不動産投資信託の資料などで「環境不動産」という言葉を頻繁に目にするようになりました。環境不動産とはどのような不動産でしょうか。
環境不動産 #
環境不動産は、耐震・環境性能を有する良質な不動産のことです。つまり、安心・安全で、環境にも配慮した不動産という意味で使われています。英語では、Environmental Real Estateと言います。
環境に配慮した不動産、あるいは環境性能の高い不動産とはどのような不動産でしょうか。
例えば、設計の段階で環境に配慮した設計が行われている、省エネルギー構造である、周辺の環境に大きな負荷を与えていない、建築物を建設してから解体するまでの建物の一生（ライフサイクル)を通じて排出されるCO2（二酸化炭素）排出量が一定未満であるといった不動産のことです。
投資と環境 #
投資信託を含めて、投資判断にESG（環境、社会、ガバナンス）という視点を組み込むことが世界的な潮流ですが、不動産投資信託（REIT）や不動産投資においても、同様にESGに配慮した投資が求められています。多くの不動産投資信託が環境問題に対する基本姿勢や具体的な取り組みの指針を「環境憲章」や「責任不動産投資に係る基本方針」として制定し、それを不動産投資に組み込んでいます。
環境性能の評価 #
これらの環境性能は、専門の評価機関によって評価されます。それに利用される代表的な評価基準には、建築環境総合性能評価システム（CASBEE＝Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)や建築物省エネルギー性能表示制度（BELS)、DBJ Green Building 認証などがあります。
建築環境総合性能評価システム（CASBEE）とは #
建築環境総合性能評価システム（CASBEE）は建築物や街区、都市などに係わる環境性能を様々な視点から総合的に評価するものです。省エネルギーや環境負荷の少ない資材や機材の使用といった環境に対する配慮だけでなく、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステムです。
CASBEEは、2001年4月に国土交通省住宅局の支援のもと産官学共同プロジェクトとしてスタートし、一般社団法人建築環境・省エネルギー機構内に建築物の総合的環境評価研究委員会が設立され、以降同機構が継続的に開発とメンテナンスを行っています。
→一般社団法人建築環境・省エネルギー機構（IBEC）
建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)とは #
建築物省エネルギー性能表示制度（BELS）は、国土交通省が平成25年10月に「非住宅建築物に係る省エネルギー性能の表示のための評価ガイドライン（2013）」を制定し、このガイドラインに基づき第三者機関が非住宅建築物の省エネルギー性能の評価及び表示を適確に実施することを目的として開始された制度です。BELSに登録された評価機関が評価を実施しています。
DBJ Green Building 認証とは #
DBJ Green Building認証は、環境・社会への配慮がなされた不動産（Green Building）を支援するために、2011年4月に日本政策投資銀行（DBJ）が創設した認証制度です。対象物件の環境性能に加えて、防災やコミュニティへの配慮等を含む様々なステークホルダーへの対応を含めた総合的な評価に基づき、社会・経済に求められる不動産を評価・認証しています。
持続可能性ベンチマーク #
上記のような不動産を評価する基準に加え、不動産会社や不動産ファンドの持続可能性（サステナビリティ）配慮を評価するベンチマークも存在しています。その世界的な代表が「グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク（GRESB）」です。
「グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク（GRESB）」は、欧州の年金基金グループが創設した不動産会社・運用機関のサステナビリティ配慮を測るベンチマークです。
欧米やアジアの主要機関投資家が投資先を選定する際などに活用されています。2023年現在、世界中で2,000を超える不動産会社や不動産ファンドが、GRESBの不動産評価（GRESB Real Estate Assessment）に参加しました。日本の不動産会社、不動産投資法人や私募リートなどの多くも、GRESBの評価に参加しており、その評価結果をHPなどで公開しています。
GRESBの不動産評価では総合スコアの高い上位20%に5スター格付が付与され、次の20%が4スター等々、1スターから5スターまでの5段階のスター格付が付与されます。また、実行と計測評価（implementation & measurement）とマネジメントと方針評価（management & policy）の両者のスコアが50以上の場合、「グリーンスター」格付が与えられます。
多くの日本の不動産投資法人（リート）が、グリーンスターや4スター・5スターなどの高評価を獲得しています。
→グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク（GRESB）
環境不動産のまとめ #
環境不動産とは、安全性や耐震性に加え、省エネルギーやCO2削減など環境性能に優れた不動産を指します。不動産投資信託（REIT）や投資判断において、ESG（環境、社会、ガバナンス）を重視する潮流があり、建築環境評価システム（CASBEE）、省エネ性能表示制度（BELS）、DBJ Green Building認証などでその環境性能が評価されます。さらに、グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク（GRESB）で持続可能性が測定され、多くの不動産が高評価を獲得しています。
