投資信託の信託報酬 #
信託報酬は、投資信託を購入した投資家が負担する費用の一つです。投資信託の運営の中で証券会社、投資信託会社(運用会社)、受託銀行が各々果たす役割・業務の報酬として、投資信託の信託財産(ファンドの資産)から差し引かれ、証券会社・投資信託会社・受託銀行に支払われます。
それぞれの役割・業務 #
- 販売会社(証券会社・銀行など)・・・購入後の情報提供、運用報告書等各種書類の送付、口座内でのファンドの管理 および事務手続き等
- 運用会社・・・ファンドの運用とそれに伴う調査、受託会社への指図、法定書面等の作成、基準 価額の算出等
- 信託銀行・・・ファンドの財産の保管・管理、委託会社からの指図の実行等
信託報酬の率 #
信託報酬は、純資産総額に対し一万分の○○という形で決まっており、配分比率とともに目論見書に記載されています。通常、純資産総額の0.5%から2.5%程度ですが、ファンドにより異なります。また、アクティブファンドの信託報酬の方がインデックスファンドの信託報酬より高い傾向にあります。信託報酬は、ファンドの純資産から日々差し引かれる費用ですので、ファンドの基準価額の推移に影響します。また、信託報酬の運用会社・証券会社・受託銀行間での配分比率はファンドにより異なります。
次のグラフは2017年以降の株式投信の信託報酬の平均を示したものです。2024年7月末現在、株式投信の信託報酬率の平均は0.96%、インデックスファンドは0.36%、アクティブファンドは1.11%で、いずれも低下傾向にあることがわかります。
【公募株式投信(追加型)における運用管理費用(信託報酬)の推移】
(データ:投資信託協会)
信託報酬率の違いの影響 #
信託報酬率は、たとえ1%程度と小さなパーセントのように見えても、長期的にはリターンに大きな差を生むことになります。
例えば、仮に毎年5%のリターンを上げた異なる信託報酬(0.50%、1.00%、1.50%)のファンドに各々100万円投資したとします。ファンドのリターンが同じ(ここでは5%)だった場合、信託報酬の違いにより、20年では、次のようにリターンに大きな影響が出てきます。ここでは、単純化のために、信託報酬を年1回一括で差し引いていますが、実際には、日々、365分の1ずつ信託財産から差し引かれます。
Aファンド | Bファンド | Cファンド | |
---|---|---|---|
リターン(年平均) | 5% | 5% | 5% |
信託報酬 | 0.50% | 1.00% | 1.50% |
(単位:万円) | (単位:万円) | (単位:万円) | |
1年後 | 104.5 | 104.0 | 103.5 |
2年後 | 109.2 | 108.2 | 107.1 |
3年後 | 114.1 | 112.5 | 110.9 |
4年後 | 119.3 | 117.0 | 114.8 |
5年後 | 124.6 | 121.7 | 118.8 |
6年後 | 130.2 | 126.5 | 122.9 |
7年後 | 136.1 | 131.6 | 127.2 |
8年後 | 142.2 | 136.9 | 131.7 |
9年後 | 148.6 | 142.3 | 136.3 |
10年後 | 155.3 | 148.0 | 141.1 |
11年後 | 162.3 | 153.9 | 146.0 |
12年後 | 169.6 | 160.1 | 151.1 |
13年後 | 177.2 | 166.5 | 156.4 |
14年後 | 185.2 | 173.2 | 161.9 |
15年後 | 193.5 | 180.1 | 167.5 |
16年後 | 202.2 | 187.3 | 173.4 |
17年後 | 211.3 | 194.8 | 179.5 |
18年後 | 220.8 | 202.6 | 185.7 |
19年後 | 230.8 | 210.7 | 192.3 |
20年後 | 241.2 | 219.1 | 199.0 |
投資信託を保有している期間している間は、常に信託報酬がかかります。たとえ小さな割合でも、基準価額に影響を与えるため、実質的に投資家の利益が少しずつ減る形になります。ファンドを購入する際には、信託報酬などの費用を十分に理解することが大切です。