると、10%の部分が運用が失敗してなくなってしまったとしても、ファンドの償還時には安定部分の利金収入が10%の積極運用部分の損失を埋めることとなり、元本が確保できるというわけです。
しかし、これでは積極運用部分は全体の10%しかないため、この部分がヘッジファンドや先物などによって積極運用した結果、2倍になったとしても全体では10%の収益にしかなりません。仮に償還までの期間が5年間のファンドだとすると、年平均利回りは2%たらずになってしまい、預金金利とあまり変わらないという期待はずれの結果となってしまいます。
このように元本確保を固定的な仕組みで行おうとすると積極運用部分が少なくなるため、高い収益は期待できないというのがこれまでの通念でした。最近は、このような単純な仕組みのファンドはすたれてしまい、かわって、ファンドの運用が万が一失敗した場合には、信用状を発行した銀行などがその損失を補填することによって元本確保するという仕組みが主流になっています。
なぜ銀行が、運用が失敗するかもしれないファンドの損失補填を行なうのでしょうか? #
それは、信用状発行料収入が獲得(通常ファンド資産の1%程度)できることと、ファンドの運用に指図をすることで、損失のリスクをコントロールできるため、保証のリスクに見合うと踏んでいるからです。
信用状の付いた元本確保型ファンドの運用は、前述の仕組みと同様に安定運用部分と積極運用部分に分かれています。前述の仕組みが固定的であったのに対して、信用状の付いたファンドの運用では、これらの部分が流動的に変化します。積極運用部分の運用が成功して収益を獲得してくれれば、積極運用部分を拡大して安定運用部分を縮小します。
反対に積極運用部分の運用が失敗してくれば損失のカットを余儀なくされ、ひどい場合にはドクターストップがかかり、積極運用部分の運用が中止され、すべて安定運用で償還を迎えるということになります。
このような資産配分の指図は、信用状を発行した銀行が行う権利を持ち、かなり厳しく運用が制限されていることが通常です。したがって、相当、積極運用部分の運用が成功しない限り、ファンドの利回りが大化けするということは考えにくいので、過大な期待は禁物です。
なお、最近では、元本だけでなく多少の利回りまで確保するタイプやファンドの運用がうまくいくにつれて確保する利回りが上昇するようなタイプのファンドも出てきました。
元本保証ではない #
また、勘違いしないように注意すべき点は、元本確保型の投信は元本が保証されているわけではないということです。あくまでも元本を確保する仕組みが用意されているというだけで、販売した証券会社が投資家に対して元本を保証してくれるわけではありません。
元本を確保する仕組みはあくまで償還時のみ有効となるため、途中でファンドを解約した場合、運用状況次第では元本が戻らない場合も考えられます。信用状を発行する銀行は欧米の一流の銀行であり、信用力は現在のところ非常に高いのですが、ファンドの償還時(約5年後のものが多い)にその信用力が低下して、最悪の場合、損失補填が実行できない可能性もあります。また、元本確保は現地通貨建てであり、円高となっていた場合には為替差損が発生する可能性もあることを理解しておく必要があります。
外国籍投資信託の元本確保型ファンドのまとめ #
外国籍投資信託の元本確保型ファンドは、安定運用部分と積極運用部分に資産を分け、債券運用などで元本を確保しながら、積極運用部分で収益を狙う仕組みの投資信託です。最近では、銀行が信用状を発行し損失を補填する仕組みが主流ですが、元本確保は償還時のみ有効であり、保証ではないため為替リスクや解約タイミングに注意が必要です。