投資信託の運用会社を含む多くの企業が「TCFD提言の趣旨に賛同し、署名した」ということをHPなどで公表しました。これは、2017年6月に、TCFDから、企業や金融機関に対して、気候変動関連リスクや機会に関する情報開示を促す提言が公表されたことを受けてのことです。では、この「TCFD」とは何でしょうか。
TCFDとは #
TCFDは、Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略称で、日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれていました。
TCFDは、投資家が適切な投資判断ができるよう、効率的な気候関連財務情報の開示を企業へ促すために設置された特別チームです。TCFDは、世界の金融システムの安定を図るために主要国の中央銀行や金融規制当局などで組織された金融安定理事会(FSB=Financial Stability Board)に、2015年に民間主導で設置されました。大手情報サービス会社のブルームバーグの創業者で、ニューヨーク市長も務めたマイケル・ブルームバーグ氏がTCFDの議長であり、32名のメンバーで構成されていました。
その後、2023年10月12日に2023年ステータスレポートが発表されたと同時に、TCFDはその任務を終え解散しました。金融安定理事会の要請により、IFRS財団が企業の気候関連開示の進捗状況のモニタリングを引き継いでいます。
TCFDが設置された背景 #
近年、気候変動が企業活動に与える影響が大きくなっている一方で、ESG投資やSDGsが注目されるようになりましたが、これまで企業が開示してきた一般的な財務情報だけでは、企業がどのような気候変動リスクの影響を受けるのか、気候変動リスクにどのような対応をしているかを投資家が適切に判断することができません。そのため、投資家や金融業界では、企業の気候関連のリスクや機会を適切に評価できるようなフレームワークの必要性が増していました。そこで、2015年4月のG20財務大臣および中央銀行総裁からの要請に応える形で、気候変動への対応に関する情報開示を促すためにTCFDは設置されました。
TCFDは、投資家に適切な投資判断を促すための一貫性、比較可能性、信頼性、明確性をもつ、効率的な気候関連財務情報開示を企業へ促すことを目的としています。
TCFDの提言 #
TCFDは、気候変動に対する企業の取り組みについての情報開示について、2017年6月に提言(Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures)をまとめた最終報告書を公表しました。
この提言は、気候変動がもたらす「リスク」と「機会」の財務的影響を把握し、開示することを狙いとしたものです。この提言では、企業に対して、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標の4項目について、自社への財務的影響のある気候変動関連情報を開示するよう推奨しています。
TCFDによる提言と推奨される情報開示 #
ガバナンス | 気候関連リスク・機会についての組織のガバナンス |
戦略 | 気候関連リスク・機会がもたらす事業・戦略、財務計画への実際の/潜在的影響 |
リスク管理 | 気候関連リスクの識別・評価・管理方法 |
指標と目標 | 気候関連リスク・機会を評価・管理する際の指標とその目標 |
賛同企業 #
この提言の趣旨に賛同する企業・機関が、TCFDに署名し、2020年7月時点で、290の日本企業が、このTCFDに署名していました。投資信託の運用会社ではアセットマネジメントOne、日興アセットマネジメント、ニッセイアセットマネジメント、野村アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメント、東京海上アセットマネジメントなどが賛同を表明しました。また、経済産業省、金融庁、環境省もTCFDの報告書を踏まえた民間の取組をサポートしていく姿勢を明らかにしていくため、TCFDに対して正式に賛同しました。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のまとめ #
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、企業や金融機関に気候変動リスクや機会に関する情報を開示することを促すため、2015年に金融安定理事会(FSB)が設立した組織です。2017年の提言では、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標の4項目を中心に、気候変動の財務的影響の開示を推奨しました。多くの企業や機関が賛同しており、2023年にその任務を終え、今後はIFRS財団がモニタリングを引き継いでいます。