セクターETF #
セクターETFは、特定の業種(セクター)の株式に的を絞って投資するETFのことです。特定の業種の株式だけに投資することで、その業種全体の株価動向を表す株価指数に連動する投資成果を目指します。
例えば、東京証券取引所に上場しているセクターETFの一つである「NEXT FUNDS医薬品(TOPIX-17)上場投信(銘柄コード:1621)」であれば、TOPIX(東証株価指数)の構成銘柄のうち、医薬品に分類される銘柄35銘柄(2024年8月末現在)に分散投資して、「TOPIX-17医薬品」に連動する投資成果を目指します。
今後は医薬品業界が伸びると考えたり、食品セクターが成長すると予想したりしても、その中でどの銘柄に投資したらよいかはわからない場合があります。セクターETFは、個別銘柄を選択することなく、特定の業種の成長の恩恵を享受したい場合に便利なETFです。
セクターは英語のsectorのことで、部門、分野、セクター、業種などの意味があります。セクターETFは業種別ETFとも呼ばれます。日本、あるいは米国など、特定の国の特定のセクターに投資するETFもあれば、世界の特定のセクターに属する株式に分散投資するタイプのものもあります。
日本におけるセクター分類 #
日本では東証株価指数を構成する企業を17の業種に分類している「TOPIX-17シリーズ」と呼ばれる分類や証券コード協議会による33の業種分類が利用されています。前述の「NEXT FUNDS医薬品(TOPIX-17)上場投信(銘柄コード:1621)」は、このTOPIX-17シリーズによる分類において「医薬品」に分類された銘柄に投資するものです。
TOPIX-17シリーズのセクター分類 #
- 食品
- エネルギー資源
- 建設・資材
- 素材・化学
- 医薬品
- 自動車・輸送機
- 鉄鋼・非鉄
- 機械
- 電機・精密
- 情報通信・サービスその他
- 電力・ガス
- 運輸・物流
- 商社・卸売
- 小売
- 銀行
- 金融(除く銀行)
- 不動産
証券コード協議会の33業種分類 #
証券コード協議会による33業種分類は、日本の上場企業を業種別に分類する基準です。この分類は、投資家が企業を業種ごとに比較・分析しやすくするために用いられています。以下がその33業種の一覧です。
- 水産・農林業
- 鉱業
- 建設業
- 食料品
- 繊維製品
- パルプ・紙
- 化学
- 医薬品
- 石油・石炭製品
- ゴム製品
- ガラス・土石製品
- 鉄鋼
- 非鉄金属
- 金属製品
- 機械
- 電気機器
- 輸送用機器
- 精密機器
- その他製品
- 電気・ガス業
- 陸運業
- 海運業
- 空運業
- 倉庫・運輸関連業
- 情報・通信業
- 卸売業
- 小売業
- 銀行業
- 証券、商品先物取引業
- 保険業
- その他金融業
- 不動産業
- サービス業
なお、セクターETFの中で、証券コード協議会による33業種分類を採用しているのは2024年9月末現在、「NEXT FUNDS東証銀行業株価指数連動型上場投資信託」(銘柄コード:1615)だけです。同ETFは33業種分類の一つの「銀行業」に分類される銘柄に投資し、「東証銀行業株価指数」への連動を目指します。
海外におけるセクター分類 #
では、海外では、どのようなセクター分類があるのでしょうか。
世界の金融の世界では、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスとMSCIが1999年に共同開発した産業分類のGICS「世界産業分類基準(Global Industry Classification Standard)」と呼ばれる分類法がよく使われます。
GICSでは、全ての産業を11のセクターに分類し、それらを25の産業グループ、さらに74の産業、163の産業サブグループに細かく分類しています(2024年9月現在)。セクターETFでは、大分類である11のセクターが利用されることもあれば、産業グループや産業サブグループでグループ化された株式に投資するものもあります。
GICの11のセクター(2024年8月末現在)
- エネルギー
- 素材
- 資本財・サービス
- 一般消費財・サービス
- 生活必需品
- ヘルスケア
- 金融
- 情報技術
- コミュニケーション・サービス
- 公益事業
- 不動産
東京証券取引所に上場しているセクターETFの例 #
東京証券取引所に上場しているセクターETFには次の18本があります(2024年8月末現在)。これらは、東京証券取引所に上場している各セクターに属する銘柄に分散投資するETFです。
- NEXT FUNDS 食品(TOPIX-17)上場投信(1617)
