クオンツとは #
まず、この「クオンツ」(クウォンツと表示されることもある)という言葉は、quantitative(数量的)という英語から派生した言葉で、数量分析をする人々や数量分析を行うこと自体を意味しています。
ウオンツ運用とは #
したがってクオンツ運用とは本来は数量分析による運用というぐらいの意味です。
しかし、運用はお金が絡むわけですからどんな場合にも数量の分析は必要なわけで、実際にはクウォンツは、運用数理モデルや統計的手法、コンピュータアルゴリズムを活用して投資信託の運用を行う手法のことを指します。従来のファンド運用がファンドマネージャーの経験や判断に基づいて行われるのに対し、クオンツ運用では、膨大な市場データを分析し、客観的な数値に基づいて投資戦略が実行されます。つまり、誰が「買い」「売り」といった意思決定や投資判断を行うのか、が分岐点になります。
クオンツ運用の強み #
クオンツ運用の強みは、感情や立場や「社内政治」に一切影響を受けない点です。運用担当者は人間ですから、ともすれば恐れや野心といった感情や、会社や業界での立場など、本来意思決定に際して考慮するべきでない要因の影響を受けます。これに対してコンピュータはバカ正直で、あらかじめ判断のルールさえ与えておけば永久に必ずそのとおりに判断します。
クオンツ運用も、あらかじめ判断のルールや基準は人間がプログラムを書いてやらねばならないわけで、「こうすれば儲かるに違いない」とか「こういう風にやればうまくいくだろう」といったルールは、過去のデータや理論の裏付けはありますが、結局ルールも人間が決めます。1990年代以降、人工知能を使って判断基準もコンピュータ自身につくらせようという試みが行なわれていますが、話題になるほどにはうまくいっていないようです。
結局、コンピュータはあらかじめ決めた運用哲学に忠実に運用する以上のことはやってはくれず、どういう運用哲学が良いかは、運用会社や投資家自身が決めなければならないことになります。この意味では、クオンツ運用も「運用者運用」も変わらないのかもしれません。
クオンツ運用のメリット #
- 効率的なデータ処理
- 人間が分析できない膨大な量のデータを、コンピュータを使って短時間で処理することができます。これにより、迅速な市場変化に対応することが可能です。
- 感情的なバイアスの排除
- クオンツ運用はデータとモデルに基づくため、投資判断に感情が入りにくく、市場の急激な変動やパニックに惑わされるリスクが減少します。
- 高いリスク管理能力
- 数理モデルを活用することで、リスクとリターンの最適化が可能となり、ポートフォリオ全体のリスクを精密に管理することができます。
- コスト効率
- 自動化された取引プロセスにより、運用コストが抑えられることが多く、パフォーマンスが高くても手数料が比較的低いことが特徴です。
クオンツ運用のデメリット #
- モデルの限界
- 数理モデルは過去のデータをもとに作成されるため、予期せぬ市場の変化や極端な事象(ブラックスワンイベント)には対応しきれない場合があります。
- 市場の変動に弱い場合がある
- クオンツ運用は特定の仮定に基づいて運用されるため、市場がその仮定に反した動きをする場合、大きな損失を被ることがあります。
- アルゴリズムの複雑さ
- 一部のアルゴリズム取引や高頻度取引は、非常に複雑であり、専門的な知識がないと理解が難しいため、個人投資家には分かりにくい場合があります。
クオンツファンドの例 #
クオンツ運用を行う投資信託を一般にクオンツファンドと呼びますが、2024年8月現在、次のクオンツファンドが運用されています。
ファンド名 | 運用会社 |
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ダイワ・クオンツアクティブJ-REIT・ファンド(ダイワ投資一任専用) | 大和アセットマネジメント |
年金積立クオンツ・アクティブ・ジャパン | 野村アセットマネジメント |
日興クオンツ・アクティブ・ジャパン | 日興アセットマネジメント |
朝日ライフクオンツ日本株オープン | 朝日ライフアセットマネジメント |
クオンツ運用のまとめ #
クオンツ運用とは、数量分析やコンピュータによる投資判断に基づく運用手法を指し、感情や主観の影響を排除する点が特徴です。事前にプログラム化されたルールに従って運用されますが、そのルール自体は人間が設定します。近年、人工知能(AI)を活用した取り組みも進んでいます。