債券を発行した会社や団体などが倒産するなどして、債券の利息が支払われなかったり、元本が返済されなかったりするリスクを信用リスクといいます。この信用リスクについて、第三者の公平・中立な立場から調査を行ない、結果を格付けとして提供するのが格付機関です。
格付は投資家にとって、債券やその他の金融商品のリスクを判断するための重要な指標となります。また、企業や地方自治体が資金調達を行う際には、格付が高いほど低金利で資金を調達できるため、発行体にとっても重要な要素です。
信用格付業者の法的な位置づけ #
金融商品取引法においては、格付機関を信用格付業者と呼び、格付機関は法律で定められた申請書と信用格付業の内容及び方法等を含む書類を内閣府に提出し、それが認められた場合には信用格付業登録簿に登録されます。
→信用格付業者向けの監督指針(金融庁)
登録された信用格付業者は、以下の義務を負います:
- 誠実義務:独立した立場で公正かつ誠実に業務を遂行すること。
- 禁止行為:利益相反を防ぐために特定の関係者からの影響を排除すること。
- 情報開示義務:格付に至るプロセスや基準を透明化し、必要な情報を開示すること。
- 定期報告:金融庁に事業報告書を提出し、その業務の状況を報告すること。
これらの義務に違反した場合、業務改善命令や登録の取り消しといった行政処分が科される可能性があります。
2024年11月末現在の信用格付業者 #
次の7社が信用格付業者登録簿に登録されています。
- 株式会社日本格付研究所
- ムーディーズ・ジャパン株式会社
- ムーディーズSFジャパン株式会社
- S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社
- 株式会社格付投資情報センター
- フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社
- S&PグローバルSF Japan株式会社
これらの登録信用格付業者は、国内外の発行体や金融商品に対して格付を行い、金融市場において重要な役割を果たしています。
信用格付の意義と課題 #
信用格付は投資家にとってリスクを判断するための有益なツールである一方で、以下のような課題も指摘されています:
- 利益相反の可能性
発行体から報酬を受け取る仕組み(発行体支払型格付モデル)では、格付機関が発行体に有利な格付を付与するインセンティブが生じるリスクがあります。 - 格付の硬直性
格付の見直しが遅れる場合、金融市場の変化に迅速に対応できず、投資家に不正確なリスク評価を提供する可能性があります。 - 透明性の確保
格付の基準やプロセスが十分に開示されていない場合、投資家がその評価を信頼することが難しくなります。
格付機関のまとめ #
信用格付業者は、公正で透明性の高い格付を提供することで、金融市場の信頼性を支える重要な役割を担っています。一方で、利益相反や市場変動への対応といった課題にも取り組む必要があります。金融庁の監督のもと、信用格付業者が適切な業務運営を行うことは、投資家保護および市場の健全性を維持するために不可欠です。