- NEXT FUNDS エネルギー資源(TOPIX-17)上場投信(1618)
- NEXT FUNDS 建設・資材(TOPIX-17)上場投信(1619)
- NEXT FUNDS 素材・化学(TOPIX-17)上場投信(1620)
- NEXT FUNDS 医薬品(TOPIX-17)上場投信(1621)
- NEXT FUNDS 自動車・輸送機(TOPIX-17)上場投信(1622)
- NEXT FUNDS 鉄鋼・非鉄(TOPIX-17)上場投信(1623)
- NEXT FUNDS 機械(TOPIX-17)上場投信(1624)
- NEXT FUNDS 電機・精密(TOPIX-17)上場投信(1625)
- NEXT FUNDS 情報通信・サービスその他(TOPIX-17)上場投信(1626)
- NEXT FUNDS 電力・ガス(TOPIX-17)上場投信(1627)
- NEXT FUNDS 運輸・物流(TOPIX-17)上場投信(1628)
- NEXT FUNDS 商社・卸売(TOPIX-17))上場投信(1629)
- NEXT FUNDS 小売(TOPIX-17)上場投信(1630)
- NEXT FUNDS 銀行(TOPIX-17)上場投信(1631)
- NEXT FUNDS 金融(除く銀行) (TOPIX-17)上場投信(1632)
- NEXT FUNDS 不動産(TOPIX-17)上場投信(1633)
- 東証銀行業株価指数連動型上場投資信託(1615)
日本で購入できる米国上場のセクターETFの例: #
また、海外で設定され、日本国内で購入できる外国籍のETFの中にも、セクターETFが多くあります。これらのセクターETFは、各セクターに属する世界の株式で構成されています。グローバル・セクターETFとも呼ばれます。
- iシェアーズ グローバル金融 ETF(IXG)
- iシェアーズ グローバル資本財 ETF(EXI)
- iシェアーズ グローバル素材 ETF(MXI)
- iシェアーズ グローバル生活必需品 ETF(KXI)
- iシェアーズ グローバル公益事業 ETF(JXI)
- iシェアーズ グローバル一般消費財 ETF(RXI)
- iシェアーズ グローバル・ヘルスケア ETF(IXJ)
- iシェアーズ グローバル・テクノロジー ETF(IXN)
セクターETFのリスク #
セクターETFのリスクとしては、集中投資によるリスクと流動性リスクが挙げられます。
集中投資によるリスク #
個別銘柄への投資では、その銘柄が大幅に下落してしまうと、大きな損失を被ることになります。セクターETFは、複数の銘柄に分散投資するので、個別銘柄に投資するよりもリスク低減は図られています。しかし、株式市場では、特定の業種やテーマに関連する銘柄が全体として売られることがよくあります。例えば、医薬品セクターが全体として値下がりすれば、医薬品ETFは大きく値下がりします。一方で、日経平均株価や東証株価指数に連動するETFでは、医薬品セクターが全体として下落したとしても、他のセクターの株式が上昇していれば、ETF全体の値下がりは抑えられることになります。
また、セクターETFは、日経平均株価や東証株価指数の値動きに連動するETFと比べると、投資銘柄数も少なく、1銘柄がETFに与える影響も大きくなる傾向にあります。このように、セクターETFは、個別銘柄への投資よりはリスクは小さいものの、より幅広い銘柄に投資する日経平均ETFやTOPIX ETFよりはリスクが大きくなる傾向にあります。
流動性リスク #
東京証券取引所に上場しているセクターETFの中には、売買が活発に行われていない流動性の低いETFがあります。実際に、売買が毎日は成立しないセクターETFもあります。ETFは特定の指数への連動を目指すように設計されていますが、売買高の小さいETFでは、取引所価格(市場価格)とETFの純資産総額から算出される基準価額の間の乖離が大きくなり、ETFの取引所価格の値動きがベンチマークの値動きに連動しない、あるいは、買いたい時に買えない、売りたい時に売れない、買いたい値段や売りたい値段で売買できないというリスクが生じる可能性があります。
セクターETFに投資する際には、売買高が十分にあるか、売買が毎日成立しているかを確認することが大切です。
セクターETFまとめ #
セクターETFは、特定の業種(セクター)に特化して投資するETFで、業種全体の動向を反映する株価指数に連動することを目的とします。分散投資によるリスク軽減が可能ですが、集中投資による業種特有のリスクや、流動性の低さによる取引リスクがある点に注意が必要です。日本や海外で幅広く設定されており、特定業種の成長を期待する際に有効な投資手段です。